フトボル男

「お前どっから来た?」「未来から」

第13節 セビージャVSグラナダ 天才の輝き

終わってみれば5-1でセビージャの大勝。とても5点も奪うほどの圧倒的な強さを見せつけたかと言うと、実はそうでもない不思議な試合。まともなシュートチャンスもなかったグラナダが、前半の終了近くにセットプレーからのトリックプレーでハンドを誘い、PKでスコアをタイにするのだから、どれだけ観戦数をこなしてもフットボールというものはよくわからないものだ。

個人能力の高さを要所で見せたセビージャであるが、グラナダのヒューマンエラーに付け込んだというよりも、交代策や後半に向けて修正してチームをあるべき姿に舵を切ったエメリの采配の賜か。勿論、ミスを犯したからグラナダは大量失点をすることになったのだが、そこに付け込む一歩が物足りなかった印象のセビージャ。そこに光が射す。途中出場の天才レジェスの攻守に輝く上手さが際立ち、連続的にゴールを決めた。チームとしての勢いをカンプ・ノウでのメッシ・パーティーとELでのフェイエノールト戦での2連敗で完全に失っていたが、これで息を吹き返せるか。

一方、グラナダは深刻な得点力不足(現時点でリーガ最下位の得点数)と攻撃の形が示せない受け手のフットボールは変わらず。盤石な成績を収めるには物足りないどころか、深刻な面が多い。特に前線のエル・アラビの相方とシステムの模索。そして前線の孤立する場面の多さは紛れもない課題の1つ。

試合について

セビージャのスタメンは、

ベト

ビダル、パレハ、カリーソ、フィゲイラス

クリホヴィアク、エムビア

デウロフェウ、バネガ、ビトロ、

バッカ

の4-2-3-1。

コケはサスペンションにより欠場。トレムリナス、イボーラは負傷中。右ラテラルにはビダルを起用という大胆采配。

対してサンチェス・ピスフアンに乗り込んだグラナダのスタメンは、

ロベルト・フェルナンデス

フルキエ、バビン、ムリージョ、ファン・カルロス

イトゥーラ、フラン・リコ

ピティ、ハビ・マルケス、シソコ

エル・アラビ

の4-2-3-1。

エル・アラビ+サクセスやジョン・コルドバで組み込むことも多かった今季だが、ワントップに。しかし、ハビ・マルケスが試合途中で負傷してエル・アラビとピティの2トップに回帰。攻撃時も守備時も4-4-2になる安定のグラナダの感じ。

開始直後から、前からボールを奪い行くグラナダだが、セビージャのピッチを広く使った3バック(カリーソ、パレハ、フィゲイラス)+クリホヴィアクでボールを回されて容易に回避される。その後は、徹底的に前から来るわけでもなく自陣撤退をして、ホアキン・カパロス監督のチームらしい4-4ゾーンを敷く。受け手のフットボールショートカウンターの構えは小休止。

ビダルを上げて、フィゲイラスは自陣に残していたセビージャは押し込めると踏んでから、両SBを上げてドブレピボーテのクリホヴィアクとエムビアがローテーションをして、最終ライン付近に落ちてビルドアップに参加。

クリホヴィアクの浮いたポジションには無理して突っ掛らない構えのグラナダ。そういうこともあって、敵陣までボールを運ぶのは簡単な作業に。グラナダは守備時4-4-2であるが、「2」と「4」の間のスペースをセビージャのビルドアップ要員に使われている。

最終ラインの位置に問題があり、その前の「4」が連動する様子もなく、前からボールを取るのは諦めているよう。中盤付近でボールを取りたいわけでもなく、ひたすらロングカウンター狙い。相手を引きつけて食ってやろうという腹だが、その辺はセビージャの最終ラインでもあるパレハやカリーソも承知済み。

さて、どこからグラナダのディフェンスを潰していくかという所で、セビージャ側にも問題発生。運動量の低さと動き直しの少なさにより、自陣でどんと構えているグラナダの守備網に捕まる。グラナダ陣地で浮いているクリホヴィアクがボールを持っていても、出し所が無く、バックパスをして呼吸と位置取りを変えることもしばしば。

押し込みながらもなかなか手詰まり感あるが、デウロフェウを中に絞らせて、ビダルを上げて右サイドを押し込むセビージャ。出し手が困ったときは、グラナダのSB-CB間のゾーンに大外のビダルやビトロを走らすボールを供給する。しかし、あくまでもショートパスを基本とした組み立てを志向するセビージャなので、苦しい形ではあることには変わらない。

セビージャのビルドアップ要員がヘルプを出している時に、グラナダの2トップも引き籠っているのは旨味が無い。そこで時にエル・アラビは積極的に追う姿勢を見せるが、連動はしないとこがグラナダの欠陥。相方すらもピボーテ番にもならず、ただそこに張り付いているだけで、エムビアの細かなポジショニング移動で簡単に剥がされる。

中央ではなく、サイド、特に左サイドのビトロの仕掛けに偏重しているセビージャ。バッカも左に流れて、呼吸するところを左に傾ける。エムビアやデウロフェウといった受け手達のボックス内への侵入と大外のビダルを活かす狙いもあるが、ハマらない。そこで受けるべく選手が効果的に機能していないからであるが、その男の話は後述。

セビージャの守備時は兎に角ハイプレス。バッカがGKの位置まで追う場面も。ハビ・マルケスに良いボールを供給したいグラナダのビルドアップ要員達もプレッシャーに追い込まれて、縦パスを出すもそこはエムビアが徹底的にチェック。エムビアが剥がされた場合に備えて、クリホヴィアクは人に付くよりもゾーンで守る役割分担もキッチリしている。しかし、反対のパターンでは曖昧な部分もあったり。クリホヴィアクが前に出たらエムビアは当然スルスルと落ちてくるが、クリホヴィアクが後方で構えている時よりも背後のケアはわりとルーズな部分も。

話を戻す。エムビアを主にそこ(フラン・リコやハビ・マルケス)を潰したこともあり、グラナダはショートパスのみならず、さらに1枚奥のエル・アラビにシンプルに縦一本を蹴り込むシーンもあるが、セビージャの前線のハイプレスとマンツーマン風なパスコース封鎖によるもの。バッカの前からのプレスに連動して、2列目の選手達がグラナダのボールホルダーの身体の向きに合わせて、サイドを絞り、ピボーテ番のような位置取りをして、ショートパスでゆっくりと落ち着きたいグラナダのビルドアップ要員の選択肢を削る。

ボールの取り所がイマイチはっきりしないグラナダに比べて、セビージャはサイドに誘導して、そこでの追い込み方がしっかりされている。そしてサイドを起点に単騎突撃のみのグラナダとセビージャの守備の約束事が一致して、サイドでの攻防は激しいトランジション対決にもならず、セビージャの戦術勝ちに。それでも縦に速く行くことは出来ず、崩し切るまではいかない。

バビンが負傷してピッチ外へ離脱している時に、セビージャは数的優位を活かして前からプレスするべき場面で、奪いきれない・寄せきれないセビージャの緩さと攻守に甘さが目立つ。

先程、伏せていた男の話をここで。ポゼッション60%を超えているセビージャは、全くバネガを機能させることが出来ず。ボールを貰いに降りてくるが、欲しいタイミングと角度でもボールを貰えない。ボール回しでのピボーテ経由で、最終ライン-ピボーテ間の信頼とパスルートの少なさが浮き彫りに。攻勢に出ている割にはライン間、ゾーン間でバネガが受ける場面も少なく、そのため攻め上がりが得意なエムビアなどが思い切って前に出てくるための時間や前線の動き直しが作れない。グラナダのゾーンディフェンスが厳しいというよりかは、バネガの欲しいタイミングでボールが入らず、本人もリズムを作れない様子。そして出し手もリスクを掛けていない。押し込んでいる側の心理として、無暗にリスクを負う必要はないと考えたのか、安全策に終始して時間を進める。

後半になると、前からのプレッシングを継続するセビージャ。ボールホルダーに寄せるべきところで寄せきれていない印象のあった前半よりも活発な動き出しが見える。

ビトロの突破+デウロフェウのトップ下+左のニアゾーンでバッカらが三角形を。左からの攻撃とそのサポートの早さと中央での厚みをニアゾーンで作ることに。

バネガをビルドアップのカンフル剤として、前への飛び込みが強くて上手いエムビアを1列上げる。

サイドでの仕掛けは大外のビダルで、デウロフェウは積極的な攻撃というよりも中央で受け手に徹し、さらにサイドでの守備に奔走していたが、試合を大きく変えるほどの影響力は彼には敵わないと考えたのか、エメリ監督は動く。結果的にこの采配が5-1の大勝を呼び込んだとも言える。

デウロフェウの代わりにレジェスを投入。

受け手のデウロフェウではなく、出し手にもなれるレジェス。バネガが前半とは打って変わって中盤の低い位置(グラナダの2トップと4-4ゾーンの間)で的確にタクトを振り、エムビアが1列上がったことにより、中盤でのボール運びにダイナミクストランジション時の縦への速さが生まれる。そこの押し上げる時間に一役買っているレジェスタッチライン付近で中盤の浮いたポジショニングでフリーになるレジェスが入ってから、左サイドばかりではなく右サイドに吸い寄せられるようにボールが集まる。

パス&ゴーで当然のように前を向いた状態でボールを受けるレジェスが緩急のあるプレーでリズムを変えて、切り裂くようなパスや様々な球種のキックでグラナダのディフェンス陣を翻弄。バネガが組み立てて中央をスペースメイクしつつ前線に上がれば、レジェスが降りてきて、広いスペースを使って組み立てる。この辺の枚数調整には流石の敏感さを見せる天才。勝ち越し弾となった2点目はこの形から生まれている。

ネガティブトランジションの時もデウロフェウに劣らない動きで、ボールをファウル無しで奪取。アシストを記録したり、とまさに無双状態。両サイドを広く使って、速くボールを動かし、横幅を取ってグラナダのディフェンスを広げてやりたい放題に。

要所でゴールに繋げる決定力の高さが光ったセビージャ。そこまでの工程と前からのプレスでの詰め切れない部分はまだ粗いが、試合途中でのエメリ監督の采配も素晴らしく、その手腕に期待がより集まる内容だった。

対するグラナダは攻め手がほぼ無く、サクセス、ジョン・コルドバを投入して、3トップにしてみたりとカパロス監督は攻撃の姿勢を打ち出したが、内容にも結果にも反映されず。攻撃の枚数を増やしても、変にバランスを欠いただけという御手本のような試合となってしまった。個人的には残留すると踏んでいるグラナダであるが、この試合を観ると不安は増すばかり。下位同士の潰しあいで真価が問われるか。