フトボル男

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第14節 エルチェVSアトレティコ・マドリー 果敢な挑戦者を捻る王者の構図

アトレティコファンは安心して観ることが出来た試合と言えるだろう。クリーンシートに抑えて完勝。お世辞にも決定機が多かったわけではないアトレティコだが、2点をきっちりと決めきる決定力。ガツガツとエルチェを押し込んで攻めまくっていたわけではなくても、要所できちんと沈める辺りは王者の貫録なのだろうか。終始アトレティコのターンではなかったが、両チームの力の差は歴然であった。アトレティコファンは気持ちのいい1週間を過ごせるだろう。

エルチェは降格圏内に沈んでいるものの、アトレティコ相手ということを差し引いても内容としては悪くない。エスクリバ監督の前日会見で話していた通り、守備のみならず攻撃面でも姿勢を出すことは出来た。ただ、圧倒的に足りない部分も。守備一辺倒ならずボールを運べることは証明した。後はチャンスメイクの演出方法。フィニッシュに繋げるアイデアや連携が欠けていた。前線に流動性とその距離感を変えるために2点ビハインドになってから途中交代で若手を積極起用したが、あまり見せ場は作れず。

そういった采配含めて試合途中でチーム全体が修正・振り切るほどのクオリティは無く、前に出ることが求められた場面で果敢に出ることは出来ても、アトレティコに剥がされたりと上手くコントロールされていた。

試合全体を通してアトレティコは強かった。その一言以上は蛇足かもしれないと思わせる試合だった。

 

試合について

 

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エルチェはピボーテのモスケラが降りてきて、ビルドアップ要員になって後方でボールを回す。アトレティコの最終ラインで張っているだけではなく、バイタルエリア付近でジョナタスが降りて、そこにボールをシンプルに当てる。ヒメネスやゴディンが前にガツンと出てきて寄せきれないような上手い位置とテンポでボールを収めることが出来る。当然前からプレスを仕掛けているアトレティコ。捕まえきれなかった時にピボーテのティアゴの脇のスペースを使って、狭い所でボールを回す上手さを見せるエルチェ。終始、ジョナタスを起点に狭いところでも繋ぐように意識していたエルチェの技術。それを運動量豊富に走る戦闘集団のアトレティコ相手にどこまで貫けるか。そこがポイントの1つになるのが分かる立ち上がり。

 

アトレティコフアンフランを高い位置に上げる従来のスタンス。同サイドのアルダは中央に絞って、ガビと右サイドで三角形を作る。2トップのマンジュキッチラウール・ガルシアは押し込むために最終ラインに張り付いていたが、途中からマンジュキッチがサイドに開きエルチェのSBにマッチアップのズレを誘発。ラウール・ガルシアバイタルエリアで受けるイメージに。

フアンフランの上がったスペースをガビが埋めて、ビルドアップ要員兼カバー役。ティアゴは前後のバランスを整えつつビルドアップ要員として残る。コケは神出鬼没で広いエリアをカバー。前にティアゴが出たら、コケが下がって恐い所をカバーすることも。プレスが掛からない最終ラインからゴディンがドリブルで攻め上がったら、ティアゴが下がってカバー。ガビは右SBのスペースを埋めつつ、必要に応じてボールホルダーのサポートのために上下動。ガビやフアンフランを使って右サイドからボールを前に進める。

 

対するエルチェはマッチアップのズレやマークの受け渡しをきちんと修正して、アトレティコの最終ラインがボールを保持している時はプレスを掛けることはなく、自陣にボールが侵入してから活動開始。ワントップや2トップを併用しているが、基本的にジョナタスはトップの位置に居て、その脇が空く。そこを使ってボールを運ぶアトレティコのビルドアップ要員にエルチェの2列目の選手達が飛び出してプレス。そのプレスは強烈なものではなく、ボールを奪ってそのままカウンターという狙いのあるものではない。ガビが間受け職人や裏抜けも出来るアルダに縦パスを出すものの、そこはきっちりと警戒されており、チェックが早い。

 

試合全体でのトランジションアトレティコが何枚も上手。ファーストディフェンスの強度やその距離感は健在。そんなことはエルチェも百も承知。無理に付き合わず、ボールを失ったらスペースを消しながら自陣撤退。4-1-4-1の泣き所でもあるモスケラの両脇もボールサイドではないSBやSHがサボらずに絞って働くエルチェの整備された守備面も光り、アトレティコを困らせていた。

 

一方、ポジティブトランジションの際にアトレティコも昨季のようにカウンターに移るシーンでも、裏や前線に素早く配球というわけでもなく。この辺は前線の選手のキャラクターと前任者のジエゴ・コスタとの決別がしっかりと見られる。アトレティコはボール保持に執着は無い。しかし、ボールを持っても上手く出来ることは昨季のチェルシー戦で世界に証明済み。後はマンジュキッチという軸と相方のラウール・ガルシアと2列目の飛び出しといった連動というピース次第。その為の押し上げの時間を作るのはマンジュキッチ達だが、最前線にシンプルにボールを蹴ることは無く、間受けが出来るアルダやヘディングの上手いラウール・ガルシアを中心にボールを集めるがハマらず。ボックス内に2人のみで中を作りきれていない状況での両サイドからのクロスも当然合わず。

 

アトレティコが決定機を思うように作れない中で、セットプレーから豪快に先制。戦術セットプレーと揶揄されるものではなく、アトレティコのセットプレーの上手さと強さを警戒したエルチェの対応を逆手に取ったショートコーナーから。コケ、シケイラ、アルダで簡単に3VS2の状況を作り、バルセロナのようなパス回しでニアゾーンを攻略してヒメネスがストライカーのお株を奪うようなゴラッソ。

エルチェは王者相手に上手いゲームの入り方をして、消すべきところを消していたが、あっさりと失点。フットボールとは残酷なものだ。

しかし、まだ1失点。点を奪うために前に出るエルチェはサイドを起点にファイナルサードまでボールを進められる。立ち上がりはバイタルエリアでジョナタスが収めていたが、そこで収めることは出来なくなり、アトレティコにとって恐い所にボールを運べない。距離的にゴールは近いがまだまだ遠い状況。

コケの守備範囲の広さとその後ろで構えるティアゴが行き、さらに最終ラインからヒメネスやゴディンが前にガツンと出てくる連動したアグレッシブな守備でボールを一時的に回収するも、全体としては押し込まれる時間が増えるアトレティコ。そうなると積極的にラウール・ガルシアはプレスバック。マンジュキッチセカンドボールやフリーになるエルチェの3列目の選手に付いて波状攻撃を防ぐ試み。場合によっては自陣深くまで戻るマンジュキッチ。サボる意識がないシメオネ軍団。

 

先制するまでは右サイドを中心に縦パスを出していたが、ヒメネス、ゴディン、ティアゴの最終ラインでゆっくりと無理をしないでボールを回すアトレティコ。この辺りのコントロールは流石。エルチェがより食い付いてスペースが生まれるのを待つ。

 

アトレティコが押し込んでいる時は、エルチェは無闇にクリアはせず。しかし、『クリアのためのパス』を出すことが出来ない程の前から激しく刈り取ろうとするアトレティコのプレッシング。

何度かクロスを上げるシーンがあったフアンフランであるが、マイナスの絶妙クロスを警戒したエルチェはしっかりと2列目の選手が戻ってケア。クロスに対するボックス内での人数の掛け方や位置などを観ると、アトレティコの対策を練っているのが分かるだけに失点して前半を終えたのが虚しい。

 

後半からはラウール・ガルシアを右サイドに出して、アルダを中央でシャドーのように。マンジュキッチとの2トップというよりかは、1.5列目的な役割のアルダ。ロングボールをラウール・ガルシアマンジュキッチの頭に当てて、アルダを裏に走らすといった形も。

 

エルチェはモスケラを軸にダミアン・スアレスのサイドからビルドアップ。すると、アルダが積極的にプレスして、絞ったコケ、ガビ、ティアゴがそれぞれのパスコースを切る・人に付く。マンジュキッチは右から左へのサイドチェンジを警戒。サイドチェンジの時にはプレスバックして、全体がスライドする時間を作るためのディフェンダーになったりと。後半も元気よく波のように押し寄せるサイドでのアトレティコのプレッシングに対して狭い所、狭い所で繋ぐエルチェも際立つが、最終的には寄せ切ることが出来るティアゴやガビの牙城は崩せず。アトレティコのボールとして落ち着く場面が多い。

 

そしてマンジュキッチの2点目をキッカケにエルチェはよりやるべきことが決まる。前に出てゴールを奪う事だけに集中。そのためにドミンゴ・シスマを上げたりと何とか押し込もうとする。そうすると、アルダがドミンゴ・シスマの上がったスペースに顔を出して、ポジティブ・トランジションの際に起点に。悠々と時間を作ってボールを運ぶ。こうなるとエルチェはバタバタする。

 

ゴールを決めたマンジュキッチに代えて、間受け職人でもあるグリーズマンを投入。ゼロトップ気味でアルダと前後を入れ替わったりと流動的に。グリーズマンがサイドに張って受けられるので、シケイラも大胆に上がる事が出来る仕組み。

その次は10キロ以上走ったアルダからラウール・ヒメネスへ、とカードを切るシメオネ監督。

そして、ワイドに居るグリーズマンからアーリークロスに前線を飛び込ませるという形は今後成熟させたいものだということが窺える。

2点差付いて時間も時間なので、緩めるところは緩めるアトレティコに対して、エルチェはボールを運べるが、前線が孤立気味。バイタルエリア付近での守備網の城を打ち破るにはエルチェの攻撃陣のピースでは足りない。

そして約束事はどんな状況でも不変。最後までアトレティコは守備時にサイドに3枚掛けて寄せ切る。誰が入ってもその意識は変わらない、恐ろしいまでに鍛えられた守備組織。動きすぎて、居て欲しい時に居ないという状況が生まれるのでは、と心配するほどに全員が動いて持ち場に必死に戻る。その見事な繰り返し。世界最優秀監督賞を獲得するのかは分からないが、シメオネ監督の作り上げたチームは流石のクオリティと言えるだろう。