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しまいには世の中が真っ赤になった。

円居挽『河原町ルヴォワール』読書感想

 

 

河原町ルヴォワール (講談社文庫)

河原町ルヴォワール (講談社文庫)

 

 

『ルヴォワール・シリーズ』の第4作にして、完結編。

『ルヴォワール・シリーズ』最終作。なんとも最高な読書体験になってしまった。そういったカタルシスを本シリーズで痺れさせて貰った。

『丸太町ルヴォワール』を想起させる展開に、それに対するアンサー。ミステリのみならず青春群像劇として、最大級の解を提示された気分。感激だ。

冒頭から、シリーズを支えていた龍樹落花が死亡という実にシリーズのファンならば目を疑うような展開が待っている。前作の『今出川ルヴォワール』では、本シリーズの骨格でもあるシステムの〝双龍会〟を前座に据え、賭博大会の〝権々会〟をメインにすることでシリーズの分岐点を示したが、本書では原点に帰るかのように〝双龍会〟をメインにすることで、作者の円居挽特有のエネルギッシュな〝どんでん返しに次ぐどんでん返し〟を見事に表現している。

落花の不可解な死の状況を巡って、敵がコロコロと入れ替わる目まぐるしい展開が用意されており、〝誰が真の敵なのかどうか〟といった黒幕的な真相に対してミスディレクションを効かせることで、巧妙にはぐらかしているところがミソだと 言える。

また、本書ならではの〝大仕掛け〟として、〝同時進行的にもう一つの双龍会〟が描かれている。暴論詭弁なんてザラであった本シリーズであったが、本書ではクローン人間といったSF的要素を盛り込むことで、〝もう一つの双龍会〟を技巧的に配置し、本シリーズのファンを喜ばせる作者からの巧妙の罠(サービス)を堪能できる作品となっている。

その仕掛けは第1作目の『丸太町ルヴォワール』を彷彿とさせるのと同時に、シリーズ作品すらもミスディレクションに使用するという作者の貪欲な仕掛けが心憎い演出である。

当然、やや無理のある表現であることには変わりないが、それでも随所に伏線を張る事で、クライマックスに鮮やかな〝落花戻し〟を表現。外連味たっぷりな本シリーズの中でも白眉と言える大仕掛けに、ファンであれば納得の溜息を吐くことになるだろう。

最後まで見逃せない〝どんでん返しに次ぐどんでん返し〟によって、敵味方の立ち位置が移動することで、手に汗握る作風はそのままになっており、隙を見ては追撃する怒涛の様を楽しむことが出来る。

更には青年達の成長といったドラマ部分にも力を入れている。その象徴としてある〝双 龍会〟後のエピローグは、感慨深いものがあり、詩情豊かなシリーズの終わらせ方である。

散々に読者を振り回し、引っ張ってきたキャラクター達との別れは叙情的であり、『丸太町ルヴォワール』から始まった本シリーズの〝ルヴォワール〟に相応しい傑作だと言えるだろう。

まさに天晴れな大団円であった。