おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ビジャレアル対アスレティック 改善の兆しが見られるのは相対的なもの?

ビジャレアルのシステムは4-4-2 対するアスレティックのシステムは4-2-3-1

ビジャレアルとしてはバスク系のチームのエイバルに苦杯を舐めさせて貰ったばかり。相手チームのプレッシングをどのように破壊するか。それが重要なテーマ。ビジャレアルは今までハイプレスへの打開策をソルダードやバカンブといった屈強な万能型FWに放り込むことで打開を試みてきた経緯があるが、ビジャレアルの空中戦勝率は圧倒的に低いデータもあるようにロングボールが苦しい展開の象徴となっていた。

エイバル戦では、2FWへのロングボールで前進しようとするものの、2-3列目の選手間のサポート距離が適切ではないために、FWが孤立するシーンがしばしば見受けられた。前線は収めてナンボ。決定力は札束。とはよく言われるが、やはり適切なサポートが無ければ独力で打開するのは難しい。特に相手DFを背負った状態ならば尚更。

そういう課題を抱えたまま、元気なアスレティックとの対戦が金曜日に行われた。

 

 

 

 

 

前半から観られたシーンは以上の通り。

 

アスレティックの底変化に合わせて、2FW+トリゲロスで同数をぶつけるシーンはGK経由以外ではレアな場面もあった。さらにレアだったのが、GKをビルドアップに組み込むシーン。確かに相手の同数プレッシング時では、GKが空くことはよくある光景であるが、ビジャレアルはこれまで自分たちが相手にさせてきたのと同様に、自分たち自身も前線に蹴り飛ばすことが殆どだった。前述の通り、ビジャレアルのウィークポイントの一つでもある空中戦の勝率から、そのロングボールは空しく相手に渡る。ブルーノやトリゲロスといったCHを高い位置に送り込んでも回収の目処はあまり立っていない状況が続いていた。

この試合では、ブルーノやトリゲロスを高い位置に上げずに後方から作ることを意識して行われていた。普段ならGKから前線に飛ばすシーンでも、CHやCBのポジショニングの修正が行われ、GK経由のビルドアップとCHの個人戦術により、アスレティックのプレッシングを破壊。

勿論、最終的なビルドアップの出口はサム・カスティジェホが絞った位置取り=アスレティックのCH裏であるが、それまでのプロセスに大きな変化があったのは見逃せない。

エイバル戦のショックによってビジャレアルの改善点はより浮彫となっていたのは事実で、この修正がアスレティックの人に付く守備意識の高さから生じる裏のスペースのメリハリによるものなのかといったところは相対的なものであって、この試合単体だけで判断するのは難しいだろう。

フットボールは相手がいて成り立つ。相手を無視した分析ほど意味の無いものは無い。個人のプレー面についても、フットボールはチームスポーツなので、個人のパフォーマンスはチームメートの出来に左右されやすい点も必要不可欠な視点だ。アスレティック戦に限っていえば、ブルーノやトリゲロスといったCHがエイバル戦に比べてよく動けていた。運動量やボールタッチ数にそれは表れている。しかし、エイバル戦が低調だったのは単にブルーノら自身の問題だけではないということだ。エイバルのチームパフォーマンス。ビジャレアルの前後分断。これらの要素が複合的に絡まり合い、個人のプレーに影響していく。そして、チームパフォーマンスに直結していくものである。

今回の試合では、アスレティックのプレッシングを研究したというファクターとレギュラーCB陣(ムサッキオ、ビクトル・ルイス)のビルドアップ能力やポジションバランスが保てていたことも大きな要因だろう。後方の盤石さが中盤に戦術的規律を植え付け、逆も然り、中盤の秩序が後方のバランスを築き上げたとも言えるだろう。こういった相互関係がチームの大きなうねりとなり、力に変わっていく。その好例がアスレティック戦の前半で見せたビジャレアルのパフォーマンス。

GKをビルドアップに組み込んでいくのも今後のビジャレアルを観戦する上では欠かせない要素になっていくはずだが、このチームの方針が相手に合わせた相対的なものなのかどうか。それを見極めていく必要があるという意味で、勝ち点以上に重要な一戦となったと思う。

長いシーズンの終盤。スカウティングの網は確実に広がっていく。対策への対策を講じることができるのか。相手の予想を上回ることができるのか。ファンの期待を良い意味で裏切ることができるのか。これもまたフットボールの醍醐味であろう。