監督という思考の迷路
自軍のストロングポイントと相手のウィークポイントが噛み合う場合、それは比較的楽観的な試合になるかもしれない。
しかし、噛み合わない時も往々として存在する。
ビジャレアルに限定すると、左SBのハウメ・コスタのハイボール目測の不安定さ、もともとの高さ不足は大きな弱点である。
ファーの優位性を演出するキッカケに通じる。ファーは最強である。(参考→SBについての覚書)
右SBのマリオを釣り出して、SB裏~HSレーンでCBが引っ張られる。それに伴って、もう一枚のCBと逆SBが絞らなければならない。勿論、ハーフスペースレーンをトリゲロスがカバーするならブルーノ一枚でバイタルを埋めないといけない。ゾーンの弱点でもあるボールサイドとは遠いところが薄くなる現象に対して、目線を変えられたら脆くなるのは当然。近年のサッカー界においてハーフスペースを攻撃するのはセオリーとなっている。それに対する誰がスペースを管理するか。そのエリアの奪い合いによる攻防が激しくなっていると感じる。
マリオの攻撃力はビジャレアルのストロングポイント。マリオを抑え込むために、そのサイドから攻め込むことでハウメ・コスタに対するファーの優位性を示すことができれば、まさに一石二鳥であり、ロジカルな攻撃と言えるだろう。
ビジャレアルに相対するチームのストロングポイントが左サイド(ビジャレアルのマリオサイド)なら、これほど合理的なプランが組めることは無いかもしれない。あくまでも机上の論理では。
しかし、もしも自軍の長所が右サイドならば?
ここで断わっておくと、中央から左サイドのネガティブトランジションの強度の脆さや心臓部のブルーノの過労やビクトル・ルイスのカバーエリアの狭さ・守備能力にも問題が浮かび上がるので、左サイドが鉄壁というわけでもなく、ウィークポイントにならないという話ではない。
スカウティングの範囲と自軍のストロングポイントがハマらない場合、チームプランとして二つのパターンに分けられる。
・チームプランとして、自分たちの良いところを最大限に発揮することを狙う(自分たちのサッカー)
・相手の嫌なところを執拗に狙う(ある種のリアクションサッカー)
どちらが正解なのか?という話ではなく、戦略における適正な配分に自軍のチームバランスと相対的なスタイルによって形作られていくものである。そして、対応と変化が生まれる。
勿論、特殊的な変化を加えるなら、相互作用のバランスとそれによって発生する脆弱性との埋め合わせも必要となる。
監督の仕事を判断するのは結果。だから結果論になる。そこから逆算してプロセスを分析して、解読する。
当然のように、現場レベルと観客レベルでは得られる情報量の差はある。100%接近することはお伽噺のようなもの。
それでも監督の頭の中、いわば思考の迷宮に魅せられたいと思う潜在的変態は少なくないはずだ。ソクラテスの無知の知。サッカーを通して対話をする。ピッチ上に立つ選手や監督だけではなく、私たち観客も同様に。思考は広大だわ。