おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ペップの2年目 マンチェスター・シティの戦術の変化

2017-18のシティのシステム

攻撃時3142

守備時532

 

2016―17のシティのシステム

攻撃時 3223

守備時 4141

 

開幕戦のブライトン戦と2節のエバートン戦を観た。2試合を消化した時点でのペップ・シティについて書く。

 

【変化に伴う課題】

昨季の被カウンターのモデルの反省を踏まえたペップの試み。偽インテリオールは封印。3142では、あまり質的優位として圧倒的になれなかったWGをWBとして起用。プレッシングは継続だけど、WBにすることで帰陣の位置がより深くなる。昨季同様に2枚のIHに如何に自由を与えるかが鍵であるから、システム的にWBの奥行きのスペースに人が入り込むようにはなっていない。結局はWBの質でサイド奥の攻略が図れるわけだけど、その一環にはIHとFW(主にジェズス)の旋回があったりするから、2列目のDFを動かしつつボールを循環。前線のスペースは(上)下左右できちんと仕事が出来るFW2枚。傾向としてはニアポストのスペースには入らず、DFライン前で受けたりする手前で勝負したいのがどう響くか。そこはWBの能力に大きく依存することになりそう。後方を3CBにすることで、被カウンター時に枚数を確保。フェルナンジーニョの位置をやたらと動かすことが無いようになっているのも目立つ。中央の管理を徹底のイメージ。ビルドアップ時にCHが大きく組み込まれていないこともあり、相手を撤退させた際にサイドの入り口としてワイドのCBをそのまま活用。だから、3人+αとしての機能を働かせている。

アーリークロスの時や、相手MFライン前のパス交換の際に相手DF(主にCH)を消すように抜ける3人目の動きで、スペースを空けてパスを回す時はIHの直線的なランは効いているし、それらはFW(特にアグエロ)が気持ち良くプレー出来るような形を速いタイミングで演出しないといけないためのものだけど、結局はDFライン前のスペースであったりするので、押し下げた相手DFラインの前後のスペースの使い方は曖昧。そのための2トップなのだろうけど、既に相手を完全に撤退させている中でのDFライン前の有効活用や更なる奥行きという点では欠けているように思える。

 

【ブライトン戦】

ポゼッションとWBを高い位置に送り込むのは安定しているシティは開幕戦からニュートラルに動いていた。問題は1stラインの突破の仕方。2トップ間を狭くするようフェルナンジーニョ配置で3CB保持。

ブライトン戦の前進のキーポイントは、2トップ脇にシルバを降ろすことor3CB+斜めのWBで横スライド誘導orジェズスがCH前に降りてクッション。動的なのは左中心のように見えるけど、右も同じように使われているから偏りが無いのは試合後のパスマップにも表れていた。

ファイナルサードはWB(ダニーロ)のペナ角カットインやクロスやHS侵入ラン。右の方が深い位置に入り込めている。気になったのは左IHのシルバ。ポゼッションのアクセントとして働いている。2トップ脇からの前進をシルバにやらせることで、サイドの人員が気になった。全体でコントロールするのは当然として、ディティールで見れば左で管理して右のオープンなスペースに鋭くみたいなイメージ。しかし、アイソレーションほど極端ではない。

サイドの前進について、CB(オタメンディ)のドライブは前半34分辺りでやっと発動。個人的に引っ掛かっていたシルバの左IHとしての2トップ脇からの前進ケースはあまり旨味を感じない。ボール保持する時間を管理する点では大事なんだけど。シティ相手に構えるチームが多いのは当然だから、そこをどう崩すのかがテーマ。それは、デ・ブライネとの位置交換でわりと解消。デ・ブライネの右足のアングルで右WBまでのサイドチェンジあり、FWへの浮き球あり。その代わり、ダニーロは空気になる。ダニーロは利き足の都合上、カットインが多くなるのだけど、そこからの工夫はチーム的にも無かった。左IHがシルバの場合は外の活用が増えるが、ダニーロの左足クロスがアレなのでこれもまた旨味を感じさせなかった。

 

エバートン戦】

エバートン戦はそれらの反省を活かした采配が印象的となった。

シルバとデブライネの位置を変更したのが前節からの大きな違いの一つ。また、左利きのサネの左WB起用。ダニーロのカットインからの展開は一旦封印ということで。

試合中、IHの位置が固定という訳でもなく、シルバが右IHとして左サイドに雪崩れ込むのはアリだし、位置交換もしていた。

コンパニから一枚飛ばしのパスでオタメンディの攻撃参加。オタメンディの攻撃参加は前節からよりアグレッシブになっていた。前節はシルバが担っていた前進役をオタメンディが専門に。だから、裏のスペースが気になるわけで、そこの攻防も目立っていた。

オタメンディの攻撃によるフェルナンジーニョの位置は、CBラインに降りるor2トップ間orオタメンディの横ライン確保。

 

 

 

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HSにデ・ブライネ、相手CHゾーンにジェズス降ろしだけではなく旋回もある。

HSにFWのケースは、外にデ・ブライネ、中にサネ。或いは、サネをWG化してデ・ブライネとFWで時計回りでHSのレーン交換。オタメンディからすれば、外のコースにWG化しているサネがいるから、縦につけて相手DF(WB)を釣り、その裏のスペースに先程のHSにいる選手(FW)が裏取り。横のラインを確保しているCHを使えば、1stDFが定まっていないので、相手CHが急いでチェック。すると、時計回りの交換で外で裏に抜けた選手では無い方の選手(IH)がバイタルで空く。

IHの方がケアされている場合は、FWがそのままサイドに流れるなり、エリア内の枚数が減る。そのケースには逆IH、逆WBが補填。HSにはボールサイドのIHが入る。

デ・ブライネが左IHならば、縦パスを受けてゴールに対して後ろ向きの体勢の場合には、例え相手DFから厳しいチェックを受けても身体を使って、ターンしながら逆サイドへ右足で展開できる。シュートも中に入り込む形になるから、そのための左IH起用。

左サイドの組み立てにジェズスが降りることが頻繁なので、エバートンはDFラインを上げてコンパクトに対応しようとすると、WG化しているサネが裏抜け一本もある。

 

ネガトラ時はプレッシング。相手2トップに対して3CBだから数的優位で捕まえる。上がっていたWBは撤退よりも先ずは人に付く。ロングボールを蹴らせたら最終ライン(3CBだけど、人を捕まえる際には1枚が飛び出すこともあるので2枚時も)が横スラで対応。その間にWBは自身のゾーンに戻る。

相手ビルドアップ時は同数に持ち込む。2FWがスイッチを入れず、IHがプレッシング隊に。そのIHが空けたスペースに降りてくる選手をフェルナンジーニョマンマークで対応。

エバートンのポジトラ時は、WG化していたサネと前線に上がっているIH裏のスペースが使われる。当然だけどフェルナンジーニョだけでカバーするのは無理。だから、フェルナンジーニョがボールサイドにスライド。すると、CBがフェルナンジーニョ横に位置取りしたり、逆IHが絞ったりするマンマークで2列目の組織回復を図る。そのためには、スペースを埋める作業と1stDFが何よりも大事。

シルバとデ・ブライネが位置交換するように、左サイドの攻略とトランジションを意識したのか、オタメンディとコンパニが交換。コンパニはDFからのチェックに対して右手を使って守れるが、右足なのでパスのアングルが制限される。特に旋回の一環でCBへの相手の1stDFが緩いので前進は簡単なんだけど、サイド奥のWBにしか出せなくなる窮屈さも。だから、このケースはWB裏をケアする意味合いの方が強い。セットでシルバが左IHになっているので、サネに預けるケースが増えるから相手DFも読み易くなっているのはどうだろうか。そこで質的優位でガンガン剥がすにも、エバートンは5バック化でWB―CB間が狭くてケアされている。そのためにも、パスのアングルも含めてデ・ブライネを左IHで起用したいのは分かるけど、開幕戦同様に左の組み立ての機能に対して右サイドのオープンなスペースに、右WBと右IHの直線的な速さやアグエロダイアゴナルランでDFを動かすことを考えると、スピードの面も含めて右IHとしても使いたいという。

スコア優位で数的優位というアドバンテージのエバートンが前プレ敢行するシーンも試合が進めば目立つ。それでも、シティの狙いは一枚飛ばしで左(コンパニ)からの前進。相手CH間にIHが配置されて、そこに配球できる場合は素直に出す。出せなかった時は、IHが外に流れて、サネが中に入るようにしてレーン交換で縦パスを受ける。ここでサネが中で受けても利き足の都合上、使い勝手が悪いからアクションを起こす訳でもなく、相手の2列目を下げて押し込むための縦パス。このシーンでダニーロならば、違った景色が観られたかもしれない。でも、前述の【課題】に書いた(サイド奥、DFラインの裏の攻略)を考慮すると、現段階では左WBにダニーロは難しい。

 

果たしてペップは、2トップのプレーエリアに手を加えるのか。それとも、ゴール前での2トップへのサポート体制を変えるのか。WBでの優位性がどれだけ取れるのか。これらについて注目して観戦していきます。