おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ビジャレアルの開幕戦 期待して願った未来との現在地

ビジャレアルの開幕戦の評判はとても悪かった。「エスクリバ辞めろ」が流行ったりしたくらい。開幕戦で敗けたくらいで大袈裟な…と思う人もいるでしょう。というかレアル・マドリークラスだったら分かるけど、ビジャレアル規模で?と思う人もいるでしょう。とても分かります。私自身も開幕戦をディレイで観るまでは半信半疑でした。

本記事は辛口です。結構、エモです。

 

システムは442 

スタメンは―アンドレ

ルカビナ アルバロ ビクトル ハウメ

トリゲロス ロドリ

パブロ サンソーネ

ウナル バッカ

 

【攻撃と守備の問題】

 

ビジャレアルのCBにはプレスを掛けないレバンテは4141

トリゲロスといったCHラインには圧力を掛けるようにIHが飛び出る。すると、CHが埋めて451化。ビジャレアルのビルドアップは2CB+SB→CBは持てるけど、ハーフライン超えたSBには厳しく横スラ対応のDF

トリゲロスなどがCBラインに落ちるアクションをすると、相手FWが付く。

だからCHはあまり落とさず、ある程度の高さまで2CBで保持。SBを高い位置に送り込む時間を作る。CBから縦に付けることは出来ないのでSBを起点に。味方CHやSBの位置取りで相手2列目DFラインを下げているとはいえ、CBの配球力には問題があるし、器用に運ぶなんてことはしない現状。それに一応、CBが持つと相手IHが牽制する素振りはある。横幅のSBを使い(相手SHがすぐ対応できる準備はしている)、ボールサイドのCHはSB位置に入る。ブルーノが行うアクションだったが、この試合にはブルーノは不在。だから、トリゲロスがやっていた。

ビジャレアルの守備時。SHの守備強度が怪しい。特にパブロ。それに伴ってSH-CH間を使われるから、SBが迎撃で対応なのかラインを下げるべきなのかで悩むけど、そもそもSBの外には相手アタッカー(WGかSB)がいるので、そこからSBゾーンを崩される。ファーサイドにはハイボール対応が苦手なハウメという状況の出来上がり。明らかに右サイドの脆弱さを露呈した形となったのが今節。

 

陣地回復にはCBからのロングボールで2トップへ。回収する見込みはどれくらいなのか気になるくらいネガトラは設計されておらず。ボールサイドのSHの気持ちとポジショニングが上がりきっていないCH。それでセカンドを狙える訳ないじゃん。ただ間延びを促進させるかのように。まさに神様仏様2トップ頼み。

また、SB裏をトリゲロスが気にすると、そもそも位置取りが高くならないので、攻撃のオプションとして必要な1枚が欠けたままになる。昨季なら、ムサッキオがいれば無理でも彼のパフォーマンスで征服していたから、そのツケが回ってきたような気持ち。

昨季のテーマは「トリゲロスをいかに前線に送り、トップ下的ロールで活かすか」だったけど、ロドリは中央のプロテクトで精一杯(出来ているとは言っていない)。時間を作れるほどではない。CBがボールを持てるようなレバンテの451の構え方(CBに持たせるけど縦パスは通させない)で、ビジャレアルはボールを持っている状況を優位に活かすように管理することが出来ないというシビアな現実を突きつけられた。そして被カウンターによって全体のラインが下がるので、ラインを上げて陣地回復を図りたい意思から、前述のようにバッカ様頼みロングボールで悪循環。

右サイドの強度(=ジョナタン&ムサッキオ)とブルーノの不在がそのままダイレクトに影響している出来。

 

パブロの攻守の位置取りが気になる。勿論、横幅ルカビナの物足りなさもある。元々、オプションのある選手ではないし、マリオほどの馬力があるわけでもなく、バランス型の選手。それに加えて前の選択肢の少なさ。それにはパブロの位置が関係している。中に入ってトリゲロスとロドリと3枚で相手3センターの同数状態を作ることで、CH脇を狙うようなトップ下的ノリでサイドを空ける=右はルカビナ単体任せになるから前進できそうな場面でも相手DFの横スラ対応で詰まる。ルカビナ視点からすれば、パブロだけでなく2トップの動き方も期待以下なので前の選択肢は死んでいたに等しかった。でも、あれだけオープンなのに使われないのはルカビナ個人の質も大きい。

サンソーネもサイドの守備が良い訳でもなく、前線のプレスバックとCHで数的優位を作って取り囲める状況なのに、1stDFのアプローチ強度が足りていない。ハウメは自身のSB裏が気になるから、枚数的に足りている状況でリスクを掛けたくない意図で緩め。HSレーンを使われて、CH-CH間~逆サイドへ展開と綺麗な形を作られる。

前マルセリーノ政権時には、ビジャレアルの4-4-2は未来はどうであれシメオネアトレティコに匹敵するであろうクオリティを示す日も遠くないと思っていたが、監督も変わり選手も変わった今、何があるのだろうかと不安になるくらい空っぽ。システムは同じだけど、守備の内容は全く異なるレベル。これ、エスクリバに改善出来ないでしょ。

「HSレーンを起点としてから横幅へ。SBを引っ張り出し、チャンネルランでCHを消す。横幅はそこからカットイン。CBは当然空いたSB間を埋めるためにスライド。するとCB-CB間は空くので、アタッカーに背中を取らせるように裏へ」とレバンテに綺麗な形を作られるビジャレアル。教科書のような崩しをされる。守備のタフさが無いというか。SH-CH間の閉じ方は、SHの死ぬ勢いというか、マルセリーノの寵愛を受けた遺産なので仕方ない側面も。あとは、CH脇をビクトルが飛び出してケアという状況を今まであまり観てこなかったので、ポジティブなリアクションだと思っていていいのか分からない。これが移籍したムサッキオとかなら分かるのだけど。

 

そもそも、ビルドアップはブルーノに依存していた。勿論、あれだけの選手に依存しない方がオカシイのだけど、ブルーノのポジショニングはあの中長距離のパスレンジありきで成立しているものだと思っていたので、細かいパスだけにすると、そんなに攻撃時のポジショニングは良くなかったり。

ただ、前線参加は相棒のトリゲロスという共有が出来ていたから、後方で捌くことに専念できていた。そのブルーノが不在の開幕節。ビルドアップの形、ブルーノが居て成立するだろうというのは如何なものか。トリゲロスは頑張っていた。ロドリは物足りないけど。3列目のスーパーなブルーノからの一枚飛ばしパスが攻撃のスイッチになるスタイルを続けていたから、当然そのようなパスがトリガーになるのだけど、それをやれるのがトリゲロスだけ。前線に参加させないといけない選手なのに。後方でミサイル発射のスイッチを押す役割を担いながら、自身は発射されたミサイルを追い掛けないといけないみたいな。ロドリも中に入ってくるパブロもショートパスで散らしながらDFの穴を突きたい思惑は伝わるが、それ練習しているの?って。とてもそうは思えなかった。SH込みで。CBとCHのスクエアビルドアップ時、地蔵2トップは来るかもしれない縦パス待ち。HSレーンにはSHを配置。横幅はSBに。当たり前の形は取れているけど、それはレバンテのDFは対応済み。ボールを持てば持つほど停滞した感じ。誰がスイッチを入れるのか。入れる人は居ないのに。

つまり、ブルーノは居ないのに、ブルーノがピッチに居るかのように戦っているというか。もはや見えない選手に憑りつかれているレベルだよね。それだけ凄い選手なのは分かるけど、もうそろそろフル稼働はキツイ年齢。

 

【昨季から】

 

以前、本ブログでビジャレアルの4-4-2に限界を感じてきたという記事を書いた。

futbolman.hatenablog.com

昨季はスクランブル的就任だったこともあり、エスクリバの攻撃志向が成りを潜めていたから来シーズンこそは…というある種の希望を込めて書いたわけだけど、度重なる負傷や主力の移籍でチームとしての骨格は失われたビジャレアルにおいて、前任者のリソースを焼畑的戦略で使い切るのも厳しくないか?と。この試合を観る限りは既にマルセリーノ時代の面影は無く、チームのベースは枯れてきた印象。それは昨季の試合でも徐々に表れていたと思ったから、契約延長をしたエスクリバは新たな舵を切るだろうと。それがレバンテ相手に何も見られないとは。唯一、ポジティブな収穫は勝ち点を落としたこと。この内容のまま生き残れるほどリーガは簡単ではない。劇薬が離脱者の復帰になるか、監督のクビが飛ぶかになるかは分からない。ただ、確かなのはジリ貧のままは変わっていなかったし、今節の情報は今後のビジャレアル対策として大いに活用されるだろう。

 

期待して希望した未来はそもそも無かった。