おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

暑中見舞い ビエルサ試行錯誤中 アンジェ対リール

前回の記事でビエルサのリールの序盤の戦術を纏めた。先ずはこの記事を読んで下さい。

futbolman.hatenablog.com

絶賛苦悩中のビエルサといった状況。ビエルサ曰く「8節くらいまでは様子見」というスタンスを打ち出したらしいので、アンジェ戦は変化が無かったら記事化は無いだろうと思っていましたが、戦術の変化がありましたので書きました。

 

 

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見て分かるように3331ではなく4231 図は相手との噛み合わせのイメージ。

3バックではなく4バックという大きな変化。後ろの枚数が変わったので、ボール保持時の形も当然変わっていました。ポゼッションのこだわりも。詳しくは以下に。

 

【リールの4231による攻守の変化】

リール、ボール保持時の2CBはワイドに位置取り。GKを使う際には中央にCHを配置して菱形化。

相手ボール保持時の守備の形は442ブロック形成よりも、SH圧縮で2SH+2CHで相手IH+WGを捕まえるマンツーマンDF 二度追いは当たり前のタスク。その際にはSHが相手CBやSBにプレスを掛ければ、味方SBは縦スラ。CBが横スラ処理のケースとCHが相手アタッカーがサイド流れした際にはそのまま付いていく。結果的にCHがSB裏を埋めるけど、もう一枚のCHは相手CHと逆IHを見たりしないといけないので、ボールサイドや中央という感じでもなく、人への意識が強かった。

とにかく2CB+CHには前のCFとトップ下の2枚である程度は走って死んで貰うスタンス。SBはWGに迎撃デートだけではなく、CBもCH横に飛び出してそのままプレッシング隊になることも。CH横には頻繁によく出る。その場合、後ろは2、3枚になる。相手がサイド裏に取る時はSHが死ぬまでデートすることも。カオス。マンツーマンDF度は高くなっている。今季のリールで一番のマンツーマンDFだったと思う。狂気の祭典度高め。

 

 

 

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相手SBにプレスに行くべき選手(SH)が相手アタッカーに守備で引っ張られた場合には、CHが中央のスペースを捨ててプレスやSBが縦スラのまま二度追いするので、SHとSBの前後関係はプレス時には入れ替わることがある。WGが絞って受ければ、潰すSBはプレスに出ているから不在なので、CBがデート。スペースを離して相手を捕まえる。猟犬の類。最終ラインはCB+逆SBの2枚になっても前で潰せばいいのよ守備。流石にボールサイドではないCHがDFラインのカバーに入るけど。

 

ポジトラ時、逆SHが張っていてもサイドチェンジよりも速攻的な展開。DFラインの裏を狙おう。横幅起点にCH脇~SB裏で、押し上げられるならCHを前線参加で枚数確保も。後方でのサイドチェンジはあるけど、そこからサイドは変えずに(やり直しよりも)、そのまま速いテンポで相手CBを引っ張り出す狙い。前線は4枚(FW-トップ下、2SH)。これまでの試合と同じような前の三角形状況で、横幅はSBになるけど、追い越しという点では前回のシステムとは異なる。前線の4枚の両HSにはFWとトップ下を配置。ピヴォ当ての要領で前進。相手DFラインを広げるようにSBの死角にはタッチラインを踏む勢いのSHが位置取り。

ポジトラ→カウンターの移行の意識はこれまでの試合とは比較にならないほどの強さがあった。前回の記事(1節~3節)からとは異なるサイドチェンジ狙わない+守備の変更に伴うもの。

 

 

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ボール保持の形(前半よりも後半のイメージ)

 

最終ラインでのポゼッション時、2CB+SB+CHの菱形。縦パスを狙うのはCB。3CBではなくても鍛えられているから狙う姿勢。システムは変わってもCBからの配球は攻撃のスイッチの基準。これ不変。

マンツーマン色が強くなっているので、走って死んで要素はあるのですが、DFの基準が人に付きつつ戻るスペース(相手がロジカルにそこを使うから)に対して、ハッキリしているのでポジトラ時の回復→カウンターは前よりも整理された印象。プレスバックの鬼はどの試合共通だったのですが、中央のプレスバックによる渋滞具合が解消されたように思える。でも、枚数的なリスク管理は綱渡り状態で、サボると死ぬ。相手も空いたスペースに人を潜り込ませる攻撃をデザインしているから。一列目の必死守備から制限して、受け手を必殺迎撃のためのDF動員なので背走シーンは作りたくないリール。でも、リスクを掛けた割には上手くはいかないシーンがちらほら。

 

CHがしんどそう。絶対しんどい。チームがある程度、ボールを運べたら前線参加。前に出て人に付くのがハッキリしていればメリハリがあるけど、SB裏、プレスに出たCB裏、中央のスペース管理、ポゼッション時のCBからの縦パスへのレイオフ展開準備のポジショニングと結構デリケート。ボール保持時の分業制はハッキリしている。2CHの内1枚は残って、前線の4枚+1の役割。CFが裏抜けでDFラインを引っ張り、DFライン前~HSに位置取り。勿論、相手2列目の壁を飛ばすボールを出せるCB陣がいてこそだけど、ボールサイド側のDFになった場合には、デートに出ていった味方DFが空けたスペースに入り込む相手にデートがノルマ。もう1枚のCHがこの守備デザインだからこそ出るか出ないかの判断が難しい。

 

【後半からは夏休みの復習】

サイド攻撃時に横幅SBの位置を高くして参加。ビルドアップ時は2CB+2SB+CHで前半よりもボールを持つ時間を増やしたいリール。前半はマンツーマンDF→カウンターへのフェーズにポゼッションの時間はあまり割かれていなかった反省からの変化。

もう一枚のCHは相手CH脇に入れる2トップ下的位置取り。ボールサイドと逆サイドの各CH脇やチャンネルに配置した4123

相手2列目の各ゾーンの間に人を置いたら、中央のCFも降りてくるセット付き。ここで単独ロングボールがあったのは前半の傾向。縦への攻め急ぎの要因で、ポゼッションの時間を作れなかった。ピッチ幅を広く使ったポジショニングで、SBやCBが運べるなら相手DFを振りきって運ぶ。コースとしては、味方のCH脇のスペース。そのCHは基本的に中央から動かないので運ぶスペースはある。これはこれまでの試合共通項で、このドライブ能力による前進。あわよくば一枚剥がしつつ。

ポゼッションで2CBとCHでハーフラインまでラインを上げたら、両SBは高い位置に。SB視点の前線との縦関係と中央の配置によって、下がり気味のポジションを取ることでサイドを変えてやり直しも。サイドの使い方の攻撃のイメージとしては、1節~3節のリールに近い。カオスからポジショナルへの原点回帰。

 

ネガトラ時

SB裏はSHの果てまで戻りながらデート+CH処理。CHが空けた中央のゾーンは片割れCHが死ぬ勢いで戻ってこい構造。相手を押し込めば残っていたCHも上がるので、SB裏は結局CB任せになる。その時の後ろの枚数は2CBだけ。前半と攻撃は変えたけど、守備の基本タスクは同じ。

 

【これからの課題】

セットプレーからの失点。そのセットプレーに至るプロセスも考えると妥当な運ばれ方をしていたので、不運では片付けられない内容の失点の仕方。リールのサイド裏、そこを対処するCHの守備タスク、中央の空き具合を潰されずに戦えるフィジカルの強いアタッカーの存在。リーグ1はその楽園。ビエルサの求めるインテンシティを考えると、リーグ1という箱は合っているのかもしれないが、それはあくまでも自身だけにフォーカスを絞った話。サッカーには相手が居るスポーツ。相手を見ないといけない。その手の粘りのあるアタッカーが天敵とも言える内容で、ビエルサが求めるものとリーグ1の難しさを同時に突き付けられているようなもの。追い付いたのはカットインからのゴラッソ。再現性とは無縁な夢のあるゴール。これが苦しい時に出たのは幸運だけど、結構しょっぱい。

 

後半は前半に比べて試合をコントロール出来ているリール。しかし、攻め手が窮屈だった前半の方がチャンスはあった。後半の方がこれまでのリールのおさらいなのに、前半の方が体力は死ぬけど合っているというのが切ない。

ピッチの使い方でスペースも後半の方が広くなっているのに、そこへの出し手と受け手の精度が合っていない。疲労感は否めない内容。前半の戦い方からすれば当然なんだけど。

外での三角形からの質。クロスの質も。相手DFラインを広げている前線の4(CF、トップ下、2SH)+1(CH)枚が、どのようにサイドに関わって抜けるのか。クロスのターゲットになるのか。配置とスペースを考えると動き方が合っていないような感じ。

「ピッチ幅使います」

「SBの攻撃参加を作る時間をコントロールします」

「前進の起点になります」

までは共有出来ているが、その先が足りていない。システムを変更した。でも、後半はある程度戻した。突き付けられた課題は目先を変えても現れたって感じかな。一先ず、代表ウィークなのでそこを詰めていく作業に追われそう。