おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

レアル・マドリー対バルセロナ 観て、判断して、決断する

【相手を観て動く】

ボールを保持する上で横幅って大事。

バルサの前半と後半の違いは、バルベルデの指示もありながら、相手を観ること/対応すること/変化することをピッチで具現化できるのがバルサの強みならでは。

相手がいるから成り立ち、相手を無視していないからこそのクラシコだったと思う。

相手を無視していなかったのはジダンのマドリーも同様で。両チームともにシステム上は4312で、ミラーにするために相手を観たマドリー、そのマドリーを観たバルサという図式。

バルサとしては、前半のコントロールの面をどう捉えるかは重要だと思う。結果的には大差で終わったし、後半で修正した点は評価されることだろうが、それはそれ。

前半のバルサは予想以上に困っていた。マドリーとしては前半で決めるべきところを決めていればと思わざるを得ないだろうし、最終的には決めるか決めないかに決着するものだが、前プレの有効性は安定していて前半を支配することに成功していた。

 

 

バルサネイマールが移籍し、デンベレが怪我をした。従来の433を志向するには信頼の置けるWGが不在で、中国から獲得して当初は疑問視されていたパウリ―ニョが中盤からの飛び出しをすることで、スアレスなどがサイドへのサポートに流れても、攻撃時の奥を取る深さと枚数の補填ができるダイナミズムがハマっているバルサ

だからこその4312対決となったわけだけど、バルサとしてはWGがいないので横幅を得るにはSBのポジショニングと相応の時間が必要になる。時間を奪うためにバルサ陣地でのマンマークDFを用意してきたマドリー。

f:id:futbolman:20171227192945j:plainジダンがどこまで予測していたのか?というのが気になる。

マドリーのCWC後のコンディション、ペース管理、コバチッチーカゼミロのスペースをどのように捉えていたのか。

前半はコバチッチーカゼミロ間のスペースを圧殺していたが、ジダンのプランニングを考えると、カゼミロとコバチッチがあのやり方ではカードを貰う予測は立てやすい。90分間クリーンな対応は困難だろう。只でさえクラシコはレフェリングが難しくなりがちであるから。

ネイマールの移籍に伴い仕掛ける選手が減ったバルサであるにしても、メッシはカードを貰ったDFに対して仕掛けるのは当然で(カゼミロが前のクラシコで狙われていたように)。

  • ジダンとしてはどこまで維持できると思っていたのか?

攻撃的交代枠はベイル、アセンシオ。

カゼミロ、コバチッチのスペアは無く、リスク管理の面では結構綱渡りな印象を受けた。だからこそ、ジダンとしては先制点が取れなかったのが最も大きな誤算なんだろう。

バルサの先制シーンでスポットが当たるのを避けられないのは、コバチッチのメッシ番の話。

セルジ・ロベルトのパスを受けたブスケツの起点となったターンと時間の作り方、ラキティッチの中央ゾーンのドリブル、3レーンを使ったセルジの上がりによる3v2のカウンター。中央をドリブルすることでのDFラインのリアクションとサイド(セルジとスアレス)の走路。中央のラキティッチのボールを離すタイミング、パスの角度と長短の調整とプレーとしての精度、セルジのビジョン、スアレスセカンドポストへの侵入。

美しいゴールだったと思う。

焦点となっているのは、ラキティッチのドリブルに対して中央のスペースを埋めないといけなかったケースにコバチッチがメッシ番として忠実であったこと。メッシが中を空けるようにHSに浮こうとしている動きの質もあったけど。

バルサのポゼッション時、バルサ陣地ではマンツーマンDF。バルサがラインを上げて侵入してボールを持っている時は、マドリーは自陣でブロックを敷いてゾーンDF。

人に付くカウンタープレスかスペースを管理するか。そこはフレキシブルに。あの試合のマドリーはネガトラ時の人に付く傾向が強く、コバチッチはそれに則ったといえる。

コバチッチのケースが難しいのは、メッシのマークを離せるのかどうか。即座にマークを離して中央を埋めても、HSで浮いているメッシと運んできたラキティッチで中央ゾーンの不利は否めない。

マンマークDFは責任の所在を明確にする。宇宙条約第6条みたく。

だから責任感は強くなり、使命感も増す。コバチッチが中を埋めても、メッシにやられたら、メッシ番として起用されてマドリーの攻守一体化の骨組みを担っていたコバチッチはやはり議題に挙がっていたと思う。

対するのはレオ・メッシだから。

 

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【433だったらというIf】

 433を442にぶつけるのは定番。

ボール保持時は433で、守備時は442のブロックを敷くのが両チームの共通点であったけれど、今回のクラシコでは互いに4312に落ち着いた。

442に対して433の横幅含めたポジション的優位、三角形の創出が利点となる。攻撃の幅に関してWGとSBで作れるが、4312ならばSBが高い位置を取らないと難しい。

  • 問題はそこまでの時間をどのように得るか?

得られなかったのが前半のバルサ。ボールを休ませる場所の不在=核となるブスケツの機能不全が挙げられる。

仮に信頼の置けるWGがいた場合、433であったら攻撃の幅というのは前半から作れてバルサらしいポゼッションはあっただろうし、同時に433のボール保持時の形を作るための横幅を使った攻撃から、ネガトラ時のカウンタープレス~守備のコンパクトさを形成するための収縮は難しかっただろう。前線からの守備強度が無ければエアポケットが生まれてしまう。そこにはメッシとクリスティアーノの守備免除(攻撃への温存)があるから。

1列目が下がり過ぎず残り気味であるからこそ、基準点が低くならずカウンターへ移行しやすい利点があるので、滅法カウンターが得意なマドリー。それはバルサも然り。433(攻撃時)と442(守備時)の併用だったら近年の従来のクラシコ通りの展開で、トランジションの部分でのせめぎ合いがあって、攻撃時の幅とネガトラ時の強度(相手のポジトラ時の力量)で収支が合うかどうか。

今のマドリーはある程度ボールを持てるから、バルサのポゼッションの時間を減らそうとしていただろう。

メッシの守備が緩いゾーンから運ぶことでラキティッチを釣り出し、ラキティッチブスケツ間を埋めるためにブスケツが引っ張られるとブスケツ周辺ーバイタルのケアが足りない。いくらブスケツでも埋めきれない。前(1stDF)からの連動があるから、後ろのDFの基準が定まるもので、ブスケツをどれだけ困らせるかがバルサ対策の常套手段になっていた。エンリケバルサは顕著だった。

 

互いに433ではなくて4312

WGがいないならそもそも置かないバルベルデの選択。そのピースとなったパウリ―ニョ。異物感がそのまま組織に溶けようとしているのが実態で、溶けきらないで残っているバターのような。

バルセロナを正しく解体しようと準備段階から仕掛けたジダン。中央ゾーンを消しながら攻守を分離させずバランスを取ったカゼミロとコバチッチ。

両チームともに殆ど顔ぶれが変わっていないのに、最近のクラシコでは異質というか新しい風が吹いていた。アジアマーケティングのランチタイムキックオフと共に。

明るいクラシコは変だ。