おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

摂取したもの2018年8月

読書体験として8月は圧倒的だった。今年これ以上の充実感を生産できるか分からないかもしれない。是非とも今後も素晴らしい出会いを求めていきたいが。

再読も多く、今まで見えていなかったものが見えたというか新たな地平が拓けたのは進歩といっていいのではないだろうか。明らかに10代の時とは違う。やはり年齢を重ねるのは楽しい。更新する素晴らしさよ。見えなかったものが見えるのと同時に今のままでは見えないもの=よく分からないダークマター的なものの存在を認知できるのは嬉しい。要するに分からないものが増えたことが分かるのは喜びだ。

先月から続いていた西尾維新強化月間も一先ずピリオドを打った。西尾維新は達者だ。巧い。名前も作品も売れる理由は必然的だ。「ファイナルシーズン」までの『物語シリーズ』で描いたものによって感化され、庵田定夏ココロコネクトシリーズ』を再読して認識と自己批評的観点を据えたキャラ像をアップデート。結果的に『ココロコネクト』の補助線にもなったし、作品群の抽象的な部分がリンクして明瞭になった。

それを決定付けたのは『少女不十分』という作品。西尾維新という作家の姿勢、あるいは物語への寄り添い方が赤裸々的だった。告白そのものだ。これを〝パンツを脱いだ〟仕事と言わないでどうするんだって話。西尾維新の作家としての矜持を読んだ。

さて、森博嗣スカイ・クロラ』は再読。ハッキリ言って「分からなくなった」という感想に尽きる。初めて読んだのは18歳の時。『スカイ・クロラ』は一生を共にしていきたいと思った。いつまでも本棚に収めていたい作品になった。つまり結婚した。

大学のゼミ形式の講義で自己紹介をした際に、好きな作家は森博嗣だと答えたのを憶えている。その場にいた教授含めて全員がポカンとしていた。ハッキリ言ってクエスチョンマークの嵐。好きなものが他者に伝わらない孤独はとても冷めていて寂しいものであるが、あの時の自分を誇らしいとさえ思っていた。

しかし3.11を機に考えが変化した。

あの「時代と日常の切断」あるいは「空気と共同体の分断」によって〝終わらない日常〟が〝終わりある日常〟だと突き付けられた時、退屈で変わらない日常的な厭世観とその少しの超越性を描いた『スカイ・クロラ』の噓くささが恐くなってしまった。読めなくなっていた。遠ざけた。だから今まで再読が出来なかったが、久しぶりに読んでみて一筋縄でいかなかった。18歳の時に読んだ時の衝撃と作品への理解は確かに刻まれている。

しかし、今は「分からない」。作品への距離が開いた。あれだけ、そう、18歳の時に『スカイ・クロラ』を一番分かっているのは自分だと思っていたにも関わらずだ。

何故なのだろうか?それすらも分からない。やはり長い付き合いになるようだ。そういう運命だ。

村上龍はやっと読めた作家。過去に何度か断念した。『限りなく透明に近いブルー』は読書体験時間と作品内の時間の流れ方が違うのが面白い。文章表現の渦に飲まれた。中毒的でありながらも、作中の彼らは享楽的に映り得ない。何も変わらず消費していくだけの息苦しさという閉塞感とそこから抜け出せない絶望と虚無が暴力的に描かれている。全然、気持ち良くない。なのに、なぜ鮮やかなのだろうか。

町田康も初めて読んだ。まるで落語の中にいるよう。立川談志を思い出した。

ミステリとしては『身代わりの樹』と『ブルックリンの少女』が印象的だ。というかルース・レンデルはやはり上手い作家。

 

ルース・レンデル『友は永遠に』

佐藤尚之『ファンベース』

椎名誠『孫物語』

森博嗣スカイ・クロラ

ルース・レンデル『身代わりの樹』

町田康夫婦茶碗

村上龍『69』

町田康『くっすん大黒』

村上龍限りなく透明に近いブルー

円居挽『誰が死んでも同じこと』

押井守『勝つために戦え!監督稼業めった斬り』

ルース・レンデル『石の微笑み』

川上量生『鈴木さんにも分かるネットの未来』

エドワード・D・ホック『怪盗ニック登場』

横溝正史『女王蜂』

川上量生『コンテンツの秘密』

宮内悠介『カブールの園』

西尾維新『少女不十分』

長谷川宏『幸福とは何か』

西尾維新忍物語

宮内悠介『ディレイエフェクト』

西尾維新結物語

平野啓一郎『私とは何か』

西尾維新撫物語

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』感想 新世界へ行け少女たち - フトボル男

西尾維新業物語

小川一水第六大陸2』

小川一水第六大陸1』

佐渡島康平『We are lonely but not alone』

西尾維新愚物語

ドナルド・E・ウェストレイク『逃げだした秘宝』

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ギヨーム・ミュッソ『ブルックリンの少女』

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