おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

森田るい『我らコンタクティ』 現実を見ているからこそロマンが見れる

ろこ:今回のテーマがマンガじゃないですか。相当難易度高いと思うんですよ。

俺はある種、一回目に読んだ時に、マンガ=物語として楽しんで面白かったなとなったんだけど、そんで政夫君と打ち合わせというか話すじゃないですか。全然違う視点が出てくるわけですよ。俺との関係性があるから政夫君は優しくこう考えると面白いよと道しるべ的なものを教えてくれるわけじゃないですか。理解を広げるという形というか、抽象的なものを、これこれこうですじゃなくて、抽象的なレベルで関係性を伝えるってめちゃめちゃ難しいじゃないですか。

今回テーマとして扱うと、物凄いプロセスがあったわけなんです(笑)

 

政夫:(笑)

 

ろこ:今回『我らコンタクティ』をやろう!となってどうなんですか。

 

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

 

 

政夫:第9回はそれについての作品語りがメインだったわけですよね。で、一回ラジオを録ったわけですよ。それが、あまりにも難しすぎたというか。あまりにも音声メディアで伝えるには困難が伴っていたわけですよ。

 

ろこ:まず、俺がどこやっているの状態だったからね。

 

政夫:僕が用意してきたものが一コマ一コマレベルなんですよね(笑)

 

ろこ:(笑)

 

政夫:ろこさんはもっと物語レベルの話だと思っていたようで、そこで齟齬が生じていて、情報の繋げる部分が合わなかったというのがあって、僕は自分で準備してきたものをブログに書いたわけです。

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ろこ:ありがとうございます。

 

政夫:じゃあ第9回どうするかってなった時に『我らコンタクティ』をリベンジしようとなったんですけど、内在性の問題というか、僕の中でマンガというのは多様な読み方があり、多角的であるものだから、色んなものがあるはずなんですよ。可能性という意味で。

僕が書いた『コンタクティ』の記事は、第9回に向けて纏め上げるのに一心に準備してきたものなので、それをただブログに書き写しただけのもの記事なんですけど、僕の中ではあれ以上の読み方が無かったんです。結論をいうと、ブログ記事以上の読みが僕には無かったんです。僕の内在的な問題で。多角的であるはずなのに、僕は読み方が凄く一面的なんだなって痛感したわけなんですよね。

第9回をリベンジしようとなった時から色々考えたわけなんですが、『コンタクティ』をパラパラ読みながら「これとかどうかな」と思うと、ブログに書いてある(笑)もう書いてあんじゃん(笑)みたいな話になるわけですよ。

そうなると、俺の内在性ってどうなのって。多角的であるはずなのに全然一面的じゃんみたいな。あれで纏めたら、俺の中ではオシマイなの?って問題が出てくるわけです。

 

ろこ:マンガの表現というかね。

 

政夫:だから『コンタクティ』に関しては何の準備をしていないと。ブログに書いたものが僕の答えだというスタンスなんですよね。だからこれから『コンタクティ』について話すので。

 

ろこ:え、話すの(笑)?

 

政夫:ろこさんが話したいというスタンスじゃないですか。

 

ろこ:そうだね。リベンジという名目としては。

 

政夫:内在的な問題で、ある一面的な観方が定着してしまうと人は容易に多角的に見られないという問題なんですよ、これは。僕の中で固定化してしまっているわけですよね。

あの記事のような読み方が僕の中で固定化してしまっている。それをどうにか破かないと、僕は『我らコンタクティ』について提示するものがないという立場なんですよね。これは人によっては、ここだけを意地悪く聴いたとすると、とても自信満々に自分の記事が素晴らしいからあれ以上のものが繰り出せないんだという風に聞こえるかもしれないけど、全くそれとは逆で、そういう問題じゃないんですよね。

本来、もっと色んな読み方があるはずなのに、そういうスタンス、前提を取っているはずなのに、僕の中であの読み方しかないというのが問題なんですよ。

 

ろこ:その前提の話は、政夫君のレベルでは相当高いと思うんですよ。

 

政夫:だから、僕は色んな人のレビューを見るわけですよ。

 

ろこ:なるほど。

 

政夫:自分に無いもの、固定化しないためにも量的に観測したいという、参考にしないけど観るというのはそこなんですよね。

だけど『コンタクティ』に関しては一回書き上げちゃったら、もう動けないという状態で困っていますね(笑)

 

ろこ:俺はその読み方をしてこなかったというか、その楽しみ方は無かったから、今回『我らコンタクティ』をテーマとして扱うことでもう一回ちゃんと読んだよね。

そこで、分からない部分が出てくるし、直接政夫君に聞いた方がいいんじゃね?みたいなこともあるじゃないですか。だから、やってくださいよ。

 

政夫:なんですか(笑)

 

ろこ:これ、番外編で政夫君がそもそもマンガが読めないと言っていた人間じゃないですか。

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政夫:そうですね。

 

ろこ:克服はできそうなの?

 

政夫:出来ていないです。

 

ろこ:マンガの表現というのは今回扱ってみて相当難しいというのが分かっちゃったから。観ながら聞いてもいいですか。まず、ズバリ言っていますものね。「ロマンの功罪」と。

 

政夫:あ、僕のブログですか(笑)僕のブログを読みながら言うんですか。僕はてっきり本編の話かなと思っていたんですけど。

 

ろこ:本編の話もあるけど(笑)時間下さいよ。

 

政夫:いいですよ、繋ぐので。第8.5回ですね、番外編で、僕はマンガを語るのってめちゃめちゃ難しくないみたいな話をしたわけですよ。

一面的には第9回の『我らコンタクティ』を語る時のハードルを上げるための装置だったわけなんですけど、その手続きを踏まえたことによって、否が応でもマンガに真剣に向き合う一ヶ月を設けたかったわけですね。その結果、ブログに纏めたような準備をしてきたつもりだったんですけど、ハッキリ言ってラジオという媒体を無視した情報だったんです。

となると、僕が直面したのは、伝えることを度外視していた自分ということですよね。自分が、マンガを読んで考えたこととは別に、伝えるというのは別のベクトルなんだなって初歩的な問題にぶつかったわけですね。

そこから、ろこさんに言われたように、君はマンガを語るのが難しいという問題を克服できたのかというと、出来ていないと先ほど答えたように、僕のブログ記事を読むと人によっては「これは凄いよく出来ている」とか「全然ダメだ」とか色んな意見があるでしょうが、どちらにしても僕の中ではあれ以上のものが出てこないなという語りなんですよね。それは、自分で持ち上げているとか卑下しているとかそういう矮小的な話ではなく、前提としてマンガってのは色んな読み方があるはずなのに、僕は書き上げてしまったものに対して、多角的な表現が思いつかないというのに問題を感じているという話です。だから、非常に困ったままなんですよね(笑)

 

ろこ:俺は聞きたいね。2つ。

まず、この物語はハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。捉え方は色々あると思うんだけど、政夫君の論を聞きたい。

 

政夫:ハッピーエンドですね。

ブログの中では逮捕という結果で終わっているから、アンハッピーエンドのように受け取れるかもしれないけど、と書いた記憶はあるんですけど、僕の中ではハッピーエンドだという解釈ではあるんですよね。それはなぜかというと、これはブログには書いていないんですけど、冒頭のカナエちゃんとかずきの第1話の目線というのが、カナエちゃんは飲み会の後、歩道橋でかずきと出会うまで目線がずっと下なんですよ。かずきは、伸びていてカナエちゃんを見下ろす側であるから目線は下なんですけど、かずきというのはフラットな観方ができるキャラクターですよね。

 

ろこ:いや、俺は、かずきのキャラが全然掴めなかったけど。

 

政夫:それはちょっと置いといて(笑)

最終話で捕まった後に、ヒュ~イ~ヒュ~イ~というシーンがあるんですけど、カナエちゃんは捕まった船の中で「ヒュ~イヒュ~イ~って踊っているよ」と言いながらも目線は上を向いているわけですよ。カナエちゃんの目線は下から始まったのに、最後は上を向いているわけです。

で、一方でかずきはヒュ~イ~ヒュ~イ~と涙を流しながら踊って終わるわけですよ。

 

ろこ:おうおうおう。

 

政夫:ここで目線の揺らぎというのがあって。

僕は最近『文豪ストレイドッグス』というアニメをめちゃめちゃハマっていまして。

 

 

これ、本当に傑作だったんですけど、『文スト』の特徴的な演出に飛行機雲を使う演出があるんですよ。画面のキャラは動いていないんだけど、奥に映っている空に飛行機雲がゆっくり線を引いているシーンがあるんですよね。

で、この飛行機雲って何だろうって思うわけですよ。それは、飛行機雲は、キャラクターたちが向かうべき場所や方向を指し示しているわけですよ。だから矢印になっているんですよ。キャラクターたちが行くべき場所や将来的なものを暗示しているわけですよ。

 

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そこから受け取ると、ロケットが宇宙空間に出ていく、そのロケットの光や上昇していく姿もどことなく飛行機雲ぽいんですよ。僕はまんまロマンの昇華と書いた気がしますけど、上昇しちゃって行っちゃったから、ロマンが。そのところだけを見ればハッピーエンドだよねと。

ただ一面的ではない。アンビバレントな物語だから、それを功罪と書きましたけど、罪でいえばアンハッピーエンドかもしれないけど、目線と上昇していくロケットの尾や昇華していく姿を捉えると、キャラたちは幸せだったのではないかという。

 

ろこ:いや、いいですね。

 

政夫:果たしてこの物語は、キャラの幸福・不幸というのを読者の目線で図れるのかという問題がある。

 

ろこ:なにその、そもそも論は?

 

政夫:読者的には捕まっているじゃん、アウトじゃんみたいなイメージを抱かせるんですけど、作中のキャラはそれを踏まえた上でやっちゃっているわけじゃないですか。となると、キャラと読者が抱くイメージにギャップがあるわけですよ。それを読者側の倫理で図れるのって?

 

ろこ:2つ目の質問で聞こうと思っていたんだけど、作者はこのエンドを想定しつつ、政夫君はそういう風に受け取ったと。で、俺はそれを聞いて受け取ったと。

だから、作者はどういうことを届けたかったのかなって。想像しがたいことであるんだけど。

 

政夫:これ、ブログで書いた記憶がありますけど、教訓めいたものではない気がします。ロマンの功罪だと一面的には書きましたけど、それが説教的な語りでもないし、こういうことをやっちゃいました!ダメだよみんな(笑)みたいな話でもない。

 

ろこ:そこよね。

 

政夫:なにかを教訓的に扱っているわけでもないし、それが難しくて、物語に対して意味を求めてしまっている部分、なにか教訓めいたものを期待してしまっている態度自体がどうなのかなって思ったりするわけですよ。この作品に対しては(手塚治虫はマンガは風刺と告発だと述べていましたが)。

 

ろこ:固定観念ということで。

 

政夫:物語を通して持ち帰るものがある、なにかを期待するわけです。貴重な現実を生きる僕たちが、虚構を通して、何かしらの期待を抱くわけですよ。何かしらを持ち帰りたいわけですよ。現実に還元したいわけですよ。

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なんだけど、ロマンの功罪と書いたのは僕がそう思ったから書いたわけなんですけど、ただ、それが作者が言いたかったこととするとあまりにも救いが無さすぎるわけですよね。さっき、ハッピーエンドと言ったからには(笑)

 

ろこ:(笑)

 

政夫:それがどうも(僕の中でも)整合性が取れていない。

 

ろこ:目線の話で腑に落ちたけど、描写ではやっぱり。

 

政夫:簡単にいえば良いことも悪いこともあるよね、みたいな話ですよね。なにか目標があれば人は活き活きするという話でもあるわけですよ。カナエちゃんもそうであるし。他人の夢でしかなかったものが、自分の夢になったことによる充実感ですよね。

その果てが、あの二人の暴走ですよね。暴走というのは簡単なんですけど、あそこまで行ったら止まれないでしょ。止まんないでしょって。それを止めようとするのは現実という僕らの理性なんですよ。

 

ろこ:おっと、出ましたよ。どういうことですか。

 

政夫:カナエやかずきはロマンやファンタジックなものですよね。現実的なものを一時的に超越してしまっている。その清算として逮捕という結果で終わるんですけど、僕らが倫理的に説いている、恰も倫理的な読み方をしてしまう、アンハッピーエンドなのではないかという部分は、ある種の風刺とも取れるというか、僕らの観方そのものが現実的なんですよ、やっぱり。

 

ろこ:感情と論理は対立しない、そういうのを超えちゃうということですか?

 

政夫:ロマンを優先させると、現実を無視してしまう、一時的に現実を超えてしまう。その結果ですよ。

現実的に僕らは眺めるんですけど、それは僕たちの現実的な態度なんですよね。キャラの都合ではないんです。

 

ろこ:そこの解釈難しいな。

 

政夫:だから、僕らは暴走と言うんですけど。

 

ろこ:そこが、かずきに乗っかれないところかもしれない。

 

政夫:それはロマンを獲得した者にしか見えない景色。

 

ろこ:うわ。ちょっとエグイとこを書き過ぎですって。

 

政夫:今、ちょっと考えただけだから(笑)

 

ろこ:ここに立ち向かうのはラジオならでは、です。

 

政夫:え。

 

ろこ:(笑)この瞬間が、俺らが『コンタクティ』に向き合ったという。

 

政夫:情報レベルでいえば間違いなく僕らはコンタクティしていますよ。

 

ろこ:そういうことを言いたいのよ。

 

政夫:俺たちコンタクティですよ(笑)

 

ろこ:(笑)いや、凄いね。抽象度が高すぎますわ。読む人は分かれますかね?

 

政夫:これは、みんな良いと言う作品じゃないですかね。僕が観ている感じでは否定的な意見は無い。なかなか高評価な作品だと思いますけど、現にめちゃめちゃレベルの高い作品ですから。

 

ろこ:もう解決しましたよ。俺の疑問は。

 

政夫:え、ろこさんが読んでどう思ったのかを聞かせてくださいよ。

 

ろこ:俺の?感想じゃなくなるよ。前回の失敗を経て、改めてどう俺らはコンタクティさせるかみたいなことを考えたよね。

 

政夫:(笑)マンガよりもラジオなんですね。

 

ろこ:ある種の刺激だよ。ダメージという名の。

 

政夫:(笑)

 

ろこ:そういう意味ではバッドエンドかもしれん(笑)

 

政夫:ラジオをやる前に、僕の記事に引っ張られようが引っ張られなくても、ろこさんの意見が聞きたいですと言った気がするんですけど、めちゃめちゃ引っ張られてますよね(笑)

 

ろこ:(笑)しょうがない。政夫君を再生させなアカンから。俺の視点はずっとカナエちゃんよ。

 

政夫:僕もそうですよ。カナエちゃんは主人公だなって思いながら。

 

ろこ:俺はカナエちゃんなんよ。

 

政夫:え。

 

ろこ:嫌な仕事を黙々とやってさ、日本社会の閉塞感みたいな。

 

政夫:日本社会の閉塞感…(笑)

 

ろこ:(笑)

 

政夫:タームがデカい。

 

ろこ:物凄い現実があったわけですよ。ツライというか。

 

政夫:パッとしない現実ですね。

 

ろこ:俺もそうですもん。常日頃楽して生きたいと思っていますよ。

 

政夫:その話に乗っかると、ろこさんの愚痴に(笑)

 

ろこ:(笑)

 

政夫:カナエちゃんをダシにしたろこさんの愚痴語りになるから。

じゃあ、どうすればいいのか?って、『我らコンタクティ』を読めば分かるでしょ。ロマンを求めようということですよ。内在的にロマンを持てば、幸せになれるんですよ。

 

ろこ:嗅覚凄いな(笑)

 

政夫:目標ですよね。夢ってありますか?って聞かれることも、お互いこういう年齢になると寧ろ聞かれる機会も少なくなるわけですけど、お互い60間際ですものね。

 

ろこ:おい。

 

政夫:夢を持ちましょう。

 

ろこ:このラジオもそうですよ。体験を具現化していっているわけじゃないですか。もう9回目ですよ。

 

政夫:なんだろう。ろこさんが、そういう話をするとそっち(自分探し系)の方に行っちゃいそうな気がする。

 

自分探しが止まらない (SB新書)

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ろこ:それは鼻利きすぎよ(笑)

 

政夫:ブレーキを掛けたくなっちゃう(笑)それ、第8回でやった自分探しじゃんみたいな。

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ろこ:おい、俺の引き出しを閉めるな。

 

政夫:やっぱり、内在的な問題ですよ。

 

ろこ:夢を持ち続ける難しさを知っているわけじゃないですか。『ブルーピリオド』でもやったよね。

 

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンKC)

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政夫:夢を持つと、持ち続けるは確かにまた…延長線ではあるんですけどね。時間や覚悟や責任、もちろん才能と努力みたいに枝分かれしていきますけど。

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だからある程度、年を取ると夢を持ち続ける難しさに目が行っちゃうわけですよ。そういう人間には宇宙で映画を公開することは出来ないんですよ。

『我らコンタクティ』がシレっとやっているのは、マンガだからトンデモ理論でも宇宙に飛ばすためのテラリウム発電とかよく分からないですもの、やっぱり。本当に大丈夫なの?とか思うわけですよ。なんだけど、一人でカバーしているわけですよね、かずきが。彼のポテンシャルの高さというのは、作中で一々ツッコミは入っていないわけですよね(安川教授は例外でした)。かずきのポテンシャルありきの企画なわけですよね。でも、かずき一人では、あのロケットは飛ばせなかったわけで…というところにカナエちゃんという存在がとても主人公に見える。

カナエちゃんが入ったことによって、という物語なので。全部が動かしたということで、カナエちゃんが主人公ですよね。

 

ろこ:そっちから、カナエちゃんをね。

 

政夫:もちろんカナエちゃんからなんですけど、かずきを経由してもう一度カナエちゃんを覗くと主人公だなと思って読んでいました。

 

ろこ:カナエちゃんは俺だったという話をしたけど、カナエちゃんはいくつか知らんけど、それなりに社会経験があって現実を見ているわけですよ。

そこが、現実を見ているからこそロマンを見れるということもあるわけじゃないですか。

 

政夫:うん。

 

ろこ:そこをラジオとリンクさせたい。

 

政夫:非常に面白い。現実を見ているからこそロマンが見れる。カナエちゃんって、なんの才能があるの?って聞かれると困るキャラクターですよね。特別容姿が優れているわけでもないし、なにかスキルがあるわけでもなく、ただカナエちゃんの他人を気配る優しさですよね(ブログでは距離感として書いています)。梨穂子さんやテッペイだったり。かずきの小さな世界の人間関係の場を繋ぐ、カナエちゃんのバランスの良さというか。そこが彼女の良さが出ている象徴的なシーンだと思うんですけど、結果的にカナエちゃんはロケット開発に何を与えたのかというと、かずきの周りを変えたことが結果的にかずきを変えたことになると思うんですよね。

それは、カナエちゃんの行動力ありきなんですよ。カナエちゃんは行動ができるんです。現実で腐っていても、ロマンがあれば現実の中で行動できるんです。そこですよね。

 

ろこ:何かあったと思う。出来ることと出来ないこと。それを自覚することが人生で区切りになるというかね。

 

政夫:止めてくれよ、お悩みは(自分探し)!(笑)

 

ろこ:(笑)

 

政夫:流れ的に危ないなと。

 

ろこ:嗅覚が過ぎるって。まだ何も言っていない(笑)

 

政夫:ろこさんの座右の銘は挫折だと思うんですけど(笑)好きな言葉は挫折(笑)

 

ろこ:誰がや(笑)

 

政夫:昨日、テレビで、世界卓球やっているじゃないですか。石野卓球じゃないですよ?ツイッターの面白い方じゃなくて。

 

ろこ:聞いてない(笑)

 

政夫:卓球って中国なんですよね。競技人口が8000万人くらいいるらしいです。中国の強さの秘訣というのは、超選ばれし者たちがいて、それは国が養成しているわけですけど、その施設に1軍・2軍合わせて100人くらい中国の全国から選ばれし強者たちが日々練習をしているという、それに至るまでの幼少の段階、育成段階の話なんですけど、よくサッカーだと成功体験がどうのこうのとか言うじゃないですか。

中国の卓球は逆でした。失敗から学ばさせるだと。失敗した時から、どのように立ち直させるかというのを戦略的に考えさせる教育をさせていましたね。それはもちろん、リバウンドメンタルが関わってくるわけですけど。ミスった時のコントロールの仕方。メンタルだけではなく、戦略的に、あるいは技術的に。失敗から学ばさせるというのが中国卓球らしいんですよ。

 

ろこ:面白い。

 

政夫:これ、える・ろこ案件だなって思って。

 

ろこ:俺案件ではないけど(笑)成長過程というのは気になるけど。

 

政夫:失敗から学ぶというのが、とても現実的な話だと思うんです。成功というパイよりも、失敗というパイの方が多くない?というとても現実的で合理的な話だと思うんですよね。

ただ、成功体験の方がより快楽的だから、成功の旨味を知れるから、より突き詰められるという意味では合理的なのかもしれないし、ただ、僕のイメージでは失敗の方が多いのだから学び取る、立ち上がるという方がよりタフになっていくという考えは凄い分かる人間なので。

だから、カナエちゃんですよね。カナエちゃんはクラスのリーダー的存在だった過去があるわけですよ。スクールカースト上位だったわけですよね。小学校自体でスクールカーストは顕在化しないという研究はあるんですけど、中学校くらいから…。

 

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

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ただ、所謂コントロールする側だったカナエちゃんが、今は社会的にコントロールされる側で、良い様に扱われる。大きなギャップがあるわけですよね。それは誰しも抱えるものというか。もちろん、みんな、なだらかにある程度のポジションをずっと生きたいのかもしれないけど、多少の落差や上下があるというかね。

そこで、どう現実と向き合っていくのかと、失敗と向き合っていくのかという話になるし、カナエちゃんは仕事は稼ぎのためにしているだけで、他にアテがあるんだったら、お金持ちになれるんだったら、仕事を辞めたいと思っている仕事なんですよ。そこで転がり込んできた宇宙ロケットの話。金になるかなと思っていたら、お金どうこうの話じゃなくなってくるのが面白いところじゃないですか。とても、

お金というのが現実的な話なんですよ。超現実(お金)を見ていたカナエちゃんが、ロマンに引っ張られていくのが面白くないですか。

 

ろこ:うん。その…

 

政夫:いや、これ以上続けるとろこさんのスイッチが入りそう(笑)

 

ろこ:せやな(笑)カナエちゃんは俺みたいなこと言っちゃったけど、他人からこうあるべきというものからはみ出て欲しい、超えて欲しいみたいなキャラだったんですよ。カナエちゃんは。

 

政夫:はみ出るにはロマンなんですよ。お金自体が物凄く現実的な物差しなんですよ。それをとても社会的な不利益、損害をカナエちゃんは受けるわけですから。それを被っていることは現実的にみれば不利益でしかない。

けども、ロマンのために合理的に、カナエちゃんの中での現実的な選択はアレだったわけですよ。

 

ろこ:さっきね、俺は、この物語は読者を選ぶと思うんですよ。なぜなら、ヒエラルキーでいう上位の人には響かないと思った。

 

政夫:あー。絶賛だとか褒め讃えているのは底辺だと。

 

ろこ:(笑)

 

政夫:上級国民ではないと(笑)

 

ろこ:そこまで言っていない。ただ、上位の人にはね。

 

政夫:それは何故?

 

ろこ:お金を持っていたら〇〇みたいな人(本編ではガッツリ名前が出ていますが、ろこさんの配慮を要望したため伏字です)たちは違うベクトルで、ロケットを飛ばしているわけじゃないですか。彼らに、ここまでのロマンを、この解釈は出来ないんじゃないですかね。

 

政夫:そうですか?(笑)

 

ろこ:自分たちが金持ちじゃないから、そう思うだけかもしれないけど(笑)

 

政夫:ただ間違いなく言えることは、この物語が刺さる・刺さらない人が上級国民であろうがなかろうが、それはとても些細なことで、この物語が分かる人・分からない人がいるんだったら、分かる人でありたいなと。

 

ろこ:それが言いたかった!

 ※この記事は4月に配信した音源を一部文字起こししたものです

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