おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

師匠

内田樹の著作を読むと随所に師弟関係の話が盛り込まれている、と思っているのだけど、端的に言えば「師との出会いを通した人生の豊かさ」になるのかな。そんな「師」と仰ぎ見る存在を持つことの意味を色々と記していたりするのだけど。 僕にも師匠と呼べる存…

暗中模索・書くことの難しさ

ブログ上ではこの数か月、『俺ガイル』読解に費やしてきたわけですが、4巻の記事を書いたところから具合が悪くなってしまった。正確には5巻の記事の準備に取り掛かっている辺りで。 健康の問題というよりも「このまま読んで、書いてみても、想定していた以上…

渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』4巻 漱石『こころ』から鋳型に入れたような性悪説と性善説への留保

夏目漱石の『こころ』に関する比企谷八幡の読書感想文が4巻では象徴的な意味を持っています。 彼にとって『こころ』は人間不信の物語であり、ハッピーエンドを否定していると読み解けている。ただそこには人が個人として抱かざるを得ない孤独があり、それを…

渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』3巻 すれ違い・客観性・自意識の保守性

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。3 (ガガガ文庫) 作者:渡航 発売日: 2012/11/02 メディア: Kindle版 孤高こそ最強である。 これまでのようにボッチの正当化の反復が見られます。つながりは弱さを生むものであり、即ち孤高である自分は強いとする2巻…

渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』2巻 非同期的な不完全的なコミュニケーションの始まり

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2 (ガガガ文庫) 作者:渡航 発売日: 2012/11/02 メディア: Kindle版 ボッチであることを正当化する内省は、比企谷八幡自身の矜持のように描かれています。 群れることを弱い草食動物のように例え、逆説的に孤高であ…

渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』1巻 「まちがっている」ことで始まる二項対立のカウンターと反復的な温存性

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫) 作者:渡航 発売日: 2012/11/02 メディア: Kindle版 青春とは嘘であり、悪である。 この一文から作品は始まります。 「青春フィルター」というバイアスは、比企谷八幡曰く全てを正当化するために「青…

近況報告*僕は書けなかった

書かなかった。書けなかった。 この違いは大きいわけですが、僕はどちらかに割り切れないまま往来するようにして悶々としていた。 スランプなんて格好いいものじゃない。野村克也に言わせれば未熟者にスランプは無いらしい。じゃあ、スランプは縁遠いものに…

山崎亮『コミュニティデザインの時代』を問う 公共性と「活動」の再編

futbolman.hatenablog.com 本稿は上の文章の延長にあるので、まずはそちらを参照していただきたい。 取り上げた山崎亮の本に対して、私はハンナ・アーレント的であると最終的には位置づけた。不透明になった公共性と「私」と「公」を結ぶ中間領域(つながり…

山崎亮『コミュニティデザインの時代』感想 つながり、中間項、「活動」を求めて

コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書) 作者:山崎 亮 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2012/09/24 メディア: 新書 コミュニティデザインとは何だろうか。 最初にコミュニティデザインについて単語毎に分けて見ていく。…

本と私 いかに時間を調整していくか

本を読む際には「中」を読むのと同時に「外」を読むことが大事だと考えています。 本を読むのは大変です。 なんといっても「読む」ことが難しい。只でさえ「中」を読むのに四苦八苦するのに「外」も読まなければならない。 昨年末から「文学」について考えて…

田中辰雄 浜屋敏『ネットは社会を分断しない』感想 それでも分断を引き起こしかねない内面性

ネットは社会を分断しない (角川新書) 作者:田中 辰雄,浜屋 敏 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/10/10 メディア: 新書 本書の結論はまさしくタイトル通りとなる。 この結果は、事前の私たちが抱くような一般的なイメージや価値観や分断を促してきた…

オスカル・P・カノ・モレノ『バルセロナが最強なのは必然である』感想 サッカーを批評するということ

バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー 作者:オスカル・P・カノ・モレノ 出版社/メーカー: カンゼン 発売日: 2011/09/08 メディア: 単行本(ソフトカバー) 本書には明らかに言葉の回復と再起動が立ち上げられて…

『俺ガイル』を通した内省的なあとがき

futbolman.hatenablog.com この一か月間は、日夜文学について考えてきました。 その中で、文学とは「時間軸を作る」ことだと一時的な結論を出しました。 むしろ、文学のみならず批評などの二次創作含めた表現全般に言えると思いますが「語り直す」ための時間…

渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 サブカルチャーの現場から文学への素朴な応答

「体験に対する胎盤」たりうる物語の「かたち」とは何か、が本書における最大の問いである。それはまた、様々な物語を通過儀礼という「凡庸」で「紋切り型」の「物語」に徹底的に還元することで、その可能性を探ろうとする試みでもある。現代文学がそのアイ…

『選ばれた子』

人が嫌いだ。 馴れ合うのは疲れる。人と話したくない。 だから、声なんかいらない。 そう、少年は願った。 ある日、少年は声を失った。会話することに疲れていた少年は口を閉ざし、心までも閉ざした。 そして他人と距離を取り、少年は疲れることすらも止めよ…

新年!2019年が終わってない

タイトルにある通り、2019年の振り返りも2010年代の総括も終わっていない。 何ならゼロ年代の亡霊を葬る祈りもまだ途中。 テン年代の亡霊って出てくるもんなんですかね、とか考えると、私は2010年代を「眼差しの変容」と評したい気持ちもある。 圧倒的な情報…

なぜ、おおたまラジオは挫折したのか

最後にラジオを配信してから半年が過ぎようとしています。 およそ一年弱、月一ペースで配信をしていた私たちがなぜ沈黙をせざるを得なかったのか。 これは内省的な文章でしかありません。 まず前提として、これまで依存していた配信環境のサービスが終了して…

朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』感想 だから「わたし」と「君」に着地する

この世は舞台、人はみな役者 シェイクスピア『お気に召すまま』 世にも奇妙な君物語 (講談社文庫) 作者: 朝井リョウ 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/15 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 本稿は「脇役バトルロワイアル」のみを取り扱い…

ヤマシタトモコ『違国日記』2巻感想 記号化された対比への祈り

違国日記 2 (フィールコミックスFCswing) 作者: ヤマシタトモコ 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2018/05/08 メディア: コミック この商品を含むブログ (2件) を見る futbolman.hatenablog.com 2巻は「対比」が多く用いられている。 詳しくは以下で記してい…

加藤千恵『ラジオラジオラジオ!』感想 肥大化した虚構としての東京と痛々しい自意識を巡る

ラジオラジオラジオ! (河出文庫) 作者: 加藤千恵 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/05/07 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 地元のラジオ局で番組をもつ、高校3年生の華菜と智香。智香の声が好きでラジオに誘った華菜は、東京に行く日…

おおたまラジオについて

インターネットラジオのおおたまラジオを聴いて下さっている方、聴いていた方々どうもありがとうございます。 おおたまラジオは昨夏から毎月1本という更新ペースで配信していたわけですが、ラジオ2年目というタイミングだからこそ今後のコンセプトの具体的な…

ヤマシタトモコ『違国日記』1巻感想 他者性という祈りと孤独への準備

違国日記 1 (フィールコミックス FCswing) 作者: ヤマシタトモコ 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2017/11/08 メディア: コミック この商品を含むブログ (2件) を見る 1巻を読んだら傑作だった。 とても素晴らしいマンガだったので、感想を如何に記していく…

古市憲寿『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』感想 あきらめによるモラトリアムの延長と成熟という名の幼稚化の拡大を図る

政夫:今日は古市憲寿さんの『希望難民ご一行様』という本、2010年に刊行された本について僕らが頑張って読み解いていこうと。 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) 作者: 古市憲寿,本田由紀 出版社/メーカー: 光文社 発売日:…

おおたまラジオ第11回 古市憲寿『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』 現代的な生きづらさに起因する若者像と成熟モデルのアップデートを図る

聴いて下さった方々、ありがとうございました。 『さらざんまい』を観て下さい。それだけを望みます。 欲望を手放すな。 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) 作者: 古市憲寿,本田由紀 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2010/…

おおたまラジオ第10回 突発的超雑談/谷川ニコ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い』喪157感想

政夫:一応第10回と銘打ちましたけど、今回は本来ならば古市さんの『希望難民ご一行様』をもとに読み解いていこうかなという流れだったんですけど、今日はちょっと違うということですよね。 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新…

おおたまラジオ第9.5回 

podcast-is.seesaa.net おおたまラジオ第10回の「自分探し回」は5月26日に収録予定です。 課題図書は古市憲寿の『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』となります。 「自分探し」の文脈は、ラジオでいうと第8回によるものです。 お前ら、…

森田るい『我らコンタクティ』 現実を見ているからこそロマンが見れる

ろこ:今回のテーマがマンガじゃないですか。相当難易度高いと思うんですよ。 俺はある種、一回目に読んだ時に、マンガ=物語として楽しんで面白かったなとなったんだけど、そんで政夫君と打ち合わせというか話すじゃないですか。全然違う視点が出てくるわけ…

SNSとクラスタ化に伴うフィルターバブルについて

政夫:ポッドキャスト、地味に更新しているじゃないですか。 podcast-is.seesaa.net ろこ:はいはい。 政夫:第7回のスロウハイツの回をちまちまと更新している(笑) で、僕のおおたまラジオツイッターアカウントでは、ろこさんがポッドキャスト化したリン…

おおたまラジオ第9回 ポッドキャスト論/批評とレビュー/森田るい『我らコンタクティ』

~17:55 ポッドキャストとSNSの使用について ~35:40 批評とレビューの違いと観測によるエンドレス・ミー問題 ~1:35:54 森田るい『我らコンタクティ』の感想と疑問 マンガを語るという多角的な読み方に対する一面的な固定化に伴う内在的な問題 平成最後のお…

森田るい『我らコンタクティ』感想 ロマンと現実を巡る功罪

我らコンタクティ (アフタヌーンKC) 作者: 森田るい 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/11/22 メディア: コミック この商品を含むブログ (3件) を見る 第1話 仕事をやめられるかもの巻 第2話 八百屋お七で危機一髪!の巻 第3話 お兄ちゃんと夜明けの巻 …