おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

第15節 バレンシアVSラージョ 開始30分で終わった試合

番狂わせは起きず、バレンシアが上手かった。スペインのメディアによっては「およそ30分でバレンシアがラージョ相手に試合を終わらせた」と揶揄された試合。前半でフェグリとピアッティが3点決めて、危なげなく試合を殺した。途中でアンドレ・ゴメスが退場したことで、守備に比重を傾ける際でも守備一辺倒になることもなくバランスを欠かず、きっちりと跳ね返してカウンターに繋げていた。選手層含めた両チームの前線で起点になる選手のクオリティの違いが、ハッキリと差が出るシーンもあったり。それは順位表通りの力関係に直結しているということだろう。

バレンシアの攻守でのバランス面の良さに比べて、ラージョはやはりバランスの悪さが対照的に目立つ。それがそのままスコアに反映された形とも言える。これは仕方ないことなのだが、ラージョはその部分を改善しないと順位をより上げるには難しいか。それでも今季はそれほど悪いシーズンを過ごしているわけではないが。安定感という意味においてまだまだである。

パコ・へメス監督の一貫したスタイルに愛らしさはあるけれども、それは第3者から観た場合。サポーターはスペクタクルな超攻撃的フットボールに夢は観るだろうが、現実は壁として立ちはだかり厳しいものだ。確かに夢は託せる内容であるが評価は難しい。

ボールを保持する時間を増やすための仕掛けは整備されている。しかし、攻守の切り替えでの強度とビルドアップ面でのミスに数的優位を作って余った際の状況判断はまだまだ修正して、突き詰めていく部分はある。

今後も注視していくだけの価値はあるパコ・へメス監督の妥協しないフットボール。追いかけて行きたいと思わせるだけの魅力はある。あくまでも第3者としてだが。

 

 

f:id:futbolman:20171024213159p:plain

 

試合の立ち上がりから後方で落ち着かせたいバレンシア。前から積極的にボールを保持する時間を増やそうとするためにプレッシングを仕掛けていくラージョ。

レオのプレスバックを用いて、アキーノ、ブエノでガヤのサイドでボールを刈り取ろうと挟み撃ちを狙う。レオは中盤のみならず、GKのディエゴ・アウベスまでプレスを掛けに行き、ラインも高く維持するラージョのディフェンス陣。繋ぐためにワイドに広がるバレンシアの2枚のCBに対して、ボールが出た方にブエノが猛烈に追いかける。守備的タスクを課されている職人のハビ・フエゴは最終ラインとリンクすることが多いが、そこにホサベが飛び出してトップ下(ブエノ)の位置まで上がり、マンマーク気味に付く。ミドルパスやロングボールを蹴らせて、ラージョはボールを回収しようとする。

 

バレンシアもラージョ陣地から奪いに出るスタイル。激しいプレッシングによる攻防。ボールサイドに偏って人数を動員。ネグレドのプレスバックで中盤に厚みを。ラージョのショートパスを主体とした難しい場面で足元への繋ぎによるエラーやイーブンボールをバレンシアが回収して最終ラインにボールを預けると、ホサベがスルスルと上がりピボーテ番に。ブエナも同様にもう一枚のピボーテを見張る。

 

そこでバレンシアが修正。ハビ・フエゴが最終ラインに加わり、3CBの形に。ピボーテ番のホサベをより前に釣り出して、中盤に降りてくるデ・パウルをフリーにさせる。度々、デ・パウルへのマークが甘くなり、パスを引き出させてしまうラージョ。デ・パウルを捕まえきれないラージョのディフェンス陣。デ・パウルは前にチェックに出たピボーテ番と後ろのサポート役になっている選手の間にあるスペースに出入りをしている。対応が遅れる。

ホサベもピボーテ番としての役割が曖昧となり、最終ラインに入ったハビ・フエゴのところまで行くべきなのか迷う。

相方のバエナはやや後方でビルドアップ要員兼中央を埋める役割(甘いが)。プレッシング要員の枚数が揃えば、バエナがポジションを捨ててボールホルダーに行く場面もあり、兎に角バレンシアがボールを持つ時間を削りたいという狙いは見える。しかし、ホサベの仕事が中途半端に。

 

やや空いたスペースにデ・パウルのみならず、ピアッティが中央に絞ることでホサベのゾーンを使う。降りてきて縦パスを受けるクッション役になることで、釣られたラージョのプレッシング要員をそこに集めて、ガヤをフリーに。そこからボールを進める。最前線のネグレドも連動してそのサイドに寄って、次のポストプレーヤーに。中央に集めてサイドから前進。後方、中盤、前線が連動した瞬間で、自分たちのペースに巻き込みたいラージョを後手に回させる。

 

ラージョのハイプレスに対して、3CBとディエゴ・アウベスを使って回避。前に蹴り込むことで、ハイラインを敷いてやや後ろが薄くなっているラージョのディフェンダー陣と空中戦。上手く裏にフリックすれば決定的場面となる。ラージョは前で取りたい意識が先行して、奪えなかった時のトランジションが遅れる。アンドレ・ゴメスの中央でのキープ力とワイドに位置しているビルドアップ要員からのSBを絡めたサイドの攻撃に対応が怪しいラージョ。前線のプレッシング要員の空回り感に加えて、セットした守備時のサイドのマークの受け渡しが。

 

12分のバレンシアの先制点も、最終ラインに落ちているハビ・フエゴに対して誰も行けず、フリーにしたままサイドに振られた形。フェグリの空けたスペースを使って上がったバラガンのマークの受け渡しの場面でも、カクタは後方に指示するも前後で意思疎通が出来ておらず。ただラインを下げるのみでノープレッシャーでクロスを上げさせる始末。フェグリが中央に絞っていたこともマークの受け渡しをより混乱させた一因。カクタとインスアとモルシージョがパニックを起こした場面と言える。

 

全体的に攻守の切り替えがルーズなラージョは、プレッシング要員が剥がされた後は基本的に無防備。前で刈り取りたい。前に人数を極力掛けたいが為に帰陣が遅れる。ボールに触りたいカクタはアキーノのサイドに顔を出す。SBのインスアがカクタの所に入って、モルシージョがインスアの空けたスペースをややカバーする。サイドで数的優位を作って崩したいが、バレンシアがスライドしてきっちりと対応。

 

クリスチャン・アルバレスへのバックパス含めてハイプレスをするバレンシアとセットして4-4-2のブロックを作るパターンを見せる。そこはスタミナ面へのペース配分とプレッシング要員の位置取り次第で変化。

前から奪いに来たバレンシアに対してパスワークで剥がせないラージョで詰んでいる感があったが、そこでカクタが奮闘。個人技で打開して、パス一辺倒ではないところを示す。カクタにボールを集めて、ブエノをシャドーに。

 

セットしたバレンシアの4-4-2。そこでネグレドのゾーンを使ってボールを進めるラージョ。押し込んでボールをポゼッションするスタイルがようやくハマり出すものの、ビルドアップの段階で不用意なミスを繰り返す。ビルドアップ要員がワイドにポジショニングしているためのミスなのでカバーが遅れる。

バレンシアのプレッシング要員は誰かが前に出たら必ず連動する。そして動いたことで、空いたバレンシアのゾーンに対してビルドアップ要員のサポートのためにブエノが降りる。そこでブエノが受けようとするものの絞ったピアッティが対応。そこから3点目のショートカウンターが決まった。前半のうちに勝負を決めるバレンシア

 

ハビ・フエゴやムスタフィを起点にピアッティサイドのみならず、前に出ているカクタとインスアの間でフェグリやバラガンが受けて攻撃。ビルドアップ要員になることの多いバエナが寄せるか、インスアがより上がるか、といった部分が甘い。後ろへの負担が増す守備方法。

 

後半になるとラージョの目指しているスタイルでもあるポゼッションをして押し込む時間が増える。しかし、既に3点差。バレンシアはカウンターの構えで冷静にゾーンを守る。時折ラージョのビルドアップ要員に対して、フェグリが持ち場を離れてプレスして牽制。すると、ハビ・フエゴがフェグリの空けたスペースをカバーする動き。オタメンディが自陣深くにてボールを回収した場合、前に持ち上がろうとするところでも代わりにハビ・フエゴが落ちる。両チームのピボーテカバーリングの質がハッキリする。

 

フェグリの上下動のペースがなかなか落ちず、サイドで1VS1を作らせない。サイドで活路を見出せないラージョは、CBを1枚削ってマヌーショを投入。3-5-2のシステムに変更して、パコ・へメス監督らしい采配発動。

バレンシアもプレッシング要員を3枚揃えたら前からプレス。それに対してラージョはバエナとクリスチャン・アルバレスを使って回避。

ボールサイドに顔を出す動きが多かったカクタをワイドに。マヌーショへクロスを合わせる形を狙う。ボールを持って攻撃回数を増やして、守備機会を減らすラージョ。

そして、アクシデントが起こる。中盤でのキープ力とボールを運んでラージョのディフェンダー陣を振り回し、前線のプレッシング要員と前後のリンク役になっていたアンドレ・ゴメスが26分に退場。

これにて完全にラージョはFWとMFの間のエリアでボールを支配。数的優位になったことでより堅実にボールを持てるようになったラージョだが、ミドルシュートと大外からのクロスにマヌーショの高さの一点張り。バレンシアに冷や汗を掻かす場面を効果的に作れない。

1枚欠いたバレンシアは後ろでどっしりと構えて、ネグレドを前に残してカウンターへシフトをして対応。冷静に時間を進めて終了。

 

前半で勝負は決まっていた内容。バレンシアアンドレ・ゴメスが退場するというハプニングもあったが、柔軟にやるべきことを貫いた。プレッシングによる激しい攻防のある試合となったものの、現場の修正力と個々の対応力がハッキリと出た試合に。ビルドアップ要員が1枚余った形から受け手を増やすための切り替えるスピードがあれば、より速い時間帯でラージョは自分たちのスタイルを押し通すことが出来たのかもしれない。それでも無失点で切り抜けたとは思えないが、もう少し傷は浅く済んだ可能性もある。