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伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』読書感想

 

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

 今更、語ることもないだろう傑作。

粗を探せば、そりゃあぽつぽつと出るわ、出るわのような仕組みの内容であるが、そんなことよりもリーダビリティの高さを評価する方が健全な読み方と言っていいだろう。ここまでのめり込めさせるのは、月並みな表現を借りるならば伊坂幸太郎の才能なのだろう。

近年において、『読書』という行為を、ここまで自然に誘発させる作品を私は他には知らない。それが、この作品に対する私の評価である。

大長編が故に敷居が高く思えるが、だからこそ『読書』から離れた方々に是非とも贈りたい一冊である。長編映画を観たかのような疾走感や重厚感を味わえる。

ここまで万人に自信を持って勧められる作品も中々無いだろう。伊坂幸太郎の集大成という表現に惜しみ ない拍手を送りたい。
ただ、エンタメ特有の大団円、物語の終幕としての爽快感や一掃したかのような余韻を感じたい方には納得のいかない作品でもある。

つまり、エンタメにおけるカタルシスの重要性である。
本書はそれなりの結末は用意されてはいるが、それで満足のいかない人もいるということだ。
万人に勧められるが、万人に受けるとは別の話。
それでも、人と人との繋がりの温かさを意識した構成は、やはり心地いい。

万人に響く温かさ。『信頼』という言葉ほど力強いものは無いのではないだろうか。

伊坂幸太郎からの「人間って捨てたものではないぜ」そんな前向きなメッセージが強く胸を打つ。

分かり易い状況・舞台装置に、単純明快かつ温かい言葉が照らすその道はきっと明るい。

王道である。