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岡嶋二人『ちょっと探偵してみませんか』読書感想

 

 作者、岡嶋二人の幅が広い遊びを垣間見ることができるショートショート集。

本格ミステリにはしばしば解決篇に入る直前に『読者への挑戦状』を挿むことがあるが、それはどれも挑戦的な文体で書かれていることが多い。

文字通り挑戦状なのである。突き付けられた読者は、2つに分かれることだろう。挑戦状なんか気にせずに次のページにサクッと進む人。或いは挑戦状を睨みつつ情報を整理する時間を作り、自分なりの推理を持って解決篇に臨む人。どちらも素晴らしい読み方であり、正しい。好きな時に好きにページを進めるのが読書の姿勢であるからだ。

しかし、この本に関しては、前者の人にも次項を捲る手を少し止めて貰いたい。

岡嶋二人が用意した25篇の謎に挿入されている「ちょっと考えてみて下さい」という全く挑戦的ではない挑戦状を受け取り、探偵気分に酔い痴れる事こそが恐らくこの本の楽しみ方である。それは題の通りに。

安楽椅子探偵、暗号、フーダニット(犯人当て)、密室、倒叙ハウダニットといったように様々な角度の謎が提示される。謎(物語)自体はとても短いので、少し考えれば答えに辿りつけるものとなっている。

しかし曲者揃いであり、一筋縄にいかないのが面白いところ。ユーモアあり洒脱なセンスもありと、読み物としても手軽であるが、それでも簡単にページを捲らせないミステリアスがあるというべきか。

単純なクイズ集に落ち着かせずに、トリックとしても読み物としても地に足を着けているのは岡嶋二人ならではの技巧だろう。それでも各篇に連続性は無いので、一冊の〝小説単体〟として読むと物足りないのは否めないか。

ショートショート集として面白いのは変わらないが、クイズ集の限界は感じる。エンタメとしての幅はあるが、奥行きが足りないのは事実。提示される謎で目線の角度を変える努力があるのは確か。そこで満足できるかどうかは読者次第なのだろう。

手軽に探偵に変身する。簡単に非日常な自分を演出するには持って来いな作品。そこで頭打ちしている様は拭えないが、岡嶋二人の技量の幅を堪能するには十分だった。