米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』読書感想
前作から時間がかなり経過しており、高校2年の夏休みになっている。
長編小説という体裁を採っているが、最初の2篇だけは雑誌に掲載されており、比較的独立しているのが特徴的。
「シャルロットだけはぼくのもの」は倒叙ミステリ。犯行が如何に暴かれるのか、という知恵比べを楽しめる一篇。犯人の行動の隙を突いたのは実に技巧的な視点。整理された情報量の豊富さが、ある種のミスディレクションになっているところが憎い。
「シェイク・ハーフ」は暗号モノ。暗号そのものに秘められた想いというよりかは、何故そういう体裁になったのかに近い気がする不思議な1篇。不思議といっても、頓珍漢な雰囲気が漂う訳でもなく、きちんとした筋道がある。どういった経緯で、その暗号を読み取ったのか。ライトに描かれても、芯はぶれず。
本編でもある『夏期限定トロピカルパフェ事件』は実に技巧的。小佐内さんというキャラから、ある程度は事件の真相は見えてきますが、圧巻の論理と帰結はインパクト大。ここまで人を動かすとは、米澤穂信の手腕が恐ろしい。愛くるしいキャラ達からの反撃は、まさに読者への挑戦に思える。