おおたまラジオ

ぼくはいったいなにから逃げているのか?

読書感想ツイート その1

 

人それを情死と呼ぶ 鬼貫警部事件簿―鮎川哲也コレクション (光文社文庫)
 

鬼貫成分は薄め、時刻表0の代わりに活躍するのは事件の初歩で些細な疑問を抱いた〝素人探偵〟で、鬼貫の再捜査パートを期待しているシリーズファンには物足りなく映るかもしれませんが、ホワイを絡めたプロットの転がし方は美点。捜査を進めるほど強固になっていくアリバイは読み応えありですが、そのトリック自体は際どいくらい綱渡りもの。しかし、それらの不満点を趣深いラストが包みます。まさに強烈な美しさです。

 

 

ボディ・メッセージ (被砥功児の事件簿) (創元推理文庫)

ボディ・メッセージ (被砥功児の事件簿) (創元推理文庫)

 

首無し死体ゴロゴロから死体消失の見せ方まで大技感漂う不可解性。伏線を張り巡らしたトリックを支えているワン・アイデアのみで長編を書き切った内容で、そのアイデアを駆使した犯人のとある行動は巧みです。しかし、犯人のある思惑の必然性は説得力に欠けていますし、意外な犯人を狙いすぎて特定までの過程がスベッてしまっています。作者の中でワン・アイデアが強すぎたのか、引っ張られ過ぎてその他のバランスが悪いのが難点。冒頭の雰囲気とか好みなんですけどね。選評で島荘が褒めているので、島荘フォロワーは必読の作品なのかどうかってところ…

 

 

中空

中空

 

 多重解決のなかでも好きな部類です。単なる否定の繰り返しではなく、補足的なアプローチから入りながら、繰り出される逆説と首切り解釈はハイライト。(相対的に)真相が弱い部分はありますが、薀蓄・解釈論や技術での遊びは随所に見られますのでカバーは出来ているようにも。村社会+横溝正史ミステリ大賞の組み合わせでおどろおどろしくならない明るさはパンチあります。

 

 

 謎のバラエティさはこれまでのシリーズに比べると多彩です。メインとなる謎は〝巨大な木々が移動する〟ですが、この真相に至るロジックは某有名作を思い出させる安心感。ダミー推理こそが真骨頂のシリーズだと思っていたので、良い意味で裏切られました。そして、最後に明かされる犯人の動機が凄まじい。作中の人物たちも置き去りくらうレベル。これをどう取るべきか。個人的には、作者読みするならば鳥飼否宇が書いたからこそ意味のある動機かと。

 

 

黒白の旅路 (講談社文庫 な 2-3)

黒白の旅路 (講談社文庫 な 2-3)

 

 

冒頭の流れから心中まで読ませる筆力が凄いです。犯人探しに移る流れを考慮するとW主人公を始め、全体的に人物配置の技巧を感じさせます。とあるトリックも巧みな人物関係に大胆に一石を投じるもので、それなりのサプライズを生んでいますが、全体的に際どい状況なのは否めません。それでも、最終的な美しい物語としての着地は見事としか言いようがありません。

 

 

崖の館 (創元推理文庫)

崖の館 (創元推理文庫)

 

 苦手な作品でした。少女漫画チックな美文調で、文学・芸術といったペダンチックが人物造形に繋がっていますが、それらがさほど謎に絡まないというのがキツかったです。クローズドサークルならではの緊迫感も欠けていますし、ミステリの構造としては推理合戦がメインにあたるのですが、人物の横の関係性上、盛り上がりに欠けています。しかし、とある人物の逆説的指摘からの一連の流れは好み。ゴシックな雰囲気を愛せる人はハマるのかと。

 

 

贋作ゲーム―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

贋作ゲーム―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

 

 クライムもので、作者曰く「泥棒小説」です。映画のような鮮やかさにニヤニヤが止まりませんし、各人物の境遇が良いバランスで絡んでくる短編揃いで面白いです。どの短編も最後のオチの捻り方が憎いほど絵になっています。個人的ベストは「エアーポート・81」 勿論多少のツッコミ所はありますが、巻き込まれ方や手際、落とし方といったエンタメ度は頭抜けていると思います。

 

 悪党小説です。笑えます。主人公が権力万歳エロ爺で、殺害予告されるという導入だけで絶対面白いじゃないですか!それで、殺された方が良いレベルのエロ爺ではなく、周りの人物たちがタイトル通りどんどん死んでいく流れで、ユーモアな作風がたまりません。オチは一応捻られている部類に入るのですが、難しいところは登場人物がどんどん死んでいくので、容疑者が絞り易いという点。それでも、物語としての落とし方はまさに悪党に相応しいでしょう。ユーモアな語り口が犯罪的なので、天藤真は悪党です笑