おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ビエルサ、大変 リール対ボルドー

代表ウィーク明けのビエルサのリール。夏の移籍市場では戦力整備という名の追放劇もあり、結果の出ないピッチ上のバタバタ感のみならずピッチ外のカオスも表面化してきました。それでも、その辺のゴタゴタよりもビエルサの戦術面の仕込みがどれくらい浸透しているかどうかに注目していたので、今のところは定点観測しているリールの戦術がどう変化していたのかを意識して観戦しました。マッチレポは以下。

 

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リール 4231

ボルドー 433

 

【リールの守備】

ボルドーのビルドアップはGKを組み込んだ形で、ワイドの2CBにはリールのプレスは走って死んで。それでも枚数が足りないので、1stDFで奪い切るよりも後方のDFライン(マンツーマン的)で捕まえようと。

プレシッングの形は変わらず。迎撃SBはボルドーのWGがハーフレーンでエントレリネアス準備したら、縦パスが入ろうとするタイミングで掻っ攫う気満々。降りる動きにもWGとそのままデート。そのSB裏はCBでスライド。CB間が空かないようにもう一枚のCBも連動。逆SBは絞らないで相手WGをマークする形。ただ、ボルドーのアタッカー(逆WG)の位置がボールサイドではないSBCB間ならば、ボールサイドの処理に追われるCBとのCB間の距離がポッカリ空くので、ビルドアップ時のSBの守備タスクは整理されているけど、押し込まれた場合のWGポジショニング問題(SBCB間)は中途半端。

また、ボルドーが中盤省略のロングボールを行うこともあるので、それに対しては前プレで縦スラしているSB裏を右CHがカバーすることも。SBをそのまま高い位置に送り込みたいので、もともと一枚のCHはリスク管理的ポジショニングで残り気味~ボルドーの1トップ脇

 

 

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撤退時は442

ボルドーのバックパスには犬のように走ることが義務付けられているから、死ぬまで走るしか無いのだけど、前線の猟犬プレスに後ろが縦スラしていない場合、前線が捕まえきれずにワイドから前進された時、ドリブルでするすると運ばれるのでマークが気持ち良くズレていく。それでボール奪取後のポジトラ問題。ネガトラのマンツーマン的プレスは鍛えられているけど、ポジトラはかなり怪しいまま。自陣でボールを回収した後、SHにスペースある状態で仕掛けられるような状況をどのように作り出すか。

 

【リールの攻撃】

 

 

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攻撃のデザインは、サイドの縦の速攻をイメージ

SHの縦の仕掛けとSBのオーバーラップ。早い仕掛けならクロスに対するエリア枚数は2枚(CFとSH)でも大丈夫攻撃。でも、それは定位置攻撃の場合に限るようで、ポジトラ時はSHのドリブルで如何に頓智期待できるかの割合濃いめ。追い越しが弱いので、枚数的にも足りていなかったり。

ビルドアップは2CBで出来るだけ運びたい。3CB化はしたくない派閥。CHのポジショニングを下げたくないから。ボルドーが433前プレするわけでもないから。そのため、ボックス型ビルドアップとして2CHは関わるし、ボールサイドのSB(非対称型)もある。でも、基本は2 CBをどれだけ自陣高いエリア(ハーフライン付近)まで運べるかどうか。SBが低い位置で組み立てに参加すれば、SB-SH間が空く。SHは外張りでは無くてHS~裏抜け準備をしているから。そこでSBの縦関係が存在しないので、CHがパラレラで前進して、サイドに偏らせてから逆サイドへ展開してSHのアイソレーション。判断の連続性がスムーズで面白い展開だったので、多分練習している形。CHのダイナミズム、展開力、SHの単騎突撃力を活かすという意味で楽しいアイデア。メインは、裏取りロングボールかCH脇~WG-IH間での受け手になるSHから前進。ボルドーのCHを如何に動かすかが鍵。それにはトップ下かCHのポジショニングが必要。相手が食い付けば、MFラインとDFラインの距離が長くなるので後ろが連動しなければ、そのままスペースが広がった場所(MFライン―DFライン間)のハーフレーンか外を使える。DFラインが連動した場合は、裏へ抜けるために一本送り込むみたいな。

 

【リールの問題点】

前半32分にイエロー2枚目で退場者。試合の興味は底を尽きかけるような。カードは妥当なんだけどね。

リールとしては、クロス攻撃に耐える展開。相手SBの攻撃参加にSHは守備時には付き切るし、CHはペナ角を埋めないといけないのでSH-CHゾーンがエアポケット化するから、ボルドーとしてはクロスを上げるのは楽。

 

カウンターもポゼッションも中途半端な印象に落ち着きつつあるビエルサのリール。3節まではポジショナルプレー全振りのポゼッション型。そこで崩しきるには細かさや最終局面での質が無いと判断してから、ある程度のスペースがある段階での速攻ということでの4節(特に前半)。ボルドー戦は4節からの流れをそのまま継いだ。4節の(前半)時よりも縦へのボコボコ感は整備されているけども、物足りない感じは否めない。定位置攻撃か速攻かという話では無くて、どちらも必要な形ではあるのだけど、その二つがどちらも中途半端。ボール保持か速攻かの二択が限定的になりすぎている。ボールを持ちながら、スピードアップの機会を窺う形がリールの理想なのだろうけど、これまでの4試合を見るとどちらか一方でのコンセプトしか組み込めないようで、形としては極端なんだけど、質的には低い状態が続いていることから宙ぶらりんだったりする。目指すところはハイブリッドなのにどちらも齧ったら中途半端に。ビエルサのトレーニングで詰め込まれて、選手たちのアウトプットが限定的なのかなと推察。「どちらも」よりも「どちらか」という話で、ビエルサが初期(1節~3節)に仕込んでいた3331が志半ばで散った今、選手たちの混乱同様にビエルサも大変といった事態。前プレはロジャー・シュミット教のように雪崩れ込むような前プレからショートカウンターというよりも、無理に蹴らせてボールを回収したい・落ち着かせたい狙いが強いので、ポジトラが組織回復的要素になるのは仕方ない面もある。そういう意味では、マティアス・アルメイダグアダラハラと同じ構造を持ちつつ、同じ悩みも抱えている。

 

【一枚少ないリールの後半を観るのはシンドイ】

後半は撤退を選択。自陣撤退時は4-5-0になるが、相手SBの位置にDFが引っ張られて6-3-0になることも

しかし、ボルドーのビルドアップ(2CB+CH+SB)には、役割が決まっている前線+CHが牽制することは変わらずあるけど、深追いしないでスペースに戻るのが基本。かといって、完全にバスを止めるような撤退では無くて、ハーフで構えてラインを上げることで1-2列目をコンパクトにするように。ボルドーとしては、ミドルゾーン中央からの前進は簡単に出来るので、後はどう崩すかという話になるのだけど、後ろの枚数が重たいリールのDFラインとサイドの枚数を考えると、素直に外から展開するのは旨味のある話ではなくて、ボルドーのIHを見る役割のリールの1列目のDF(CH)がドリブルには下がりつつ、同ライン上の二枚目がカバー位置を取るので、カットインを仕掛ければ斜めのコースが出来る。ボルドーからすればサイドを動かして、低くなるMFラインの中央をどのように使うか。ズラしたならばリールのDFラインもバタつくので、外が使えるということに。

 

リールの攻撃面は、枚数が一枚減ったこともあり、より懸念していたSHかCFでどれだけ時間を作れるかどうかに陥る。相手DFも抑えるところは把握しているので、2枚の関係性で挟み込むように対応してくる。数的優位の暴力。そこへの縦のサポートは基本的にはSBの仕事なので、前線で時間を作れないとそもそもSBも参加できないというジレンマ。そういう意味ではサイドチェンジが一つのポイントになったりする。また、ボルドーの前プレがそこまで強烈では無いことから(その代りサイドの対応はハッキリしている)、案外CHが持ち上がることが出来るシーンがある。運ぶ能力があるのは前提として、トランジション時の中央の緩さも関係している。SHやCFが持った時はトランジション時そのままなので、単独でどうにかしないといけないのは変わらないのだけど、CHが持ち運ぶシーンはリールの前線が相手DFラインを下げていることから、DFライン―MFライン間が空いている状況が生まれているから。それにはボールを奪った後~組織回復(前線のポジショニング上げ)のフェーズ間でCHが運べる環境があるため。

試合は0-0で終了。

なんとか耐えたリール。クーラーボックスに座るビエルサがリールでは観られないのですが、テクニカルエリアで便所座りするビエルサが後半唯一の癒しとなったボルドー戦。それくらい見所は無かったです(笑)

リールとしては勝ち点1を得ただけでも御の字の内容。実際、何度か死にかけたシーンがあるので、ボルドー的には痛手。

ポジトラ~カウンターの課題は変わらず(手を付ける雰囲気は無さそう)、ボール保持時をこのまま推し進めていく感じも強くなった。そういう意味では、前半一枚退場した段階では勝ち点1で大満足なんだけど消化不良みたいな。相手を見つつ準備してきたものを披露するのが前半とするならばだけど、後半は試合に応じて変化していくとするなら、今節のリールは代表ウィーク明けからの今後のコンセプトを提示するというところでは曖昧のまま。退場者が出たからというわけでもなくて。得点を取ることに関してはカウンターが一番効率がいいのだから、目先の結果を考えれば、そこに手を加えていないのは如何なものかと思うのだけど、ボールを持つことで安定した中長期的なスパンを見通せるからチャレンジする価値はある。ただ、それまで耐えられるかどうか。ビエルサとフロントが。