おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

AFCフットサル選手権2018 フットサル日本代表vsタジキスタン代表 セットの組み方と左足

日本がタジキスタンを4-2で破った。内容は良くなかったし、PP返しの4点目までは気が抜けない試合展開だったと思う。

 

1stセット 吉川、清水、星、西谷

2ndセット 逸見、森岡、室田、滝田

3rdセット 皆本、斎藤、渡邊、仁部屋

後半からは一部選手の入れ替えをしたが、全て3-1セット。

 

タジキスタンのプレスはハーフでの構えによるゾーンとマンツーDFの併用。1列目が下がると、日本はボールを持って侵入してくるが、日本の横パスなどにはラインを上げる。その際のDFの1列目のボールの寄せ方が良い。失点シーンなどに繋がっている。

また、日本のピヴォの位置によるが、マークの交換して1-2列間の前後が入れ替わってそのままマンマークすることもある。

一方で、日本のプレッシングは効いていた。タジキスタンのクリアランス、ポゼッションはピヴォへ飛ばすシーンが多い。しかし、ロングボールの精度が良くないので、日本がボールを持つ機会は増える。後半からボールの持ち方を変えてきたタジキスタンについては後述。

 

皆本が試合後に言っていたように「内容よりも結果」なので「勝利」を取ったことは確かに評価されるべきだろう。

しかし、3セットでの回し方はどうなのか。

ペース配分を考えると悪くないと思うが、決してハマっているとは言えないから良いとも思えない。試合の展開によってセットの偏重は生まれるし、後半のように一部の選手のタスクが明らかに増えることも考えると、バランスというのは難しいものである。そもそものプレーイングタイムの管理のためであるが。

個人的には、斎藤がどうなるのか気になる。左足の価値を出すために、フィクソの位置から中抜けやパラレラよりも、サイドに散らして右サイドにポジションチェンジ(カーテンも含めて)で、右サイドからダイアゴナルパスによるピヴォ当て。まさに2点目のような仕組みをもっと増やした方が良いと思うが、その割にはレフティを活かした仕掛けが無かった。そもそも斎藤はその後にプレーしていなかったから。また、ミドルシュートのシーンで左足の価値を考えさせることも多かった(後述)。

後半からはセットの一部を入れ替えた日本。重要なピースとして皆本と仁部屋が挙がり、渡邊と斎藤が外れた形。ポジションチェンジよりも固定的な3-1を選択したので、星、吉川仁部屋、皆本といったセットも。

ハッキリしたアラとピヴォの組み合わせを模索中ということで、セットプレーだけではなくて皆本のタスクが増えた感がある。森岡などの2ndセット(ペスカドーラ町田メイン)以外での組み合わせには難儀していると思った。

ポテンシャル的には1stセットであるが、2ndセットの方がコンビネーションが良い。それでも森岡のコンディションに左右されやすいセット構造なので万全ともいえないのが本音。1v1でも困っているシーンも目立つし。

 1stセットのダブルピヴォ(星、清水)を基準として活かしながら、吉川、西谷といった潤滑油+αでストロングサイドの構築を図り、ウィークサイドのバックドアセカンドポストへの侵入はコースが切られていることも多かった(セカンドポストには星が多かった)。

ピヴォ当てからのアクションは、2ndセットに比べるとペア間(森岡―逸見など)は少ない。ペアよりもトリオ的なので、3枚目の動きが求められる。その部分の停滞感は否めなかった。リスク管理、3人目のポジショニングとしての西谷と吉川のバランス。時間とスコアから無理をする場面でも無かったけども。ウィークサイドへのバランスを考えると、リスク管理のための中央~ストロングサイドに入り過ぎるとサイドが詰まった時が難しい場面もあるから一概に言えないが。

 

前半

日本のキックオフ直後、吉川のブロック+横幅を走る星と西谷+清水のミドルシュート。デザインされた攻撃。両幅を走ることでタジキスタンのDF2列目を下げる効果。1列目との分断、カバーリングを消す。星はそのままセカンドポストへ侵入も。

 日本の先制点はキックイン。所謂、清水のチョン・ドン。チョン・ドンで清水は他のシーンでも。敵陣でのセットプレーはファーへの清水をどのように作るかがテーマの日本。

また、FKにはシュート力のある清水を使うために一部交換して、ボールに近い1枚が走り抜けて、清水が蹴るパターンが多かった。1枚目の役割は森岡だったり。

 

  • 19:40 キックインからのボール保持。相手DFの1列目の高さはさほど。ピヴォ当て、ストロングサイドの構築。相手フィクソは清水に釣られるので、ピヴォ当て後のタジキスタンの1列目のDFは中央を埋めることが最優先。挟み込む場面もあったが。ある程度の日本のキープは仕方ないという割り切り。中央を埋めるDFの動き、ラインの高さからサイドを変える日本。中を埋めているDFなのでサイドは空く。タジキスタンの逆アラの絞りに対して、星のバックドアのアクション。星のセカンドポスト侵入タスクは多かった。これが3点目に繋がるのだけど。この試合、ウィークサイドのバックドアを使うのは少なかった日本。基本的にはストロングサイドを作ってから。

 

直後の日本陣地でのキックイン 日本の3-1でのポゼッションに対して、タジキスタンのDFはハーフでの構え。前プレは無し。しかし、イゴールへのバックパスにはラインを上げて対応。日本のバックパスと真横のパスについては、1列目のDFの寄せ方が強くなるのが特徴。これは試合共通のタジキスタンのDFだった。前半12:18や日本の失点シーンがそれ。日本のキックイン、室田のニアでのブロック、ウィークサイドに抜ける滝田→対応するDFのマークの交換をするタジキスタン、ラインの上げ方によるボールカット。速攻を食らって失点。日本は2ndセットだった。

 

  • 18:24 日本のキックインからのボール保持。カーテン+西谷の中ドリ+ターン、清水のライン間への移動+ウィークサイドのバックドアのアクション。エントレリネアスをした清水のサポートに顔を出すためにサイドでのポジショニングの星からストロングサイドの構築。星に引っ張られたDFの裏へ、ライン間の清水のパラレラ。相手フィクソのマンマーク対応。相手フィクソのDFについては前述のように。

 

  • 18:03~ 3-1での保持。中央レーンの選手が持つメリットからみる相手DF1列目のリアクション。カーテンから西谷へ+中抜け、日本のピヴォ位置(清水、星にはマンマークのDF)のDFについて、ポジションチェンジをしても変わらないタジキスタンの2列目の反応。中央の吉川から西谷へ、ウィークサイドの清水のエントレリネアス、吉川はサイドを埋めて、ピヴォの位置には星(このセットのダブルピヴォの特徴が表れているシーン)。17:49の星へのマークとDFのバランス。吉川の1v1シーン。DF裏をカバーするDFは星に付いているので、突破をすればチャンスの局面であったが、吉川の対面のDFの切り方とボールへのアタックが綺麗。

  

  • 16:57 セット交換。森岡のマークの外し方とピヴォ当て。森岡のマークの外し方は、この試合のピヴォ枠の中では際立っていたと思う。1列目での外し方だけではなく、2列目に降りてからの動き直しから抜け出し方も含めて。しかし、1v1の局面では苦戦。ボールを持った状態でのDFの振り切り方はキツかった。
  • しかし15:36 予め中央でポジションを取れていると安心。前半はこのセットは偽ピヴォの要素もあったので、15:15のように森岡に付き切らずに中央を埋めていることもあるDF→清水と星とは違う対応。しかし、後半の日本は偽ピヴォ的ではなくなった。

 

失点後は3rdセット これも3-1でのピヴォ当てが手段になる。タジキスタンのDFはハーフでの構えで菱形的だから、日本のサイドには時間がある。

  • 例えば13:28 渡邊のマークの外し方、相手のDFの12番を動かす斎藤。門へのパスが起点だが、相手の門は並行に。門が段差的ではないから、角度的に足が出てくる可能性が少ないので、門への運び方は大事。

 

  • 13:32 斎藤の左足からレフティの価値を考えさせるシーン。ピヴォ当てから3人目の動きとしての仁部屋がゴール。日本2―1タジキスタン。右サイドの斎藤までのボールの回し方で仁部屋とのポジションチェンジもありつつ、右サイドに斎藤を出すメリット。

日本のピヴォ(清水、星、森岡、渡邊)が相手DFの前を取ることができればこの試合では結構安泰で、そこからボールがカットされるリスクはあまり。だから、ピヴォ当てからの2枚目、3枚目の動きの質がそのままシュートに繋がっていく。

レフティの価値については、例えば相手DFのウィークサイドを突くシーン。ピヴォ当てからストロングサイドを構築した後、ウィークサイドに左利き(右サイド配置)がいればカットインなどで中に持ち込んだままシュートが打てるシーンでも、そのウィークサイドには右利きが配置されているから縦に持ち込む必要性があるので、縦に運ぶことで角度が削られるデメリットも。

 

  • 10:08 日本的にはエントレリネアスなのかサイなのか。相手DFライン、1-2列間的にはどちらなのか悩むシーン。

 

残り時間10分頃、1stセットへ。セットが一周。

日本の3点目は速攻。エントレリネアス→レイオフの価値が表れたシーンだと思う。相手DFの収縮(1列目)、サイドの1v1までの吉川の受け方と突破→2v1 星のバックドア~ファー詰め。綺麗なゴール。

 

  • 8:41 清水の反転シュートのシーン。相手のDF状況を考えれば、ウィークサイドでフリーの西谷へパスを出した方が良かったと思う。それはゴレイロの準備と清水周辺のDFの枚数とコース的に。しかし、その前のシーンからライン間でパスを要求していた清水にパスが入って来ないのが続いていた。タイミングと味方のボール保持者が速い段階でサイドを限定するような持ち方をしているのでDFに消されてしまうことが理由。そして、このシーンでは欲しいタイミングで貰った清水。先制点やセットプレーでのシュートの感覚からシュートを選択。ここで打つからこそピヴォだと思ってしまう。

 

  • 6:20 セット交換。2ndセットへ。

右サイドで右に持ち替えるためにシュートの角度と精度が大変。この試合、ミドルシュートは入る気がしなかった日本。そして、左利き不足を感じさせるシーンは多かった。しかし、斎藤はこの試合で最初の3rdセットでの出場以降、プレーしていなかった。貴重な左利きはオプションとしてよりも、熟練を試合で試しながら高めていくブルーノ・ガルシアの選択。

例えば。

  • 前半5:13 森岡へのピヴォ当て 日本の2~3枚の抜ける動きによってタジキスタンの1列目は下がる。DFラインの1列目を下げてから室田のシュート設計。
  • 後半16:40~ セット交換。16:38 3-1 ポジションチェンジからの逸見のカット・イン→そのままセカンドポストへ。森岡のマークの外し方(サイドに流れて)、ピヴォ当て、2枚目が抜けることで中央のスペースへ絞るDFがスペースを捨てるので、室田が空く。森岡のレイオフから、室田のシュート。ミドルシュートの精度? 相手1列目の消し方、逸見へのマークするDF、滝田のブロックも。
  •  後半15:45 室田から、森岡のバックドアからDFの前を取る一連の動きと受け方、ウィークサイドの逸見の横幅、相手10番脇のスペースを使ったリスク管理として残っていた滝田のミドルシュートも精度?

 

  • 前半5:55 森岡―逸見のペア。ピヴォ当て。出し手の抜ける動き。アルゼンチン戦ではオーバーラップが多かったが、アンダーラップの判断も目立ったタジキスタン戦。森岡の反転。ウィークサイドの室田のポジショニング修正をみると、セカンドポストへの侵入よりも、森岡のカットインしたケースに備えたポジショニング。

 

 

後半

1stセットから入った日本。

  • 19:39 西谷のパラレラへのタジキスタンのDF、清水へのマンマーク対応が多かったDFがウィークサイドの清水を捨ててボールの流れに合わせて中央をケアしてからサイドへ。ピヴォが基準ではなくストロングサイドの処理優先。その後のトランジションでの清水の戻り方が良い。スペースに戻りながらコースも切っている。

 

後半開始直後からタジキスタンのクリアランスでロングスローだけではなく、手前から繋ぐことを志向する。前半は投げるシーンが多めだったが、後半は2-2でボールを持つ時間を増やそう作戦。

その後のクリアランスでも2-2、勿論ロングスローもある。前半ではロングスローをするにしても3-1であったから形を変えてきたタジキスタン

  • 18:34 ゴレイロからのロングパス。2-2 前半からゴレイロのキック精度が上がってきていると解説も言っていたので活用しましょうということで。

タジキスタンの2-2は、外→外で縦に当てるのを目的にしているケースが多い。サイドでの1v1を作り易い2-2から中ドリをしてウィークサイドの選手がライン間への移動は無い仕組み。日本の1列目のDFの寄せ方がいいので、殆ど縦に通させていなかった。

例えば

 

  • 14:22~ 仁部屋に求められている所、価値を示す所。1v1までの作り方、ピヴォ当て、ストロングサイド。(アルゼンチン戦のように)森岡が孤立しないように逸見がDF1枚を消す動き、連動してサポートに顔を出す皆本のポジショニング。ウィークサイドの仁部屋の準備。

 

  • 10:15~ 一部のセット交換 逸見、皆本、吉川、清水。

 

  • 7:20 一部のセット交換 逸見、森岡、吉川、室田。逸見からの森岡へのピヴォ当て。逸見の2枚目としての抜ける動き、相手1列目のDFを引っ張る。森岡に2列目のDF一枚が対応しているので、タジキスタンの1列目のDFが中央に入る必要がある。スペースは埋まるが、ラインは下がる。7:05 森岡のバックパス動作に対して、ウィークサイドの相手DFがインターセプトの準備をしている。このシーンで室田に横パスをしていると前半の失点シーンと同じような取られ方をしていた可能性が高い。パスは西谷へ。ミドルシュートを打てる選手ならば打てたかもしれないケース。

 

タジキスタンのPPについては、日本のゾーンでの消し方がハマっていた。タジキスタンのPPは、日本の中央のスペースをどう使うかがテーマ。

日本の「中央のスペースを空けさせておいて誘い出してカットを狙う」のは町田でもやっていると解説のコメント。4点目のPP返しはそれ。

 

  • 9:51~9:24 シュートまでの日本の形~イゴールのカバー。フットサルならではのシーン。この試合で一番気に入っているので何回も観ましょう。