摂取したもの2018年7月
西尾維新強化月間。
『物語シリーズ』は『偽物語』まで読んでアニメも観ていた時に、「西尾維新が書きたい青春ってこの辺で頭打ちになるんじゃね」と思った。というか『偽物語』が良かったからなんだけど。そんでセカンドシーズンはアニメだけを惰性で鑑賞して中途退学していたわけだ。だからファイナルシーズンは未読未見だったのだが、まあ、読んでみたら有り体にいえば西尾維新は凄かった。平伏した。こりゃあ達者。小説が上手い。
それでもやっぱりセカンドシーズンは結果的に『猫物語』以外は乗れなかったのだけど、ファイナルシーズンは巧みでした。明らかに書きながらシリーズとして着地点を軌道修正しつつ、エポックとしての自己犠牲精神の主人公に自己肯定と自己否定と自己欺瞞と自己陶酔とその自己批評を捧げ、その一刺しをしてシリーズを清算したのだからスタオべ。なんかプロの仕事ってこんな感じ。
あとは、朝井リョウの『武道館』。
『武道館』は朝井リョウがドルオタのあまりに『アイマス』的なステージ上の自己実現と模索を描いたのものだと当初は思っていたが、よりラディカルでリアルフィクションとしてのアイドルとドルオタの距離感、中景としてのインターネットの「みんな」との距離感そのものを炙っちゃう叫びだった。もうね恐ろしい。
「ネットであるからこその悪意≠人間にインターネットは早すぎた≠性悪説」みたいなのを小説にナチュラルに組み込んで、登場人物たちを甘やかさずに追い込んでいく朝井リョウって素敵な作家だなというお話であるが、本作はアイドルの鉄血の掟である恋愛禁止論と恋愛自由論についても掘り下げようとしているし、ドルオタ以外にも勧められる。ネットの悪意の表層化なんて朝井リョウは現代のトップランナーじゃないの?『何者』を読んだ時に確信したが、これぞネットだ!
私なんかはドルオタと呼べるものではないけども、平成を彩るコンテンツに48グループを外せないし、アイドル戦国時代だからメジャーなものは最低限履修しただけだが、当時デビューしたばかりの欅坂46『サイレントマジョリティー』を聴いた時にぶっ潰された気がした。48グループと坂道グループ、あるいは欅坂46と乃木坂46との違いや欅坂の袋小路感や新たなアイドル像と恋愛ルールは色んな人と幾度なく話しているが、『武道館』を絡めつつどこかで形にできれば。
西尾維新『本題』
多島斗志之『不思議島』
ニナ・サドウスキー『落ちた花嫁』
スティーブ・ハミルトン『氷の闇を越えて』
多島斗志之『感傷コンパス』
朝井リョウ『武道館』
榎本博明『自己実現という罠』
米澤穂信『王とサーカス』
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている12巻』 比企谷八幡のジレンマ - フトボル男
古沢広祐『みんな幸せってどんな世界 共存学のすすめ』