『サッカー経験者は何故スタジアムでJリーグを見ないのか』と「観るスポーツ」としての展開
ろこ:お互いにそんなにフットサルを観ていないんだよね。
政夫:そうなんですよ。このラジオも二か月くらい間が空いちゃってロベルト・カルロスについて話すとかあったんでしょうけど、話題が腐っちゃった(笑)
ろこ:ロべカルの記事をサラッと漁ったのよ。結局この話題性をどう繋げていくかみたいな感想で終わっていたよ。
政夫:あー。
ろこ:彼らもあまり提示していなくて。
政夫:よく移籍報道である「どうなるか見てみよう」というやつですね。
ろこ:結局エンタメ化していく上で、プロスポーツがファンをどれだけ射程に入れるかどうかが大事だと思うんだよね。どういう人が観戦に来るのか。どういう人が興味を持っているのかとかね。サッカーの話になるんだけど、僕らも一応サッカー経験者じゃないですか。
政夫:はい。
ろこ:でも、引退してからサッカーをやるという感じでもないよね。
政夫:そうですね。サッカーはやっていないですね。
ろこ:俺はたまにエンジョイフットサルをやるくらいなんだけど…『サッカー経験者はなぜスタジアムでJリーグを観ないのか』という記事を読んで。面白い仮説だなって。
政夫:どう思ったんですか?
ろこ:共感したし、このブログは提示しているんだよね最後に。サッカーというスポーツを「観るスポーツ」として、ちゃんと終わっているんだけど。
政夫:母数的に考えれば全然「観るスポーツ」ですけどね。
ろこ:嫌な言い方だけど、観るのとプレーするのは全然違うじゃないですか。プレーする人は知っているわけですよ。技術的に凄いこととか、勝ち負けによって形成されていくヒエラルキーとか。
挫折というキーワードが記事では出てくるんだけど。
政夫:挫折…面白いですね。で、サッカーが嫌いになっちゃったという話になっていくんですか?
ろこ:プレーしていた人たちがサッカーから離れるじゃないですか。やり続ける人たちはプロとかに入って続けていくんですよ。挫折した側は「別にJリーグよくない?」みたいな執着する必要性がないという構図が、ちょっとあると思う。
政夫:ちょっとは、あると思いますが…僕だったら自分が到達できなかった頂きの景色はどんなもんなのかと気になると思いますが、普通。普通って駄目ですよね(笑)
ろこ:あかんあかん(笑)
政夫:『コンビニ人間』ですからね。挫折というよりも消耗の方が適当かなって気がしますが。
ろこ:消耗。寿命論的な感じかな。
政夫:僕がプレーしてきたチームメイトは、そもそもサッカーを観る人間がいなかったですね。
ろこ:一緒だ。
政夫:ウイイレ派よりもパワプロ派の方が多かった気がします。あと、野球部の方がサッカー詳しいとかありましたからね。
ろこ:あったあった。
政夫:各地で起こっている現象だと思います。野球部の方がアルシャビンの名前を知っているとかありましたからね。ユーロ2008の時に。
日常的に触れているスポーツを改めて観るというよりかは、オン/オフが欲しいみたいな感覚じゃないでしょうか。要するに擦り切れてしまうんですよ。日常的にサッカーに触れているから消耗しているんですよ。それをわざわざオフの時にサッカーで消耗しなくてもよくない?とか。
ろこ:分からないでもないね。
政夫:挫折という言葉は一つステージが高い感覚ですね。もっとボトムレベルのものだと思っていました。
ろこ:記事を書いた人は、サッカー人口多いのに毎週Jリーグ満員になろうよ!でも満員になっていないよね?って仮説から入っているんだけど、多分政夫くんが言ったように消耗だと思うのよ。別に見なくていいや…って。
政夫:そもそもプレーしているけど、そんな好きじゃないんじゃないですか。
僕は、スポーツ漫画とかアニメとかで重用しているのがありまして。
「なんでそのスポーツをやっているのか?」という内省的な話にポイントを置く観方をしているんですよね。だってわざわざサッカーをやる必要がないんですよ。動機を求められた時に、キャラがどのように自分と向き合うのかという、なぜそのスポーツをやるのか?なぜ今もやっているのか?という根源的な問いにどう答えを出すのか、が僕はスポーツ漫画とかのリアルだなって思うんですよ。どんな突飛な必殺技があっても、そこがちゃんと描かれていれば僕は好きになる。
ろこ:『ジャイキリ』ですか?
政夫:『ジャイキリ』はそれ描いていないですよ。プロだから。問題はアマチュアなんですよ。『ジャイキリ』は30巻でプロとしての自覚を正すじゃないですか。あれが全てなんですよ。『ジャイキリ』というかプロスポーツは。
ただ、アマチュアや部活はそうじゃない。なんで部活やっているの?って。消耗していくのに何故サッカーをやっているの?と。その時にどういう答えが用意できるのか…スポーツ作品を読むコツなんですけど。
ろこ:あ!筆者が同じようなこと言っていた(笑)
政夫:本当ですか(笑)
ろこ:挫折感というキーワードが、日本のスポーツ文化の発展を阻害していると。スポーツをする=プロを目指す競技者を目指す構図が、子どもから大人まで老若男女スポーツができる環境が整っていないから、価値は上がらないし、現場に行き難いとか。スポーツとの関わり方として。
政夫:僕の感覚だと、現役時代=高校時代なんですよね。
ろこ:そこの挫折だよね。致命傷になっている。
政夫:現役ってずっと続くのに。なんで高校時代を区切りにしちゃうのってところじゃないですか。
ろこ:だから致命傷でしょ(笑)
政夫:スポーツは生涯付き合っていくものなのに、現役どうこうで区切りをつけるオカシクナイという。
ろこ:部活文化だね。
政夫:部活で引退して、後が無いのはオカシクナイって。
ろこ:なんかいい話になってきたな。
政夫:今日は教育ですよ。裏テーマは(笑)
なぜ観に行かないのか?…やるのと観るのは別だというのはろこさんが言った通りで。プレーするのが好きで観るのは好きじゃないからという話になりそうですけど、じゃあなぜ観るのが好きじゃないのか?となりますが。それはあまり観てこなかったから。プレーする方が好きだったから。
ろこ:鑑賞文化ですよ。
政夫:僕がサッカー観戦にのめり込めたのは高校・大学とかだったんですけど、それって一旦区切りが付いたのもあるから。選手として。だからハマれたのかもしれない。自分が観れなかった景色というのを、想像できるのが楽しかったとか。自分でプレーしていた時は見えなかったものが、景色が、接続できた感覚。
勿論、ピッチに立って同じ景色が見えるかどうかは別なんですけど。ただ、机上の空論と言われようが、なんか繋がっているんだろうなという感覚。テレビは鳥瞰レベルですが、ピッチに立っていた時は一人称レベルだから、その時点で前提としての景色が違うんですよ。大きくいえば、鳥瞰レベルが机上の空論的な観方をしているんですよ。テレビ的な意味として。
ろこ:景色という言葉が結構通じないんだよね…。え、山の風景?みたいな。悩んでいてね。
政夫:見え方ならどうですか?
ろこ:そうなんだけど(笑)
政夫:景色なんてピッチに立てば一発で分かりますよ。
ろこ:立ったことない人にはなかなかね。フットサルを1、2年くらい観ていて実際フットサルをプレーしてね。景色を見ているんですよ。フットサルって凄い濃密な時間を過ごすじゃないですか。変な言い方だけど。展開が速いからね。
でも、それを言語化しているという感覚は全くないのよ。だから景色を説明できるまで全然辿り着いていないんだよね。
政夫:そりゃあ、そうですよ。視覚情報と言語的処理ってまた別物じゃないですか。ピッチを文字で追っているわけじゃないんですよ、ピッチに立っている人間は。僕たちが目に触れている読んでいるメディアというのは文字や図形で処理するものだけど、景色として処理していく、ピッチのスピードの中で処理していくというのは違う話なので。
それは言語化なのかどうか。
ろこ:そこにヒントがあると思う。そういう違和感を持っている人らが、Fリーグを「観るスポーツ」として発展させていくのか、プレー経験ある人が分かり易く伝えて「するスポーツ」にしていくのかは結構大事だと思っている。それはサッカー界が「観るスポーツ」ではないという切り口から、今回始まっているじゃん。解説者の切り口が代弁的で、協会はアレだったけど、今はようやく観る側が追い付いてきたから…。
政夫:うーん。見える景色というのを言語化して抽出するのは選手本人がやった方がいいし、現場の人がやった方がいいと思います。トップダウンにしてもボトムアップにしても、現場の人が情報として落とす方が価値があると思います。選手だけじゃなくてコーチとかね。要するに見えていた景色をどのように言語化していく、転化していくのは別なんで。
感覚的に、空間把握能力って身体的なものじゃないですか。サッカーだと距離感という言葉で、もうマジックワードですよね距離感。どれくらいのことを指しているのか全く分からないですけど、なんか分かるみたいな。距離感って言葉には色々含まれているけど、空間把握能力ってそんな簡単なものじゃない。それを言語的に落とし込むのかは別の作業で。自分がプレーしている時に処理している情報を言語化するというのは別じゃないですか。
だから現場の人がやっていく(書く)べきだと思いますし、Fリーグだったら皆本選手とかがやっているじゃないですか。どんどん発信していくべきだし、映像関係の問題で規制があるなら…。
ろこ:ファンを獲得しに行くなら、そこまで考えて欲しいよね。
政夫:観るための指標ですよね。勿論、唯一無二の正解じゃなくても。本人が言っているだけで他の選択肢もあるわけで。難しいのはチーム事情が暴露的になっちゃいそう。セットプレーのサインとか。タイミングや目線や足の出し方とか。僕らみたいにピッチを俯瞰で観ているからこそ、疎かになりがちな肉体的な、コーディーネーションの部分だったり、重心の掛け方も含めて、プレーをした本人が解説すれば間違いなく観方に繋がっていきますよね。
※この記事は10月に配信したものを一部文字起こししたものです。