おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ベリッソのセビージャ 開幕戦で見えたもの

この試合で一番ビックリしたのはガンソに尽きる。昨季のサンパオリ・セビージャでは完全なビックリ箱枠。浪漫の象徴。

「10回のうち9回はヘマをするが、たった一回・・・輝かしいプレーですべての人を魅了する。ガンソ。そのまま行け、何度でもしくじれ。その代わり、一回のプレーで観客を酔わせろ、敵のド肝を抜け。お前の中のジャイアント・キリングを起こせ」枠だったガンソが、組織に組み込まれている衝撃。

何があったんだ…ガンソ。パスコースやスペースにDFがどう来ていて味方がどこに居るのかの認知に対して、独特な頓智パス(ミスもあったよ)が一回くらいしか披露しきれなかったガンソはもう居ない!それに走っていた。これ、マジで凄い。何をした、ベリッソ。ガンソに何を飲ませたんだレベル。個人的にはネイマール移籍クラスのインパクトでした。

 

セビージャ対エスパニョールは433対422の対決。

エンゾンジは底変換を行うので3CB化→SBが高い位置。勿論、IHがCHの位置に入る。テーマはエスパニョールの1-2列目の突破。ハーフで構えるエスパニョール。高い位置を取っているセビージャのSBを上手くケアするSHのデリケートなポジショニングが痺れる。WGがなんといっても、ノリートとヘスス・ナバスなので早い仕掛けが目立つし、そこに蹴り込むのも全然あり。スピード万歳なので、単騎突撃するシーンも。基本はSBへのサイドチェンジで横スラ誘発で前進を狙う機会を得たい序盤。ただ、エスパニョールのブロックが綺麗。マークの受け渡しとプレッシングが効いている。エンゾンジがカバーで、CBのドライブはFWが担当。でも、それはセビージャ陣地からの話。エスパニョールの442撤退時は、見るべきFWはポジトラ考慮でポジションを下げ過ぎないようにしている。エンゾンジを見つつ。だから、押し込んだ時のCBによるドライブへの対応はフワフワしていた。セビージャのIHがパラレラでSHーSB間に入った時も、CHが人に付く意識が強かったが、SBに迎撃させるようにハンドサインを送って、DF2列目に穴を空けないようにしていたのは素敵。

GK経由時は、前プレでとにかく蹴り込ませて回収したいエスパニョール。後方で安定したポゼができるセビージャ。エスパニョールは出し所を潰しに行くというよりも、受け手を制限しようとするコンパクトさだから1-2列目間のスペースは狭い。2トップ脇を使うセビージャのIHに対してSHがチェック。横幅SBのケアもタスクとしてあるけど、そこは味方SBと連携して縦スラ。CBはHSレーンを閉じるように前に出る。でも、ボールサイドのセビージャのSBとIHが上下するタイミングが絶妙な場合は、SHのDFは背中を取られる可能性があるので自重。

 

システムの噛み合わせ上、お互いに付きやすい形なので、セビージャのIHとエスパニョールのCHがバチバチと中盤でやり合う展開だけど、エスパニョールの守備時のCHのマークの受け渡し込みの中閉じが徹底されているし、セビージャのIHはプレッシングが強烈。ボールを持つ展開ではどうなのかなと思うこともあったけど、運動量は目立っていた。

 

セビージャの裏抜けロングボールが効いている。WGへの縦のロングボールもあるけど、WGをやや降ろして一つ奥のCFへ送るイメージ。

セビージャのビルドアップ時、横に振ってSBを使う際にはIHが2トップ脇に。前述のようにSBにボールが入ったら、SHのDFが出てくる。SH-SB間が空くのでIHは2トップ脇からパラレラでSBを釣る。ペナ幅内にいたWGはSB裏に走ってロングボールを受け取る。これも一つ奥へのロングボール。でも、エスパニョールのCBは結構出張するの厭わないから、がっつりデートで対応していた。

 

セビージャについて個人的に気になる点は攻守にあった。

【エンゾンジの位置とIHの攻撃力】

先ずは攻撃の枚数をどうするのかって気になる。IHが攻撃で恐さを出せていないので、エンゾンジを上げて列調整をするのはオプションとしてあるのかどうか。でも、IHはプレッシングではとても良かった。これもエンゾンジが中央を管理しているというのもあるから、そこで前後の交換がされた場合のトランジション時の中央ゾーンの不透明さは気になるところだけど。

それならば、サイドでWGの仕掛けが早いから、IH2枚で中央をプロテクトしてエンゾンジを上げてターゲットを増やすというのもありかと思ったけど、リバウンドポジションが位置的に枚数的に取れないから、1stDFの都合上、IH2枚を落とすのはやりすぎかも。段差を作って上手くサイドに誘導→ディレイが出来るかどうかも微妙。元は一列前の選手で、ネガトラ時はプレッシングで解決を図るデザインでもあるから。

ビルドアップ時はエンゾンジ+2CBの場合、ガンソが底に入って、もう一枚のIH+ノリートでエスパニョールの2列目背後でトップ下的。ただ、そこに縦パスを送れないから、SBへ。SBの縦のコースにいるべきIH(ガンソなどは中央ゾーン)で、ノリートは中で待機。ベリッソのセビージャは、「ある程度はロングボールでも良いよ」の形が目立つからOKなんだけどね。サイドチェンジでも可のように。

バネガが後半投入されて、ビルドアップ時にエンゾンジが一列上がるようになる。相手DFを押し込めば、バネガとガンソが1-2列目間からその背後で必殺のパスを窺う。そうなればネガトラ時にバネガ、ガンソが1stDFとして相手を捕まえやすく、例え強度が緩くても制限が効いているのでエンゾンジが登場。勿論、IHやCBはカバーの位置取りだけど、バネガとかは中央を埋めないといけないのにサボっていたのは愛敬だった。

単純にバネガの方がエンゾンジよりもパスで振る距離が一枚飛ばしなどで長いので、DFとしては一回のスライド距離が長くなったり。ただ、エスパニョールの2列目の強度は結構凄く、カウンターに移行する時の2トップとボールサイドのSHの出足は鍛えられていた。相手に押し込まれた撤退時はレオとジェラールの2トップ頼みになりがちなイメージだったけど、バイタル封鎖のCHを無闇に横スラ以外は動かさず、CBを前後に出すことでDFラインの強度を維持した442は強力だった。SHのガス欠を上手いことマネジメントすれば面白いかも。

 

【サイドの強度】

あとは、守備時のセビージャのWGの対応が気になる。やや残し気味。WGが下がりすぎると、カウンターへの移行の問題が発生するから、そこは監督として、そして攻撃者という自負を持つ選手自身にとって悩みどころ。しかし、中央ゾーンから3CH脇を使われて、チーム全体のDFラインが下がらざるを得ないオープンな場合、相手SBの攻撃参加についてルーズだったり。サイドの人数だけを見れば、3枚配置されているが、強度が緩いので速攻で形を作られたり。

 

さて、ベリッソのセビージャはロングボールとどう付き合っていくのか。サンパオリのセビージャの反省をベリッソがしたようにも映った。ビルドアップ時のミスに向き合った結果なのかな。ただ、イボーラが居た時とはロングボールの当て方が違うというか。韋駄天WGを活かすやり方とダミー付きというのが工夫の表れですが。この辺のザックリさで推し進めるのかどうかは興味深いところです。