おおたまラジオ

しまいには世の中が真っ赤になった。

ヘタフェ対バルセロナ どうなる?デンベレ、イニエスタ、スアレス

柴崎のゴラッソは、これから日本人がリーガに挑戦する度に語られ、映像として流される永遠のものとなった。

2FWの守備からブスケツを消す限定的な守備的役割、ボール保持時のサイドに流れてリンクマンとしての機能。浮いたポジショニングセンスから脱力ゴラッソまで柴崎を2FWに組み込んだデザインが成功したと言える。

ヘタフェが先制したこともあって、4-4-2(DFラインは上下しつつ、FW-MF間を締めるように2FWを降ろして全体圧縮)からのロングカウンター方式は、バルサがビルドアップを破壊に来た相手を釣り出して、9.5番的な浮いたメッシを組み合わせた擬似カウンターまで持ち込む要素を封じたので、バルサとしては攻め手の一つを消された形。ピケのDFも怪しかったので尚更。これもスコア的優位ならではの戦略。低い位置からのテア・シュテーゲン+2CB+ブスケツのビルドアップを練り直したバルサ相手に、限定的な前プレはホームとか関係無しで現実的ではないと判断したヘタフェは冷静だった。

 

【どうなる?デンベレイニエスタスアレス

バルサは4312 

ようやくまともにデンベレが観ることができる機会となったのだけど、残念ながら負傷交代。あまり良い印象は無かった。これだけで評価するのは駄目だけど。

デンベレがワイドに位置取りしつつ、メッシがワイドに出ることも。そのレーン交換で内に入ることもあり、固定ではないパターン化による3FWの位置取り。デンベレがSB-CB間からSB外のポジション取りから、どうなる?みたいな所でボールを奪われ過ぎだった。ヘタフェのDF-MF間が狭いのもあるけど、中で活動できそうな雰囲気はこの試合では全く見えなかった。バルサとしてはSB込みでのサイドのレーンがどうなるのかという問題を抱えていた前半なので、そこでの預け所となるはずのWG(デンベレスアレス)が良くなかったので苦戦するのは当然というか。セルジもボールを運ぶという点では凄いけど、セメドに比べると縦よりもやや中寄り。爆発的な上下動というわけでもない。セルジが上がった後のSB裏は気になるところで、その前のデンベレがボールを失っていたので、それはどっちも厳しくなる。そういう意味で、デンベレに代わってデウロフェウの投入は、サイドが分かり易くなったと思う。でも、サイドに開いた位置(DFラインがよく見える)なのにオフサイドを貰ったシーンは理解不能だった。

 

マニータで一蹴したエスパニョールの442とは違い、ヘタフェのCHは中閉じるよりもバルサのIHに付く意識が強かった。イニエスタラキティッチがCHに捕まるような形。ブスケツはヘタフェの2FWが上手い守備をしていた。メッシがトップ下的ロールなので、枚数的には4v4で、中央ゾーン(1-2-1)のメッシへの出所を抑えようという原則の下、頑張りきったヘタフェの前半。バルベルデはローテーションを選択しなかったこともあり、バルサは重かった。さらに水を撒かないバルサ対策付き。ボールは走らないけど、ヘタフェはスライドをするため走った。ボールのスピードも鈍く、動けないバルサがヘタフェのDFをどうズラしていくのか。

このような時に、頼みになったのがネイマールだった。1人で1枚~2枚を相手にして、剥がしてしまうクオリティ。エンリケ時代は停滞した時はそれしか無かったとも言えるし、それだけ圧倒的だったとも言える。

あとはイニエスタ。MFライン前で受けて外せてしまう才能の輝きをこれまで見せてきたイニエスタだったが、前半で交代。この辺がキツイところ。現システムの変則3トップだと、エンリケ時代の「ネイマールを見ながらの労働者タスク」よりもイニエスタには重要なタスクが与えられることになる。バルサのプレーが従来のスタイルに戻ったのだから当然なんだけど、イニエスタが鍵を握ると言ってもいいほど。

左サイドに流れる約束事があるスアレスの上手くない単発気味ポストプレーの処理、左FWとの列交換、SBCB間に抜ける動き、左サイド(相手2トップ脇~MFライン~DFライン間)でのボールと時間の管理など。脱ネイマール後のバルサのプレーは「時間を巻き戻した」という表現が近いかもしれないが、イニエスタ自身の時間は戻らないわけで、5歳くらい若返りしないとシーズン持たないくらいの重要な役割を振られている現状。当たり前だけど、イニエスタは超上手い。今でも上手い。でも、イニエスタに預ければ打開してくれそうな雰囲気もあった前に比べると、流石に無理がある。もうフルタイムで連続的にプレーするほどの運動量が無さそう。だから、ローテや後継者問題に繋がるわけで。イニエスタくらいのMFなんて歴史的に見てもなかなか居ないのだから、すぐに埋めるなんて無茶な話なんだけど。

左サイドで時間を作るにはイニエスタスアレスになる。サイド奥を取るのはアルバの仕事。どのように高い位置まで送り込むのかという問題。スアレスはサイドに流れても、ネイマールほどのサイドでの貢献度は無い。そこでサポートをしつつ、DFをズラすにはイニエスタの負担が多くなる。でも身体は動かないという。容赦ない時の流れを感じてしまった。

 

 

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その点で、デニスが結果を出したのは大きい。バルベルデのドンピシャ采配というわけでも。デニスは抜ける動きが多く、イニエスタとは違う身体の軽さを感じさせた。

ブスケツの可変→3412によるDFラインを押し上げたことも関係している。ヘタフェの2 FWが完全に撤退しているので、横幅(SB、デウロフェウ)と奥(デニス、スアレス)を取るべきデザインが整理されたのも大きい。幅に関しては、セルジとデウロフェウがワンツーを出来るくらいの距離感になった。SBが高くてサイドのサポートが速くなった証拠。後ろを安定的な3枚配置してリスク管理をしつつ、中央の差し合いではラキティッチがMFライン前から持ち運んで配球するシーンも目立っていた。本来はイニエスタに求められているプレーだったのだけど、固定の選手以外も行えるというのは選手層を感じさせた。采配込みでの底力という意味ではポジティブ。長いシーズンを考慮するとローテーションの壁と当たるので、その辺の変化が観ることが出来なかったという意味ではネガティブ。CLのユベントス戦という大きな試合の緊張感を維持しつつ、「ヘタフェ相手だから」で緩まないように選手を管理していた結果のスタメン選びだったとしても、難しくしてしまった感はある。ヘタフェが良かった点を差し引いても。

 

また気になるのは、スアレスの仕事。プレーのクオリティが低いのはこれから上がってくるとしても、サイドでの役割が増えたので明らかにゴール数が減りそうな気がする。守備の意識は一先ず置いといて(試合のレベルが上がるにつれて不安要素になるけど)、それ以上にボールプレーの雑さは目に余るもので。スペースを狙いつつ、イニエスタスアレスで時間を作らないといけない部分で両者ともに動きが重すぎた。

スアレスがゴールから遠くなる仕事が増えた今、サイドでも受けた後にダイアゴナルな裏取りでゴールに迫ることは可能だけど、それでDFを釣ってもう一つ奥(アルバ)へのプレゼントの布石になりそうな気もしている。そこからグラウンダークロスという形で。メッシから一つ手前の対角浮き球は、ネイマールへ届きそうで届かない悲しい現実(CBに跳ね返される)と直面したことも多々あったから。

でも、ヘタフェ戦では2得点に影の動きで絡んでいる。デニス、パウリ―ニョのゴールともにスアレスがDFを引っ張るようなニアへのランニングが効果的だった。でも、ゴールを取ってナンボの選手でしょう。今のタスクはスアレス以外でもやれそうで、さらにスアレスよりも適任者がいそうな気もしてしまう。それらを含めて現システムで、最も割りを喰っているのがスアレスだと思うので、シーズンが進むにつれて目に見える数字がどうなっているのかは興味深い。

ネイマールが運んで仕掛け、メッシがチャンスメイクした美味しい部分をスアレスが残さず取りこぼさないように決めきるのがエンリケ政権の特徴だった。それがバルベルデ政権の現システムでは、メッシの9.5番をフルで活かしきるようにスアレスがチャンスメイクも担うようになっている。でも、メッシやネイマールに比べてその部分の質は劣るわけで、残さず決めきります純粋ゴールゲッター以外のタスクが加わっているのが彼にとって幸か不幸か。どうなるでしょうか。

 

パウリ―ニョの身体を当てられることを予測した上での長い持ち出し方をしたタッチから逆サイドへ突き刺す回転力。もうフィジカルが強いって言葉で済ましちゃならんテクの域で笑う— 政夫 (@glasses505) 2017年9月16日

マニータを経て ネイマールとの本当の別れ

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エスパニョールを一蹴したバルサ。今季のエスパニョールはキケ2年目の下、実に成熟した442が選手の特性にハマっている印象が強い。今季はEL圏争いもあるのではと開幕戦のクオリティから妄想したくらい。特に、レオとジェラールの2トップの破壊力というか前進する力はリーガでも上位クラスであるし、ハビ・フエゴ、ダルデル、マルク・ロカ、グラネロ、ディオプといった442を締める豊富なCHの存在感は立派なものがあるし、SHとして攻撃のみならず守備時のポジショニングとしても際立ってきたピアッティのセンスも目立つエスパニョール。

それをマニータで蹴散らしたバルサには驚かされた。

本記事は、エスパニョール戦でのバルサの変化について書いたもの。

 

【本当の意味でのネイマールとの別れ】

 

ネイマールとレオ・メッシの関係性は互いに意識したリスペクトであり、フレンドリーでありつつも、タフな関係だったと思う。MSNというサッカー史に残るような破壊力を有したトリデンテの両翼。試合の中、メッシはネイマールを見て、ネイマールもメッシを見て。今夏の衝撃的で歴史的なビジネスは、ネイマールがメッシをリスペクトしつつもライバルという立場へ踏み出すために、そして超えるために、パリの街でチームの顔として君臨する立場を選んだ。それはメッシへの畏敬の念だけではなく、王国ブラジルを率いるスターの宿命として選ばざるを得なかったものだと思う。

 

ネイマールの移籍は、左SBのアルバを透明人間から復活させた。横幅としてのSBの役割だけではなく、サイドを抉ることが出来る縦への速さ、繰り返されるオーバーラップは、ネイマールを助けるものではあったが、アルバ自身が報われるものでは無かった。ネイマールは4-4ブロックを舐めるような横断ドリブルから中に切れ込むことも出来る。その視線の先にはメッシがいる。フットサル仕込みのボールを受ける技術(デスマルケ)が飛び抜けており、横だけではなく縦への仕掛けも単独でこなせるので、相手SBを混乱に陥れるのは難しい仕事ではなかった。

その圧倒的パフォーマンスは左サイドをネイマール単独で管理するようなもので、バルサがチームとして停滞した時でも、ネイマールに預ければ前まで運べてしまう事実。ネイマール自身の責任感、エンリケ時代のMSN至上主義的前輪駆動型のように歪んでいくチームモデルのバランスを考慮した時、ネイマール自身の守備時の負担も増していった。

以前は、ネイマールが降りる動きをしてからSB裏に抜けることを頻繁にしていたシーズンもあったが、攻守におけるペース配分を考えてからか年々足元への要求が強くなっていったのは仕方ないことかもしれないが、個人的には喪失に近い感情も湧いたのを覚えている。

 

そのネイマールが居なくなった今季。左サイドをそのまま空けるという、ネイマールのスペアで埋めるとは違う手法を披露したバルベルデ。スペアをそのままのモデルに使用しても、それは昨季のサッカーからネイマールを引いて付け足したようなものでしかならず、ネイマールよりもダウン・グレードしたものでしかならない。そういう意味では、今節のシステムは論理的で従来のバルサに正したと言える。時計の針を少し戻したような錯覚を覚えるが、選手の加齢もあって確実に落ちていくもの。特にトランジションの面が顕著であり、それに悩まされてきたバルサだが、IHとブスケツで相手を捕まえるインテンシティは際立っていた。変則的システム変更によって仕掛けるエリア(中央のメッシ)が限定的になったので、ボールを失うスペースが予測しやすくなったことが大きい。従来のメッシが右WG~中央だった場合、右サイドから中に入っていくスタイルだと、ダイレクトにメッシの守備問題が浮上する。そこからラキティッチが釣り出された後のスペースと消耗していくブスケツ問題と向き合ってきたバルサ。それらを整理して一気に解消されたかどうかは様子見であるが、今節のようなブスケツのパフォーマンスならば安心安全のような気もする。それくらいトランジション面が向上していた。

 

ネガトラにメスを入れつつ、脱ネイマール化を図ろうとしたバルベルデ

メッシを中央に配置して守備にスアレスを計算。時にスアレスには横幅の役割を担うことが求められたりするが、復活したアルバがストレス発散する仕組み。スアレスの横幅は物足りないので、サポートはより意識付けられるはず。そのため、誰もがネイマールを見つつ、その安心感からか足が止まってしまうような停滞感は無くなるだろう。ポジティブとネガティブが同居したような雰囲気という意味で。勿論、メッシからの左足の対角サイドチェンジもある。昨季はアルバの一つ手前(ネイマール)へのプレゼントだったりしたけど。

このシステムでは、デウロフェウがどう落ち着くかは分からないが、横幅としてメッシやセメドと絡むことが求められつつ、ドリブラーとしての矜持を示さなければならない。自身の土俵のクオリティで勝負できるという意味では幸せかもしれない。それしか無さそうだから(笑)

右サイドの循環から相手DFを傾け、左SBのアルバで手前のSHを引っ張る。ハーフレーンを広げてイニエスタラキティッチでボールを運んで侵入する機会を増やし、IHのパラレラで相手CHを消すことで、サイドでのスアレスのポストを活かす。そのスペースから塞がっていたはずの中央、その先にはゴールから逆算する筋道を示すかのようにメッシが居る。3得点。それを誇示したエスパニョール戦であった。だからこそ、右サイドの力関係を計算できるセメド以外の選手が必要になるわけで、そこにデウロフェウがハマったら夢がある。

 

ネイマールとの別れが、皮肉にもバルベルデの仕事を絞り易くなったようにも思える。監督としては、あれだけのクラックを手放すことはクラブとしても損失に違いないが、リソースを枯らしていく焼畑的戦略からの脱却、歪んだ遺産に手を付けないといけなかった問題に対して取り組みやすくなったと思う。その一つの解が今節の変則的システムとするならば、バルベルデの柔軟さと明確さによるものだろう。ネイマールがもう居ないならば、当て嵌めて埋めるのではなくフレキシブルに代用しようというアイデアは凄い。バルベルデにそれくらいの割り切りを決断させたのは、間違いなくネイマールの存在感だからとも言えるのだけど。

 

【GK保持時の被前プレに対して】

GK時やGKがボールを持った時に相手が前プレを仕掛けてくるのは日常茶飯事。珍しくない光景となった。それでもCBや前プレ急所の逆SBに蹴り込むかどうか。足元の能力の高いGKを有しているチームならではの悩みである。結局、蹴り込むのも正解だし、我慢して繋ぐのも正解。それらは結果論として議題に挙がるから。

今節のエスパニョールは限定的前プレを仕掛けてきた。対バルサの常套手段である。エンリケ時代は我慢しつつも、最終的には繋げずに蹴り飛ばすしか他無かった印象の試合もあったが、この試合のバルサはGKからのビルドアップを大切にしていた。蹴り飛ばすシーンもあったけど。ピケとウムティティが、ペナルティエリアのワイドに位置取り。もはやテア・シュテーゲンの真横だったり。そして、ブスケツは中央から動かずにテア・シュテーゲンを見つつ、テア・シュテーゲンブスケツを見つつの関係性。IHとの距離感も改善されており、ペップの「ビルドアップは7v5に収斂する」のお約束を見るかのように我慢しながら、相手のプレスを外していた。それには適切なポジショニング、リズム、トラップ、アングルが欠かせない。ビルドアップ面で全体をオーガナイズするブスケツの存在感。ロングボールなどで前への展開を急がずに、スペースとアングルを調整していく。以前ならば、ネイマールが窮屈になっても運べてしまう程の選手だったし、彼がファウルを貰うことで陣地回復を図れた上でリスタートをしてポゼッションを開始することが出来た。そのため縦への展開が求められていたわけで。

ブスケツを軸にライン間に送り込む。その先にはメッシが居る。メッシとブスケツの関係性もバルサを語る上では欠かせない。

被前プレに対して、蹴り飛ばしてどうにかなる可能性があるなら、それでも良いと思う。スアレスの裏取りセンスを考えると現実的であるから。ただ、低い位置から繋ぐことで生まれる価値もある。それが昨季のベルナベウ・クラシコのメッシのゴールまでのプロセスに凝縮されている。省略しなかったからこそ生まれた、メッシがユニフォームを脱いでスタンドに掲げる英雄的瞬間。そのディティールを執拗なくらいに追求していくのがバルサだと思っているので、この路線を耐えながら継続して欲しい。

 

【超個人的な話】

近年、バルサの試合を観るモチベーションの一つに「ネイマールのプレー」があった。それも高い割合で。股抜きやらシャペウといった曲芸は「侮辱的」と映るものの、魅せるプレーとして捉えていたから。何よりサッカーが楽しいから観ているのに、選手たちが楽しそうでなかったら虚しい。その点でネイマールは、相手を見ながら手玉に取れる余裕と技術から、完全に相手を上回っている優越感もあるだろうけど、楽しそうにプレーしていた。ブラジル人のイメージそのままに圧倒的だからこそのエンターテイナー。だから、今夏の移籍は熱心なクレほどではなくても大きなショックだった。

しかし、この修正を見せられたら話は変わる。

これからバルベルデの審美眼によって、戦力の見極めがよりシビアになっていくだろう。CLも始まるし、コンペの両立を強いられるタイトな日程が待っている。どう変化していくか。バルサの試合を観よう。

ビエルサ、大変 リール対ボルドー

代表ウィーク明けのビエルサのリール。夏の移籍市場では戦力整備という名の追放劇もあり、結果の出ないピッチ上のバタバタ感のみならずピッチ外のカオスも表面化してきました。それでも、その辺のゴタゴタよりもビエルサの戦術面の仕込みがどれくらい浸透しているかどうかに注目していたので、今のところは定点観測しているリールの戦術がどう変化していたのかを意識して観戦しました。マッチレポは以下。

 

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リール 4231

ボルドー 433

 

【リールの守備】

ボルドーのビルドアップはGKを組み込んだ形で、ワイドの2CBにはリールのプレスは走って死んで。それでも枚数が足りないので、1stDFで奪い切るよりも後方のDFライン(マンツーマン的)で捕まえようと。

プレシッングの形は変わらず。迎撃SBはボルドーのWGがハーフレーンでエントレリネアス準備したら、縦パスが入ろうとするタイミングで掻っ攫う気満々。降りる動きにもWGとそのままデート。そのSB裏はCBでスライド。CB間が空かないようにもう一枚のCBも連動。逆SBは絞らないで相手WGをマークする形。ただ、ボルドーのアタッカー(逆WG)の位置がボールサイドではないSBCB間ならば、ボールサイドの処理に追われるCBとのCB間の距離がポッカリ空くので、ビルドアップ時のSBの守備タスクは整理されているけど、押し込まれた場合のWGポジショニング問題(SBCB間)は中途半端。

また、ボルドーが中盤省略のロングボールを行うこともあるので、それに対しては前プレで縦スラしているSB裏を右CHがカバーすることも。SBをそのまま高い位置に送り込みたいので、もともと一枚のCHはリスク管理的ポジショニングで残り気味~ボルドーの1トップ脇

 

 

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撤退時は442

ボルドーのバックパスには犬のように走ることが義務付けられているから、死ぬまで走るしか無いのだけど、前線の猟犬プレスに後ろが縦スラしていない場合、前線が捕まえきれずにワイドから前進された時、ドリブルでするすると運ばれるのでマークが気持ち良くズレていく。それでボール奪取後のポジトラ問題。ネガトラのマンツーマン的プレスは鍛えられているけど、ポジトラはかなり怪しいまま。自陣でボールを回収した後、SHにスペースある状態で仕掛けられるような状況をどのように作り出すか。

 

【リールの攻撃】

 

 

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攻撃のデザインは、サイドの縦の速攻をイメージ

SHの縦の仕掛けとSBのオーバーラップ。早い仕掛けならクロスに対するエリア枚数は2枚(CFとSH)でも大丈夫攻撃。でも、それは定位置攻撃の場合に限るようで、ポジトラ時はSHのドリブルで如何に頓智期待できるかの割合濃いめ。追い越しが弱いので、枚数的にも足りていなかったり。

ビルドアップは2CBで出来るだけ運びたい。3CB化はしたくない派閥。CHのポジショニングを下げたくないから。ボルドーが433前プレするわけでもないから。そのため、ボックス型ビルドアップとして2CHは関わるし、ボールサイドのSB(非対称型)もある。でも、基本は2 CBをどれだけ自陣高いエリア(ハーフライン付近)まで運べるかどうか。SBが低い位置で組み立てに参加すれば、SB-SH間が空く。SHは外張りでは無くてHS~裏抜け準備をしているから。そこでSBの縦関係が存在しないので、CHがパラレラで前進して、サイドに偏らせてから逆サイドへ展開してSHのアイソレーション。判断の連続性がスムーズで面白い展開だったので、多分練習している形。CHのダイナミズム、展開力、SHの単騎突撃力を活かすという意味で楽しいアイデア。メインは、裏取りロングボールかCH脇~WG-IH間での受け手になるSHから前進。ボルドーのCHを如何に動かすかが鍵。それにはトップ下かCHのポジショニングが必要。相手が食い付けば、MFラインとDFラインの距離が長くなるので後ろが連動しなければ、そのままスペースが広がった場所(MFライン―DFライン間)のハーフレーンか外を使える。DFラインが連動した場合は、裏へ抜けるために一本送り込むみたいな。

 

【リールの問題点】

前半32分にイエロー2枚目で退場者。試合の興味は底を尽きかけるような。カードは妥当なんだけどね。

リールとしては、クロス攻撃に耐える展開。相手SBの攻撃参加にSHは守備時には付き切るし、CHはペナ角を埋めないといけないのでSH-CHゾーンがエアポケット化するから、ボルドーとしてはクロスを上げるのは楽。

 

カウンターもポゼッションも中途半端な印象に落ち着きつつあるビエルサのリール。3節まではポジショナルプレー全振りのポゼッション型。そこで崩しきるには細かさや最終局面での質が無いと判断してから、ある程度のスペースがある段階での速攻ということでの4節(特に前半)。ボルドー戦は4節からの流れをそのまま継いだ。4節の(前半)時よりも縦へのボコボコ感は整備されているけども、物足りない感じは否めない。定位置攻撃か速攻かという話では無くて、どちらも必要な形ではあるのだけど、その二つがどちらも中途半端。ボール保持か速攻かの二択が限定的になりすぎている。ボールを持ちながら、スピードアップの機会を窺う形がリールの理想なのだろうけど、これまでの4試合を見るとどちらか一方でのコンセプトしか組み込めないようで、形としては極端なんだけど、質的には低い状態が続いていることから宙ぶらりんだったりする。目指すところはハイブリッドなのにどちらも齧ったら中途半端に。ビエルサのトレーニングで詰め込まれて、選手たちのアウトプットが限定的なのかなと推察。「どちらも」よりも「どちらか」という話で、ビエルサが初期(1節~3節)に仕込んでいた3331が志半ばで散った今、選手たちの混乱同様にビエルサも大変といった事態。前プレはロジャー・シュミット教のように雪崩れ込むような前プレからショートカウンターというよりも、無理に蹴らせてボールを回収したい・落ち着かせたい狙いが強いので、ポジトラが組織回復的要素になるのは仕方ない面もある。そういう意味では、マティアス・アルメイダグアダラハラと同じ構造を持ちつつ、同じ悩みも抱えている。

 

【一枚少ないリールの後半を観るのはシンドイ】

後半は撤退を選択。自陣撤退時は4-5-0になるが、相手SBの位置にDFが引っ張られて6-3-0になることも

しかし、ボルドーのビルドアップ(2CB+CH+SB)には、役割が決まっている前線+CHが牽制することは変わらずあるけど、深追いしないでスペースに戻るのが基本。かといって、完全にバスを止めるような撤退では無くて、ハーフで構えてラインを上げることで1-2列目をコンパクトにするように。ボルドーとしては、ミドルゾーン中央からの前進は簡単に出来るので、後はどう崩すかという話になるのだけど、後ろの枚数が重たいリールのDFラインとサイドの枚数を考えると、素直に外から展開するのは旨味のある話ではなくて、ボルドーのIHを見る役割のリールの1列目のDF(CH)がドリブルには下がりつつ、同ライン上の二枚目がカバー位置を取るので、カットインを仕掛ければ斜めのコースが出来る。ボルドーからすればサイドを動かして、低くなるMFラインの中央をどのように使うか。ズラしたならばリールのDFラインもバタつくので、外が使えるということに。

 

リールの攻撃面は、枚数が一枚減ったこともあり、より懸念していたSHかCFでどれだけ時間を作れるかどうかに陥る。相手DFも抑えるところは把握しているので、2枚の関係性で挟み込むように対応してくる。数的優位の暴力。そこへの縦のサポートは基本的にはSBの仕事なので、前線で時間を作れないとそもそもSBも参加できないというジレンマ。そういう意味ではサイドチェンジが一つのポイントになったりする。また、ボルドーの前プレがそこまで強烈では無いことから(その代りサイドの対応はハッキリしている)、案外CHが持ち上がることが出来るシーンがある。運ぶ能力があるのは前提として、トランジション時の中央の緩さも関係している。SHやCFが持った時はトランジション時そのままなので、単独でどうにかしないといけないのは変わらないのだけど、CHが持ち運ぶシーンはリールの前線が相手DFラインを下げていることから、DFライン―MFライン間が空いている状況が生まれているから。それにはボールを奪った後~組織回復(前線のポジショニング上げ)のフェーズ間でCHが運べる環境があるため。

試合は0-0で終了。

なんとか耐えたリール。クーラーボックスに座るビエルサがリールでは観られないのですが、テクニカルエリアで便所座りするビエルサが後半唯一の癒しとなったボルドー戦。それくらい見所は無かったです(笑)

リールとしては勝ち点1を得ただけでも御の字の内容。実際、何度か死にかけたシーンがあるので、ボルドー的には痛手。

ポジトラ~カウンターの課題は変わらず(手を付ける雰囲気は無さそう)、ボール保持時をこのまま推し進めていく感じも強くなった。そういう意味では、前半一枚退場した段階では勝ち点1で大満足なんだけど消化不良みたいな。相手を見つつ準備してきたものを披露するのが前半とするならばだけど、後半は試合に応じて変化していくとするなら、今節のリールは代表ウィーク明けからの今後のコンセプトを提示するというところでは曖昧のまま。退場者が出たからというわけでもなくて。得点を取ることに関してはカウンターが一番効率がいいのだから、目先の結果を考えれば、そこに手を加えていないのは如何なものかと思うのだけど、ボールを持つことで安定した中長期的なスパンを見通せるからチャレンジする価値はある。ただ、それまで耐えられるかどうか。ビエルサとフロントが。