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AFCフットサル選手権2018 フットサル日本代表vsイラン代表② イランのスコア優位と効率性による強さ

AFCフットサル選手権2018 フットサル日本代表vsイラン代表① 最高の前半だった日本 - フトボル男

 

後半

日本は1stセットから。

イランはプレッシングラインを下げて、スコア優位性からくる心理的な力関係とシンプルなピヴォ当てで攻撃。

イランのキックオフ直後、3-1でのサイドからサイドへのボールに対しての西谷の寄せの速さ。パスを受けた選手は懐でグッと持ち替えて西谷の矢印をズラしてサイドを突破。サイドを運びきられないように中央にいた森岡、そして対面の西谷の2枚で挟もうとするが、森岡の股を抜くサイドチェンジのパス。森岡、西谷、逸見、滝田の全員がボールウォッチャーになってしまって、イランのウィークサイドのバックドアに反応出来ないシーン。サイドチェンジの横パスが、縦のピヴォ当てと同じように視野をリセットさせる効果があることを示した。

 

  • 18:56 イランの2点目。日本陣地でキックイン、3-1でのポゼッションを図ろうとしたが、イランは高い位置からのプレッシング。サイドチェンジで横幅を使って逸見のエントレリネアスから起点になろうとした瞬間、逸見のライン間への移動のスピード、走路の工夫が無いままなのでマーカーが剥がれていない。逸見のマーカーは少し空けさせてから、逸見に入った瞬間にスピードを上げてプレス。身体の角度を限定させて逸見のアウトサイドのパスラインを読んでいた2枚目のDFの連動からイランのショートカウンター。日本のDFの1-2列間、マークのズレによる右サイドのスペースを使ったイランは、ボールに対応している日本のDFの死角となっている右サイドの角を取って落としをシュート。シュート力の違いがそのままゴールに結びついている。

 

  • 18:21 星、吉川、森岡、室田といったセットの組み方。
  • 17:47~ イランのピヴォ当て後の日本のカウンターシーン。イランのピヴォをプレスバックで囲む日本のDFのトランジション。起点はイゴールから室田へ。状況は3v2の日本のカウンターであるが、運び役の室田が中央レーンを抑えていないので、3レーンを使えずにサイドがダブってしまっている。イランとしては1-2列間を使われているシーンであるが、1列目の戻るべき中央のスペース、2列目のDFがサイドでコースを切りながら、時間を掛けながらDFをするリスク管理が見て取れる。
  • 17:05 皆本、吉川、星、室田のセット。その後、室田は清水と交換。

日本とイランのトランジションの速い展開が続く。イランはシンプルなピヴォ当てから。日本はそのピヴォ当てを奪ってカウンターなど。ボールを落ち着かせるかどうか。星はスペースへのアタックを狙いつつ、吉川はアラとしてのサイドでの受け方と運ぶための工夫をしているシーンがあった。

  • 15:40 皆本のウィークサイドのバックドア。星のライン間の移動とサイドチェンジのボールでイランのDFがボールウォッチャーになっている。吉川からの対角へのロングボールで皆本をスペースに走らせる。イランのDFはボールとウィークサイドの皆本を一度に視野に収められない姿勢なので、どうしてもリアクションが遅れる。皆本のゴール中央へのクロスには詰められず。

イランはクリアランスやゴレイロを使ったロングボールでピヴォ任せ。ピヴォのキープを信用して、ある程度日本のラインを下げさせてから、イランの2列目がサポートに出る順序なので、イランのピヴォは孤立気味。だから日本のDFとしては囲いやすいが、さきの時間帯とは違ってイランはラインを下げているのでピヴォ当て後のカウンターが狙えない。しかし、イランは陣地が回復できないので、日本がボールを握る展開になる。クワトロで持ちながら、どこを基準点にするか。サイドでの受けた時のボディアングルと攻撃のスイッチになる縦パスのタイミングとパスライン作りをボールを動かしながら、選手もポジションを動かす。横幅で広く使いながら、ライン間を取ることで深幅が取れない日本。ピヴォの要素をどのように使うか。ただ、ライン間を使っているのでイランのDFは上げられない。無理をしてラインを上げる必要もないのはスコアの優位性。

 

  • 14:15 イランの浮き球処理を奪った日本のトランジション。ポジションのバランスを取りながら、イランのハーフに敷いているDFのライン設定を崩せるかどうか。イランの1列目のDF、星のマーカーを逆を取る星のピサーダによる2v1でのサイドの優位性、時間を得るためにバックステップでリターンを受ける星からウィークサイドを埋める吉川へ。サイドからサイドへではなく、一度中継点を挟むとイランの2列目のDFもマークがしやすい。

 

  • 14:08 逸見、森岡、滝田、仁部屋のセット。

今大会の日本のOFのオプションでもある左サイドでの逸見―森岡のペアが活かせない。逸見が右サイドから旋回して左サイドへ流れるイメージとしても、前線で起点になる森岡がボールを収めるのに苦戦しているので、日本としては時間を作れない。そして、イランはシンプルなピヴォへのボールを集めるので、日本のDF1枚では恐いから1列目のプレスバックが欠かせない。イランのピヴォを囲んで奪っても、森岡などのポジショニングが下がっているので基準点自体が低いままで、イランを押し込むためには一工夫が必要となる。そのための逸見のサイドでのドリブルや森岡のキープ力になるのだが、そのペアの長所が発揮できない日本。

  • 12:40 イランのカウンター。イランとしてはDFラインを下げて日本のミスを誘うことで効率よくカウンターを狙っている。スコアの優位と残り時間の優位から、日本の集中が切れる瞬間に仕留めるイメージ。イランのボール保持者に対して滝田が中央を抑えて、ニアをイゴールで消すように対応したシーン。

 

  • 11:56~ 仁部屋のアイソレーションからイランのカウンターへ。ボールラインまでの撤退を求められる日本のDFとスペースへアタックするイラン。サイドを起点に、サイドに膨らみながら斜めのパスラインを作りつつ、サイドからサイドへのパス。ペアの関係性だけで日本のゴール前まで侵入したシーン。リスク管理も徹底しているイランなので、その直後にセットを交換した日本に対してプレッシングラインを上げて対応。星、吉川、西谷、逸見。

3-1でのボール保持から吉川→星へのピヴォ当て。星のマークの外し方と受ける位置によって吉川のランニングのスペースを作っているからこそペアの関係性でシュートまで持って行ったシーン。その後に逸見と室田を交換。

 

  • 11:18 イランの3点目。イランのエントレリネアスに対して日本のDFの足が止まったシーン。誰が絞るのか? 中央ゾーンをドリブルで使われてDFとしてはラインを下げるしかない。DF2枚が釣れたタイミングでウィークサイドのフリーの選手にパスを出すことで、DFが付き切れない。DFの数が足りていない=スライドが間に合わないスペースと時間を与えてしまい、失点。シュートも凄かった。

 

  • 10:00 西谷から星へのピヴォ当て。西谷のウィークサイドへの移動。星から吉川へ。ピヴォ当てによってラインが下がっているイランのDFはサイドに偏っているので、ウィークサイドが空いている。西谷の非言語コミュニケーションからバックドアは、イランの2列目のDFに読まれてカットされるが、その後のトランジションでの吉川のプレッシング。西谷の裏のスペースをケアするDFの速さが見事。

 

  • 9:11 皆本、清水、逸見、仁部屋のセット。

清水が深幅を取れるピヴォなので(直前にもサイドに流れて受けた後の反転からシュートまでいけていた)、アラとして突破力が求められている逸見、仁部屋を起用。ピヴォ、アラ、フィクソの関係性を明確にしていた組み方。仁部屋や逸見に仕掛けさせるためにはどのようにカバーリングのDFを消すかが大事。清水を起点にストロングサイドを構築してから逆サイドへの展開なのか。清水がサイドに流れることでDFを釣って、日本の2列目の選手がスペースへアタックするのか。ピヴォ当てからの連動なのか。

 

  • 7:54~ 気になるシーン。
  • 7:28~ イランのカウンターシーン。逸見、皆本のピサーダでの2v1からボール前進。イランのDFのバランスが崩れているのは中央寄りとライン設定が低すぎるから、1-2列間が分離している。ドリブルをしている皆本にとっては選択肢が多い状況で、3レーンを抑えている(仁部屋、渡邊)から幅も取れているが、ボールを奪われて3v2のカウンターを食らい、ポストに救われた。イランの中央スペースが空いていたことから皆本のドリブル判断、スペースを使うための前掛かりな攻勢は3点差という劣勢から引き出されるもので、イランとしてはそこを突くためのカウンターを準備していればいい。

 

  • 6:49 イランの日本のプレス回避としてのウィークサイドへのロングボールでの好きなシーン。渡邊がウィークサイドをケアしてヘディングで1列前の室田に繋ごうとしたボールをイランの3番にカットされたシーンであるが、本来ロングボールのターゲットはこの3番であった。しかし、渡邊がスペースに入ってケアしてヘディングで繋ぐことを読んだ3番は渡邊と競り合わないでヘディングのパスコースにポジショニング。勝てない勝負をがむしゃらに仕掛けるのではなく、先読みでリカバリーするセンスが好き。その後の室田のプレスバックも集中しているからこそイランのミスを誘った。

 

  • 6:14~ 吉川から渡邊へのピヴォ当て。吉川が抜けてイランの1列目のDFを押し下げる。そこを起点に室田のアイソレーションへ。渡邊はニアに移動して室田にとってのカバーリングのDFを消して、吉川はセカンドポストへ。ウィークサイドの西谷のポジショニングがあるから、イランの1列目のDF間は空いている。そこを目掛けて室田のカットインからシュートまで。その後のイランのカウンター。カウンターのスペースは室田の裏。逆FP(このシーンでは西谷)のウィークサイドのバランス、絞りが緩いのは今大会の日本の特徴でもあるので、裏のスペースをケアするのはイゴール

 

  • 5:23~ 日本のPP 今大会初めてのPP機会でもあった。セットは皆本、仁部屋、星、清水、吉川。2-1-2の形で2列目のボールの回し方、サイドの角の取り方を探る日本。イランはDFラインをそこまで上げない構え。イランのライン間にポジショニングしている味方をどのように使うのか。ストロングサイドのブロック役として角へのパスラインを作るためなのかが曖昧なので、角を取る選手のポジショニングも浅い時もあった。その後、1-2-2の形に修正した日本。左利きがいないのが悔やまれる。こういう時に真価を発揮してほしかったのは斎藤なんだけど。

日本が連続的にPPを行えないようにボールを取り上げるためにぷらっシングラインを上げるイラン。ボールを奪ったらゴレイロまで戻してロングボールでのピヴォの優位性からキープで時間を削る。

タイムアウト後の日本のPPのセットは森岡、室田、逸見、西谷、渡邊で1-2-2の形

  • 2:57~ 逸見から室田へ。西谷と逸見のポジションチェンジ+西谷のストロングサイドの1列目のDFをブロックすることで1列奥を取った逸見への一枚飛ばしとなる。マークのズレが起きないように2列目のカバーで対応したイランのDFは逸見の右足を切りながら寄せている。セカンドポストには渡邊がいるが、そこは消されていた。
  • 2:37~ 渡邊がライン間に入ってブロック役になることで西谷が角を取ったシーン。角を起点にイランのDFの全体を下げさせて、逸見経由で室田のミドルシュート
  • 1:59~ ライン間でブロック役の渡邊と西谷のポジションチェンジから角を取ることでイランのDFを崩したシーン。イランがボールウォッチャーになる部分とDFの死角を突いた渡邊のポジショニングから生まれたチャンス。

その後のイランのDFの1-2列間の圧縮でライン間を消す修正。角を取られるのは割り切ることでコンパクトにDFしている。

  • 47秒 吉川、渡邊、森岡、逸見、西谷によるPP 森岡が持つことでイランのDFを引きつけることで生まれた逆サイドのスペースへアタックした吉川の判断に対して身体を投げてシュートブロックするイランの1列目。セカンドボールを拾われてPP返しから4点目。PP時のミドルシュートでの終わらせ方の難しさというかリスクであるが、残り時間から悠長にボールを持っていられない焦りと使命感、そして責任感。今大会でチームをプレーで牽引してきた吉川がPP返しの起点になったというのは残酷だ。あれだけチームを支えてきた選手にフットサルの神様は微笑まないということなのか。センチになるくらいには切ない終わり方だった。

悔しい 。まだ悔しさが残っている。

後半のイランの強さは尋常ではなかった。イランがラインを下げてカウンターでギアを入れるタイミング。これは前半終盤に先制したことによるスコア優位性だろう。

日本としてはあれだけ仕上がっていた集中した内容でも1点も取れなかったことを踏まえると、前半以上のものを求められる。スコアは既に劣勢という事実からくる心理的負担。

ゲームを壊さないように大事に運ぼうとするリスクヘッジと保守性、必要な状況でのリスクを掛けた攻撃性といったバランスから、フィジカル的にもメンタル的にも思考が鈍るハードな後半。

イランの上手さが際立った。

シーズン終了直後からの過密スケジュールを言い訳にするものではないかもしれない。それを口にすることは、ここまで辿り着いた選手たちを軽んじるものだろう。

日本は懸命に戦ったが、勝てなかった。

2年後を見据えて人選は変化するだろう。このメンバーで臨む最後の機会になるかもしれない。

環境整備や選手年齢の高さについてブルーノ・ガルシアは警鐘を鳴らしているので、積極的な若手起用が増えると思う。

どうなるか分からない。しかし、次に進むことは確かだろう。

Fリーグのシーズン終了から、フィジカルとメンタルが休む間もなく代表戦が始まり、試合続きだった日本代表の皆さまお疲れ様でした。

次こそは。