おおたまラジオ

ぼくはいったいなにから逃げているのか?

飛鳥部勝則 感想メモ

 

ヴェロニカの鍵

ヴェロニカの鍵

 

 

正直テンポを上げようと思えば上げられる作品ですが、淡々と芸術に没頭していく暗い観念的な人物像とさよなら青春時代が描かれています。大人が昔を懐かしむ〝過ぎ去った青春〟というのが刺さります。人間的な虚しさというのでしょうか。『殉教カテリナ車輪』よりかは、絵画を紐解いていくイコノロジー要素からのミステリ感は薄いものの、ゴッホの死を絡めた芸術的要素はあるので、主人公とその周りの芸術を生業・趣味とする人間模様が主体で、芸術家としての生き様がミステリ部分にも合致していく終盤が良いです。癖の強い主人公が追い求めるヴェロニカを巡る謎とホワイダニットがラストに余韻を残します。これは良い青春ミステリです。

 

 

バベル消滅 (角川文庫)

バベル消滅 (角川文庫)

 

 

海外の某有名作品を彷彿とさせるトリックですが、嫌いじゃないです。フェアだと思いますし、終盤で明かされる趣向も好みであったりします。一筋縄でいかない心理描写や会話に、推理シーンは手掛かりから導かれている過程が前提としてあり納得できるものでした。そして、作中で幾度か建築されていた〝バベルの塔〟は、ラストで明らかにされるタイトルにある『バベル消滅』の意味に収束。終章を総括し、物語を閉じるのに相応しいといえるでしょう。企みに満ちた趣向や〝探偵象〟をもって、ミステリオタを食うような姿勢も好感がもてます。嫌いになるわけがない作品でした。

 

 

N・Aの扉

N・Aの扉

 

 

この本は何なのだろう…答えが出そうで出ない…。読了直後に冒頭から整理すれば良いのでしょうが、その気力は湧きません笑 私小説、評論、随筆、作中作とてんこ盛りの問題作でありますが、同時に作者の本格愛に満ち満ちているというべきでしょうか。メタを限りなく愛のある抱擁で向い入れた結果生まれた怪作です。じわりじわりと湧き上がってくる違和感というか不思議というか。奇書の癖そのものでした。

 

 

砂漠の薔薇 (光文社文庫)

砂漠の薔薇 (光文社文庫)

 

 

これは変態青春ミステリだ(笑)

こってりな百合に首切りをマシマシ。終盤の多重解決の回し方が好きです。バカトリックがありますが、その発想は愛しいですし、最終的な落とし所も良いです。意外な伏線の数に圧倒されますし、狂言的会話劇に自然と溶け込んでいるからこそ、作者により弄ばれた感があります。そして、首切りの真相は飛鳥部ならではないでしょうか。呆気ないと取るか、らしさと取るかで分かれるでしょうが

 青春ミステリの定義を再考するキッカケになりそうな本です笑