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バルセロナ(Barça Lassa)定点観測

フットサルの話です。

本記事は観測できた範囲内でのバルサの戦術紹介・纏め記事です。

 

今シーズンも安定した強さを発揮中のバルサ

本当に強いです。世界レベルの縦への速さは主力の怪我なども重なり、以前よりかは大人しいかもしれませんが、それでも戦術と技術と判断の結晶体となっている強さが見て取れます。本当に贅沢なチームです。

バルサはセット毎の交代が多いです。基本的にコンセプトとしてのセットの構造は固定ですが、プレー時間考慮で選手の一部を入れ替えることもあります。直近でいえば、レオ・サンタナが代表的になるかもしれません。

クワトロセットから一部入れ替えながら3-1セットに。或いは3-1セットからピヴォだけを抜きながら徐々にクワトロセットに変化していくパターンもあります。

それもフェラオのコンディションによるプレータイム管理とエスケルジーニャの併用オプション(ダブルピヴォ)との使い分けによって、両セットともに3-1セットになるかどうかも。

大枠として3-1のピヴォセット、クワトロセットが今季のバルサの戦力です。

シュライカー大阪の木暮監督やフウガドールすみだの須賀監督によれば、「一枚ずつ入れ替えて変化を加えるよりも、セット毎の交代の方が練習の時から想定できるのでコンビネーションは高まる」とのことで、バルサも補強をして同じようにセット毎の練度を高めている印象です。

木暮監督自身は、セット毎よりも一枚ずつ交代していく方式を採用していますが、それは「試合のリズムを維持したまま」交代カードを切れるからと仰っていました。セット毎だと「試合のリズムをリセット」する感覚に近いため。

バルサは不利な際には「リセット」をするタイミングが上手いように思えます。勿論、選手たちのクオリティの高さは当然としてありますが。

補足として、須賀監督はセット毎の交代について「レギュラーが固まり易いので、ベンチのモチベーション管理が難しくなる」と指摘していました。

 

【3-1セット】

3-1のピヴォセット ピヴォはフェラオかエスケルジーニャ。

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フェラオは、サッカーでいうブラジルのロナウドばりの世界最高峰のピヴォです。フェラオはファー詰めのためのセカンドポストへの侵入やバックドアも上手いですが、最も輝くのは相手DFを背負った状態でのポストプレー。反転シュートの上手さは世界トップレベルです。自分の型に入れば、DFは分かっていても止められません。

DFを背にした中でのプレーは彼自身のフィジカルもありますが、へドンドの一環でDFがズレた僅かな時間を使って、位置取りと重心の置き方を準備しているのが分かります。ピヴォ当ての際にも、マークよりも少しズレる動きもあります。先に上半身全体を預けて、空間的余裕を得る方法ではなくて、お尻を面とした腰の持っていき方と上半身のバランスで重心が乗っている状態を作りながら、縦パスを呼び込んでいます。そこにハンドオフを組み合わせることで、絶対的な領域を確保することに成功しています。

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 フェラオとディエゴのブラジル代表ホットラインは凄まじいものがあります。このセットでのストロングポイントです。

 ディエゴの特徴は左右どちらも高精度であることは前提としてありますが、右足によるカットインは外せません。左サイドでボールを晒しながら、カットイン後は右足が遠い足になるので、シュート角度の確保と逆サイドへの展開が容易になります。

また、右足で縦につけることでワン・ツーか受け手の反転シュートまで持って行けます。その時のピヴォはフェラオの場合が多く、ストロングサイドに顔をよく出すようにしています。

もう一枚のピヴォであるエスケルジーニャは、ウィークサイドでのバックドアが上手く、サイズもありますので浮き球の処理も巧みですし、シュート技術も高いものがあります。

エスケルジーニャがピヴォの場合は、最終的には3-1となりますが、スタートがクワトロから流動的に派生していくパターンもあります。そのために、両セットが3-1のピヴォセットのケースもありますが、これは対戦相手に因ります。

ポストプレー面では、エスケルジーニャは中央~ファーにポジショニングすることが目立つのですが、フェラオはニア~中央に入ります。

ディエゴがカットインではなく、縦に抜けた場合は誰がピヴォであろうとも、中央~セカンドポストに入るのは当然ですが、ディエゴが縦に仕掛ける際に重要な要素として反発ステップがあります。

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ディエゴの反発ステップは綺麗にハマります。それと同じようなボールの置き方、リズム、歩幅をフェイクにして、同サイドに流れているピヴォに対して、ディエゴは足裏でボールを舐めつつ反発ステップありきのモーションを抑えた右足のインサイドで当てて、ワン・ツーで中に侵入やオーバーラップや中に一度入ってからパラレラ(中に入ろうと狙うピヴォのポストプレーに対面しているDFの逆を取ればフリーに)を狙うパターンがありますが、このようなピヴォを絡ませたコンビネーションの際には、フェラオのニア~中央のポジショニングが前提としてあります。だからこそ、この2人はデュオとして君臨しているわけです。

 

バスケのフレアカットはフットサルにもあります。しかし、足の運び方が厳密には一緒というわけではありません。

ゴールとヘソを合わせながら半身を保ちつつ、足をクロスさせる運び方が一般的なイメージですが、フットサルはヘソを合わせないバックランでもOKな考え方。受けるポジショニングからシュートを打つ時の姿勢を直結させるのがバスケに対して、下がることで手前にスペースを作って活用を図る違いがあります。

ディエゴのボールを貰う前の準備はDFとの距離を広げる工夫がなされていますし、バルサというチーム全体でも相手のDFライン下げさせて、ディエゴの手前にスペースがある状況を作るようにしています。

アラが仕掛けやすい環境作りとDFの足の置き方と腰の高さが重要です。対面のDFが距離を詰めていく過程で両足が揃った瞬間、DFの腰が浮いて縦の警戒が緩い棒立ちの瞬間など両者の重心の違いが明らかになった時に一気に加速することで、DFを置き去りにしています。www.youtube.com

DFとしては、それだけにディエゴの右足をどのように消すかが重要です。

敗れたエルポソとの試合では、相手DFがディエゴの右足での縦パスとカットインは消していました。問題は中央を一回経由して、DFがボールラインまで撤退後のディエゴのアイソレーションと反発ステップの対策ですが、これは止めるのは難しいでしょう。2枚目によるカバーありきで話を進めないと無理です。

アラから逆のアラへの展開がゴールに繋がり易いのですが(シュートの角度的にも)、アラとフィクソのつるべの動きや相手DFの門を裂くようなダイアゴナルパスからピヴォのシュートへの展開などがあります。パスの方向が受け手よりも後ろ向きならば、DFを背にした状態のポストプレーに持ち運ぶことによって、そのまま出し手が中に侵入することで、ポストプレーの落としをシュートまで繋げることが出来ます。

 

3-1時、ディエゴが左サイドでボールを受けて、ストロングサイド構築前に同サイド付近にいる味方(レオ・サンタナ)に中に入るように非言語コミュニケーションをしたシーンが印象的でした。

ディエゴは、ボールを貰う準備としてバックステップでDFとの距離を確保してから、DFが距離を詰めながら縦を切ると同時に、アウトサイドで中に一つボールを持ち出して、先程に「間」に入るように指示した味方へ角度を作ってパスを選択しました。

間で受けたレオ・サンタナは、中央でボールを運ぶことに関してとても無理が利く選手なので、そこから逆サイドへ展開。DFとしてはボールラインまで撤退するのがセオリーなので、DFラインが下がります。そして、左サイドの後方に残っている=スペースを確保したディエゴにバックパスをすることで、アラとしては仕掛けやすいアイソレーションの出来上がりになります。一手二手先を想定したデザインといえるでしょうか。

 

アラ(ディエゴ)からピヴォ(フェラオ)で完結することもありますが、アラからアラへの展開でラインを下げさせて、再びアラへ。

それがディエゴの場合、右足カットインからシュートやパス、ストロングサイドでのピヴォ当て、縦に抜けて左足でファー詰めやエリアへクロスといった引き出しがあります。また、フィクソに渡してミドルシュートを狙う事も可能です。

ディエゴの右足によるカットインから、右サイドへの斜めのパスはアラかピヴォの場合が多いですが、フィクソの侵入パターンもあります。その際にはつるべの動きとフィクソのポストプレーからの落としのシュート設計。

ピッチ幅を使った3枚のポジショニング、ピヴォ当てのためのセンターラインの空け方や斜めのパスライン創出、レオ・サンタナなどが中央に入って外を空けさせて、ピヴォがサイドから中央に流れることで、そのサイドでアラとDFに縦のスペースがある1v1を作るなどもありますが、3-1でのボール保持時、ブロック・カーテンが有効手段の一つとしてあります。

バルサのスクリーンの掛け方はやや緩い印象があります。カーテンも使いますが、どちらかというと、「間」に入る意識が強いポジショニングのように見受けられます。その過程で中と外の入れ替えによる時間とスペースを作り、ピヴォの列調整によるサイドの展開と前進、ニアのランニングでDF前に入ることでのピン止め、ディエゴの右足カットインに対して、味方のセカンドポストへの侵入もきっちりされています。

 

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アラやフィクソが抜けて中央のコースを空けます。そこからピヴォ当て、抜けたアラはセカンドポストへ。ピヴォットはあまり無いイメージです。3-1で中と外を交換しながら中を一枚飛ばしで、中の選手のパラレラシュート。ピヴォはセカンドポストに。フェラオならば、ストロングサイドで受けることが多いので、このパターンはエスケルジーニャが多いです。

フェラオのポストプレーを起点にストロングサイドの構築の際に、アラがペナルティエリアに入って、フェラオのところで数的優位を作るために逆アラがオーバーラップする必要性がある場合にはフィクソとのつるべの動きがあり、被カウンター時の中央を埋めることをサボっていません。1v2のカウンターでゴレイロと連携しつつ斜めに切りながら、サイドに追い込もうとする守備が求められる状況ですが、セカンドポストに入る相手選手のランニングに対して、ウィークサイドの選手が不在なためにディフェンスのバランスが崩れているシーンも。

 また、ダブルピヴォの場合には、フェラオの列調整、エスケルジーニャのライン間から逆サイドへのポジショニングによるプレス回避、ピッチ幅を広く使うように逆FPの選手へのプレスの掛かりが緩い際には、ロングパラレラでのピヴォの交換、中央のライン間でのワン・ツーで侵入があります。

自陣キックイン時、相手が速攻を気にしてボールラインまで撤退する際は、3-1の逆サイドまで送ることで、相手DFのプレスが掛かりきらない時間のある状態と相手1stラインの段差と距離が崩れているところから、ピヴォに縦を付けることでフィクソと1対1に。

【クワトロセット】

 上記ではピヴォセットについて書きましたが、今季はクワトロセットがとても効いているように思えます。

3-1セットの要でもあるフェラオが負傷中ということもありますが、こちらのセットは人を入れ替えても共通理解が進んでいる印象があります。クワトロセットには2セットがあります。試合の展開によってはクワトロセットの連続にも。
今季はインテル・モビスターから移籍してきた10番のリビィーリョスもいますし。今のところは順応中ですが。

フェラオ以外にもセルヒオ・ロサノ、マルク・トルラといった主力の負傷が続いているバルサとしては、安定的に成熟したパフォーマンスが出来るクワトロセットは欠かせない武器です。

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クワトロは、ポゼッションと相手DFのマークを混乱させることが出来ます。

相手DFの基準点をぼかして、ボールと人を動かす。裏抜けと細かい作業の連続性が求めれますが、ボールの無い選手のポジショニングが重要で、ペアリングが欠かせません。また、相手1stラインをダイアゴナルランで動かして、縦ズレをするフィクソとの距離を空けさせることで受け手に時間を与えるなどのように、技術的に不足したとしても効果的なランニングによる献身性で、チームにビジョンを与えます。判断の連続が当然ありますが、チーム全体で補える利点があります。
ボールを動かして、スペースを作ります。死角へのカットを駆使しながら、サイドのスペースの人の交換と相手のDFラインの「間」を取るようにして前進することによって、空いたスペースやプレスが掛かりきっていない状況に対して、DFが反応することで釣れるので、時間に余裕がある選手が生まれます。そこを起点に狭いところから広いところへ展開してゴールに接近していきます。

4-0→3-1→2-2と変化していく過程で、DFとの噛み合わせを動かしながら、パラレラ、ライン間、一枚飛ばし、カーテン、バのフェイク→ロングパラレラでアラ裏からフィクソ釣りで逆サイドを狙います。抜ける動きからライン間、中と外の交換でサイドからサイドにボールを動かして、ライン間への選手への相手のマークと中を切るDFに対して、縦のスペースへの突破や相手DFが縦を切れば、ライン間とのワン・ツー。

 

 

リビィーリョスが目立ちます。基本的には右サイド~中央で受けたい選手で、身体が開いた状況を作ることで視野が保てるので、左足から繰り出されるパスの豊富さとDFのタイミングを外すのが際立っています。浮かしたパスの精度が高いのも印象的です。

左サイドの場合では視野の面では窮屈さがありますが、遠い足になるので縦に付ける際にはライン際を狙えますし、パラレラを仕掛ければそのまま左足で持てます。左サイドでのアウトサイドの使い方もハンドオフ、中寄りの視野、ステップとモーションの小ささといった有効性が表れています。
順応中と書いたようにまだパスのズレがあったりしますが、動き方と持ち方が独特なのでリズムが変わっています。ボールを貰う位置などもありますが、クワトロセット時に1人だけ時間の持ち方が特殊のように思えます。あとは、彼はファウルの貰い方が上手いイメージです。ディエゴほどの突破力は無くとも、じりじりとした間合いを取りつつ、走路をブロックされた際のファウルの受け方が巧みです。別にシュミレーションを指しているわけではなくて、「誘い方」の話です。

 

ここでも非言語コミュニケーションで「間」に入るような遣り取りが行われています。それに対してDFは「間」への斜めのコースを切るように詰めます。そのまま味方は「間」に留まらず、ゴールに向かってセカンドポストに流れます。状況的には、アラとして仕掛けやすいものなので、リビィーリョスは左足で仕掛けて左足からのファー詰めをデザインすることが可能となります。

勿論、「間」を取ってピサーダ込みでの3人目のランニングもあります。その際にはサイドから速い展開が生まれたり。

トランジションというよりも、ほぼシームレスな展開になりやすい中でも、クワトロセット時のポゼッションは安定しており、ペースを引っ張れるメリットがあります。

また、攻守一体が密接になっているフットサルにおいて、3-1セットではジャンプによってピヴォが下がりすぎると基準点が低くなる弊害がありますが(その分、相手の残り一枚を引っ張れるので、ゴールクリアランスからの速攻が成立する可能性も)、 クワトロセットでは明確なピヴォがいないので、各々がマークに付いてDFラインが下がることでボール奪取後の基準点が低い時でも、レオ・サンタナといった中央レーンから運べる能力やゴレイロを含めたボール保持によって、ボールを守りながら組織の整備をすることで解決を図っていました。

段差を意識したポジショニングとピッチを広く使えているように思います。

密集した狭い距離感でボールを動かしていると、DFも1枚目、2枚目と自然と近い距離で連動していくので、DFの網に掛かり易くなります。なので、コートの3レーンを意識しながらポジショニングを広く取って、パラレラ(ロングパラレラ込み)でサイドの関係性を構築。前に運べないならば、足を持ち返て後ろ向きにペアリングを作るように、逆サイドの選手が降りたり、「間」を窺っている中央の選手がバックステップで距離を作りながら準備。2枚目の中央の選手がダイアゴナルランなどでDFを引っ張って、3枚目が空いたスペースに入って「間」を狙い、3枚目がサイドに張っていたポジションには、ボール保持者の角度や姿勢に対してペアリングの必要性がある場合はきっちり入らないといけません。その連続性でボールを保護しながら前進の目安を探っていきます。

ゾーン的な相手の門を開かせて斜めにすることで、見える斜めのパスライン。「間」に入ってからパラレラをすることで、2-2のように守っている相手DFのラインを崩して、斜めのパスを起点としたサイドからサイドの展開で、受け手は縦に仕掛け、先ほど「間」からパラレラの素振りをした選手はセカンドポストに侵入することでファー詰めを狙うことができます。

理想的なシーンの一つとしては、1stDFの背中を取るように「間」に入って、相手のフィクソを釣って、そこを起点にワン・ツーなどでアラ裏を攻略することで、カバーに入れる選手はゴレイロのみとなります。コースを消しながら飛び出したゴレイロの肩口や股を狙うようにシュートか、ファー詰めを作る。

 

ゴレイロとキックイン】

 バルサのDFラインは高いのでアラ裏が空きます。それだけ積極的な守備が行っているからこそのリスクです。強いチームはハーフで構えるよりも、前に出る傾向が強いです。勿論、ケース・バイ・ケースですが。

その時にはゴレイロのカバーが効いています。アグレッシブな守備でファウル数が増えても、クワトロセットを主にポゼッションで時間を管理。

ゴールクリアランスは、ロングスローによって強烈なカウンターになるのが特徴で、ピヴォがフェラオの場合は成立します。その時のピヴォ対フィクソのバチバチ感は堪りません。

比較的、クワトロセット時には低い位置から繋ぐ傾向が強いので、ゴールクリアランスは手前から。

プレス回避にゴレイロを使うこともありますが、あくまでもゴールマウス前での話。ゴレイロをサイドに開かせた状態での後方で3枚を作ることは無いです。ゴレイロ自身の持ち上がりからPPもありません。足元よりもシュートストップとスローに神経と能力を捧げている守護神です。

しかし、全く参加しないということはなくて、3-1のピヴォセットではバックパスを受けて、1-2-2となった際には、相手DFの門の間を通す様にピヴォへ縦パスを付けることが求められます。

 

 キックインは、チョン・ドン(チョンと出して後方の選手にシュートを打たすこと。サッカーの間接FKと同じ要領)よりも、ゾーンに配置させてファーで浮いている選手に浮き球を送ってボレーを撃たすのがメイン。バルサの選手はボレーにおける面の作り方が上手い印象なので、効果的なシュートが目立ちます。

自陣深くのキックイン時、ゴレイロ→ピヴォへのロングパスかピヴォが相手DFを動かしたスペースへの味方のアタックがあります。